ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

プレシャス

2010-02-09 21:32:53 | は行
プレシャス(宝物)な映画!


「プレシャス」84点★★★★



父親にレイプされ
16歳ですでに二人の子どもを妊娠、

そのうえ
母親にも虐待され、学校もクビになりと

あまりにも悲惨な主人公
プレシャス(ガボリー・シディベ)の物語。


あまりにも悲惨・・・なのに、
このおおらかな鑑賞後感はいったい何?

たくましい、というのとも違う。

荒廃のなかで静かに光り続けた
イノセンスの勝利、ともいうべきだろうか。

そして
見終わったときの
大海に包まれたような温かさが
いつまでもいつまでも
尾を引くんですねえ。


番長は泣かなかったけど
両隣の男性は泣いていたようでした。


プレシャス演じるおデブちゃん、ガボリー・シディベも
すごい存在感なんだけど

この映画の勝因は
あえて“映画のセオリー”にはまろうとしない
監督の思考の崇高さではなかろうか。


「あれっ」と潔すぎるほどの
フェードアウト加減が
たまらなく爽快だったり

高校生が書いたような
つたないナレーションが
胸に染みたり

不安定な構図、色使いなど
予定調和など何もない
とにかく新しい感覚に満ちている。


CMを作る人などに
特に参考になる気もします。


主演女優のビッグな存在感と
それが観客を包容する力になっているという点で
「フローズン・リバー」にも少し似ているけど
最後に灯る光が
より大きく、明るいのがいいね。


しかし「17歳の肖像」とコレと
どっちが点数上か
すっごい迷ってしまう・・・

番長的アカデミー賞だと
主演女優賞は「17歳の肖像」
作品賞は「しあわせの隠れ場所」
監督賞は「プレシャス」にあげたいところだなあ。


そうそう、マライア・キャリーが
「ええぇえ?」って役で出てます。
いや、見ても絶対わからないと思う。
言われても信じられない・・・

★GW、全国で公開。

「プレシャス」公式サイト
コメント (4)
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