実話なのか!と驚くほど
エキサイティングなミステリー。
「ジョーンの秘密」74点★★★★
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2000年のイギリス郊外。
夫に先立たれたジョーン(ジュディ・デンチ)は
ガーデニングをしながら、日々穏やかに暮らしている。
が、ある日
ジョーンは突然やってきたMI5に逮捕されてしまう。
容疑はかつてソ連に機密情報を流した
スパイ容疑だという。
弁護士の息子(ベン・マイルズ)も
「何かの間違いだろ?」と唖然とするなか
MI5による取り調べは、1938年に遡っていく。
当時、物理学を学ぶ優秀な学生だったジョーン(ソフィー・クックソン)は
ある人物との出会いで、思わぬ職場に就くことになる。
それは、イギリス国内で核兵器開発をする極秘機関での
事務員の仕事だったが――――?!
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2000年、イギリスで過去のスパイ容疑で逮捕された老女。
夫亡き後、ガーデニングをしながら
ごく普通の暮らしをしている彼女にかけられた容疑とは――――?!
と、ミステリー小説顔負けの、実話がもとです。
もちろん主演・ジュディ・デンチの風格あってこそ、の映画ですが
映画の3分の2は若きジョーンを演じる
ソフィー・クックソンが担当してる感じ。
で、彼女がまた、いいんです。
意志の強さを感じさせる眉毛と瞳が
高潔な正義感を漂わせ、デンチの面影を写している。
で、驚きのストーリーはというと
1940年代、男性社会の「陰」にされていた女性が
実は世界を動かすほどの、ものすごい事を成していた――――というもの。
男性の陰に隠れてきた凄い女性、の話は
アートや文学の分野では、多く聞いてきたけど
理系ものでは
「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(14年)で
キーラ・ナイトレイが演じた暗号解読者とか
(観てたときは実在の人物だと知らなかった・・・)
NASA開発に携わった実在女性たちの物語
で改めて「そうだったんだ・・・」と、知った気がする。
で、本作の主人公ジョーンは、スパイというより
理系才能の持ち主で
1938年から原爆の製造に関わり
さらに、その製造法をソ連に流した罪で
2000年に逮捕された、という人物なんですね。
そして本作は
彼女がそれをした理由を明かしながら
突出した頭脳を持ちつつも
男性の陰にならざるを得なかった女性のモヤモヤや人間としての正義感に加え、
彼女の愛の苦悩と葛藤がふんだんに盛り込まれている――という構成。
かなりラブストーリーに傾いているけど
でも、それが逆にうまくいっている、という
絶妙なバランスの映画なんです。
80代のジョーン演じるデンチが
「いまある平和は、自分のおかげ」と語るシーン。
その矜持をおもわず口にするシーンは重く深く
最高の頭脳を封じ込めざるを得なかった苦痛が
複雑にのしかかってきて、しびれました。
そして若き日の賢いジョーンの立ち振る舞いは
(ゆすりのネタも含めて。苦笑)
うむ、やるな、と思うのでありました。
★8/7(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。
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