ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ヒミズ

2012-01-10 23:12:06 | は行

前作「恋の罪」も
うーんと困ったけど、
これまた輪をかけて、うーん……。

「ヒミズ」50点★★☆

ちなみに原作マンガは未読であります。


主人公の住田(染谷将太)は
ビミョーに大人びた中3男子。

父と母に見捨てられ、
実家の貸しボート屋を、ほぼ一人で仕切っている。

ボート屋には
震災で家をなくした男(吹越満)たちが集い、

彼らには
「スミダさん」「スミダさん」と慕われ、
なにかと頼りにもされていた。

同級生の茶沢(二階堂ふみ)は、
そんな住田に恋をしていた。

そんなある日。
父親の借金を取り立てに
ボート屋にガラの悪い男(でんでん)たちがやってくる。

その後、現れた父親に、
ついに住田はブチ切れてしまい――?!


古谷実の原作マンガを
園子温監督が実写化。

現代の閉塞を生きる若者の
絶望と衝動を描いており、

監督らしいというか、
青春バイオレンス・オペレッタという感じ。

前作「恋の罪」と同じく
詩の朗読や、言葉の繰り返しが多様され、

染谷氏と、二階堂氏の絶叫のやりとりや、
ぶつかり合いをほとばしるままに
見せられた、という。

ある程度の衝撃はあるけれど、
ストーリーや感情を丁寧に追うタイプではないし、

好みは分かれるかもなあ。


というか、まったくもって
もう
観客との対話なんて望んでいない、という体なんで(笑)。


しかし
撮影準備中に「震災」が起き、
急きょ舞台を“震災後”にしたという
そのへんのフットワークはすごい。

生々しい震災後の風景が、
初めて“劇映画”の舞台として
スクリーンに映し出された衝撃は大きかった。


また
普通はみなが決して口にしない本音が
ボロンと言葉にされて出てきて、
観る人の心にトゲを刺すんですねえ。

「それ、言ったらダメでしょ」という
本音を息子にいう父親。

ささいなことにカッとなりナイフを取り出す若者。

「壊れた世界」は、舞台と相まって
救いようなくリアル。


ただ、番長的には
もっと日常的な
“閉塞”とか”恐怖”とかに肉薄できる
要素が満載に見えるのに、

出てくるのが
借金取りとか、ヤクザもんとか、
ありきたりなバイオレンス要素っていうのが
もっとも残念だったところでした。

ともあれ
若い主演二人の熱演には、拍手!でした。


★1/14(土)から新宿バルト9、シネクイントほか全国で公開。

「ヒミズ」公式サイト
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする