この話にはいろんなことを
考えさせられました。
「レッド・ファミリー」70点★★★★
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舞台は韓国。
貞淑な妻(キム・ユミ)に優しい夫(チョン・ウ)、
彼らの娘(パク・ソヨン)と祖父(ソン・ジョンホ)は
隣人からも「理想の一家ね」と言われる家族。
・・・というのは建前で
実は彼らは北朝鮮から送り込まれたスパイだった。
彼らの任務は韓国社会に紛れ込み、
上からの命令で脱北者を暗殺すること。
だが、隣人のダメ韓国人一家と接するうちに
4人に変化が起こり――?!
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キム・ギドクが製作・脚本・編集し、
若手有望株のイ・ジュヒョン氏に監督を託した
韓国映画。
正直、最近のキム・ギドク映画より見やすく
かつしっかりとテーマを内包する作品でした。
全体にコメディ調でユーモラスな部分もあるんだけど、
それらの裏すべてにシビアさがあって
非常に複雑な後味が残ります。
北のスパイ一家は命令に従って、
脱北者を暗殺したりするわけですが、
上層部はさして害のなさそうな家族や
果ては赤ん坊まで、容赦なく殺させる。
でもスパイ一家はみんな
「それをやらなかったら、自分の家族に危害が及ぶ」と脅されて
いわば自分の家族を人質に取られ、
家族を守るために、任務を遂行しているわけです。
そもそもの事態の不条理というか、悲しい滑稽さが
この微妙かつ、考えさせる後味を残すんですねえ。
年かさの工作員の
「人間らしく生きることを奪われ、家族との時間を奪われ、
何十年と同じことをしていても、何も状況、変わらないじゃないか!」
という叫びが痛かった。
この連鎖を断ち切るにはどうすりゃいいのだ、と思いますね。
来週発売のおなじみ『週刊朝日』ツウの一見で
東京・中日新聞論説副主幹でジャーナリストの長谷川幸洋さんに伺ったお話が
すごーく、興味深かったです。
それは
「この工作員一家と同じことが
いまだ帰れない拉致被害者たちにも言えるのでは」というお話。
家族を人質に取られている状況が
この映画を見ると、よくわかるので、
そう考えると、問題解決のいっそうの難しさを感じ
頭がグワン、としました。
その上でどうすりゃいいのか、
考えなくちゃいかんのですね。
★10/4(土)から新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
「レッド・ファミリー」公式サイト