ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

不惑のアダージョ

2011-11-24 23:20:20 | は行

「まるでそれは、わたしの物語」というコピーが
このうえなく、ズシ~ンときましたよ。


「不惑のアダージョ」72点★★★☆

ゆうばり映画祭で上映後、
各国の映画祭で絶賛され
「伝説」とされてきたという作品です。


主人公は40歳を迎える修道女。


神に仕える身として
規律正しく、静かに生きてきた彼女に

“更年期”という
体の不調が訪れる。


それは「女」としての終わりを告げる
変化でもあった。

初めて心の揺らぎを感じ始めた彼女の前に
3人の男性が現れて――。



題材だけみると
センセーショナルな感じがするかもしれない。

でも、男性も女性も
怖がらずに見て欲しいですねえ。

本当に静かで
美しくて、品があって、

とにかく
しみるんですよ。


女の奥底にある焦りや哀しみを、
控えめに、
しかし確実に「伝わる」音階で描いていて

残響のように心に残るんです。
ユーモアもあるし。


修道女という特殊な世界を描いているようで
その中身は

40を迎えた女性が
改めて「生むことのなかった人生」を考え、
迷うという物語なわけです。


普通に会社に勤めたり、
マジメに生きてきて、
気づいたら結婚せず、子どももいなかったなんて人

たくさんいるでしょ、ねえ?


自分だってそんなもんだし
いや、ちょっと違うけど、まあそんなもんだし(笑)


で、
自分の人生も幸せも、自分で選んでるはずだったのに
ある日突然、思いもしなかった焦燥感に
こんなふうに襲われるのかもしれない。

それはもしかして
このシスターのような体の変化で来るものかもなアと、
ズウンと来ました。

例えば
益田ミリ氏の『結婚しなくていいですか』の
すーちゃんだったり

高野文子氏の『るきさん』の世界に
通じるものがあります。

このへんに共感しているかたは
お見逃しなく。


試写を観た人の
ツイッター感想などを読んでいておもしろいのが
男性にも意外な感慨を
もたらしているらしいことと、

どんぴしゃりな30代、40代女性だけでなく
この時期を超えた50代の女性にもウケがいいということ。

さらに
観た人がみんな
いままで語ったこともないような
「自分」を赤裸々に、正直に語りたくなるというのも
“伝説の作品”のゆえんらしい(笑)

37歳、井上都紀(つき)監督自身の
心をそのまんま丸出ししているような勇気が
人を揺さぶるんだと思います。

しかも製作したときは
まだ34歳だったというんだから驚き。


主演女優のまさに白百合のような、
すっぴんでも美しい“様子”も
とてもよかったです。


★11/26(土)から渋谷ユーロスペースで公開。ほか全国順次公開。
19:00~のみ短編「大地を叩く女」(21分)併映あり。

「不惑のアダージョ」公式サイト

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