なんかですね
木皿泉さんの小説『昨夜のカレー、明日のパン』を思い出したんですよ。
「マルタのことづけ」74点★★★★
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メキシコの都市。
スーパーの販売員・クラウディア(ヒメナ・アヤラ)は
突然の腹痛で入院する。
隣りのベッドにいたのは
4人の子どもを持つ40代のシングルマザー、マルタ(リサ・オーウェン)。
不治の病に侵されつつも、明るいマルタは
退院の日、ひとりぼっちで家に帰ろうとするクラウディアを
自分の家に招待する。
そしてクラウディアは次第に
マルタの家族の一員のようになっていき――?
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HIV末期患者のマルタと、孤独な少女クラウディア。
偶然出会った二人がお互いを補完し合い、
家族のようになっていく・・・というお話。
お涙っぽいおとぎ話?と、一瞬思うかもしれませんが、
なんと32歳のクラウディア・サント=リュス監督の実体験を
基にしているんだそう。
うーん、これはかなわん!
敬遠するのはもったいない。
すごくいいです。
最初は、ひどくぶっきらぼうな演出に戸惑うんですが、
メキシコの風土でもあるのかな
登場人物たちのざっくりした温かさ、大らかさが
どんどん、こちらの気持ちをほぐしていくんですねえ。
特にすごくうまいなあと感心したのが
ファブリック(布地)の使いかた。
冒頭、クラウディアが一人ぼっちで部屋で目覚めるシーンから
マルタの娘たちが席を奪い合うソファや、
マルタとクラウディアの距離が近づくのがベッドの上だったり、
不安な時に抱きしめたい枕、
くるまれると安心するシーツなどなど
体や心が触れ合う象徴として“布”を効果的に使ってる。
それにマルタの病室が
クラウディアとマルタの一家との接点になっていく様子にも、
ハッとしました。
病室は、もちろんつらい場ではあるのだけど
実は常に開かれた“集いの場”でもあるんだなあと。
死を前にした人は
意外に自分を開き、他人を招き入れるものなのかもしれない。
それによってクラウディアのような誰かを、救ったりしてるのかもしれない。
なんでもない日常の、そこに死が身近にあっても
それでこそ人がつながったり、生きてたりするんだな・・・と再確認する。
そんなところが
先日、取材でお目にかかった
木皿泉さんの世界に似ている気がした次第でございます。
★10/18(土)からシネスイッチ銀座ほかで公開。
「マルタのことづけ」公式サイト