やっぱりいいなあ、アキ・カウリスマキ監督。
「希望のかなた」77点★★★★
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北欧フィンランド。ヘルシンキの港に
シリア人青年カリード(シェルワン・ハジ)がたどり着いた。
彼は内戦が激化する故郷から逃れて
ここまでやってきたのだ。
難民申請をした彼は、
巨大な収容施設に入れられる。
そこは中東やアフリカからの
難民で溢れていた。
いっぽうヘルシンキに暮らす
中年男ヴィクストロム(サカリ・クオスマネン)は
レストランを居抜きで買い取り、オーナーをはじめることに。
やる気のない従業員に囲まれつつ
なんとかやっていたある日、
彼は青年カリードに出会う――。
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アキ・カウリスマキ監督の新作。
前作「ル・アーヴルの靴みがき」に続き
ヨーロッパの難民問題を扱っています。
もちろんいつもの深煎りなユーモアと
笑いは健在。
それをしつつ、より社会にはっきりと
メッセージを投げかけていると感じました。
主人公はシリアを逃れて
フィンランドのヘルシンキにたどり着いた青年カリード。
居住まい正しく、凛々しい眉毛で
どことなく真田広之氏に似ているんですが(笑)。
そんな彼が、駅でシャワーを使い
「難民申請するため警察に行く」という。
そこで
窓口の男は「本気か?」と聞き返す。
最初はその意図が図りかねたけど、次第に納得。
この北欧の街にも多くの難民が押し寄せていて
難民申請基準、けっこう厳しいのだ。
そんなカリードの様子と平行して
ヘルシンキのある無愛想なおじさんが
レストランを買い取るまでが描かれる。
このおじさんがもうひとりの主人公。
彼のレストランのなりゆきや、従業員のやりとりなどが
プッとおかしい。
そして、いよいよ
カリードと、おじさんが出会う。
そしておじさんは彼を助けるんですね。
ちょっとヘンテコな従業員たちも
街の弱者たちも、彼を助ける。
善に理由なんてない。
ぶっきらぼうにそっけなく
人は人を助けるのだ。
そして人は正しき行いによって救われる。
そんなことを
すらっとそっけなく、描く気持ち良さ。
そこにユーモアがあるあたたかさ。
世界を覆う、不穏と不寛容に
カウリスマキが発したメッセージを
受け取らないの、もったいないと思うんです。
★12/2(土)からユーロスペースほか全国順次公開。
「希望のかなた」公式サイト