自分さえよければいい、ではない世界に
先に踏み出している人がいる。
リスペクト!
「スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~」72点★★★★
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自閉症の子どもたちをケアする
民間団体「正義の声」を運営するブリュノ(ヴァンサン・カッセル)は
今日も朝から駆けずり回っていた。
支援する青年の一人ジョゼフが
電車の非常ベルを押し、鉄道警察に取り押さえられたのだ。
ジョゼフは電車に乗るとどうしてもベルを押したい衝動に駆られ、それを押さえられない。
なんとか納めて、彼を家に送り届けると
次は医療センターへ。
重度の症状がある少年ヴァランタンの一時外出につきそうのだ。
一人で立ち上がることもできず、誰もに見放された少年をみても
ブリュノは、決して投げだそうとしない。
「何とかする」――それが彼の口癖だった。
ブリュノには、志を同じくする仲間マリク(レダ・カテブ)がいる。
マリクは社会からドロップアウトした若者たちを
社会復帰させる団体を運営している。
マリクは遅刻ばかりでヤル気のない青年ディランを
ヴァランタンの介助人にする。
最初は戸惑うディランだが、次第にヴァランタンと付き合うコツをつかみ
二人はなかなかの相棒になっていくのだった。
そんななか
ブリュノの団体に監査局の調査が入ることになる。
もし、不適切とされれば施設は閉鎖。
子どもたちはどうなる?!
ブリュノとマリクは、なんとか施設を守ろうと奮闘するのだが――
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「最強のふたり」(11年)のコンビ監督が、
自閉症の子どもたちを支援する施設を運営する
実在人物を描いた作品です。
監督コンビは1994年、20歳のときに
モデルとなった人物に出会い
「いつか、映画にする!」と誓ったのだそう。
それから26年。「最強のふたり」もだけど、監督たちはずっとこうした
社会が置き去りにしがちな人々や、それを支援する人に目を向け
どんな人も平等だ、というテーマを
手放さずにきたのだと思います。
自閉症を持つ人々は
適切なサポートがあれば、社会で生きていける。
ただ、一人一人の症状に目を配り、最適なサポートをするには膨大な人力が必要で
やっぱり社会は彼らを置き去りにしがち。
政府も見て見ぬふり。
そのなかで
ただただ、彼らのために奔走し、伴走しようとする人がいる。
その事実に敬意と、深い学びを得ました。
しかも、やっぱり「最強の~」コンビだけあって
もちろん、お涙!や感動!ではなく、
笑いもあって、痛快。
「預言者」のレダ・カテブもいいけど
ヴァンサン・カッセルが、今回実にいい役です。
登場する自閉症の若者たちや介護者も本物が多く
電車の非常ベルを押してしまうジョゼフもその一人。
洗濯機に超詳しい彼は、実際とてもチャーミング。
重度の障害を持つヴァランタンは
弟が重度の障害を持っていて
「この役を演じることで、弟に少しでも寄り添えるかも」とオーディションを受けたそう。
う。いい兄貴じゃありませんか。
社会は「自分だけよければいい」では済まされない。
しかし、他人のためにここまでできるだろか?――なかなかできないですよね。
だけど、実際、こうしてやっている人たちがいるんだと
その事実が、暗い世界の現実を超えて、その先へと飛翔させてくれる気がしました。
★9/11(金)TOHOシネマズシャンテほか全国順次公開。
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