ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

サルトルとボーヴォワール 哲学と愛

2011-11-21 22:10:01 | さ行

スゴい人たちの、スゴい歴史を知りました。

「サルトルとボーヴォワール 哲学と愛」66点★★★☆


1929年、フランス。

21歳のボーヴォワールは
ソルボンヌ大学に通い、教師を目指す才女。

しかし
女は嫁に行くしか道がなかったこの時代、
父親には「男だったらよかったのに」と言われたりして
やるせなさを味わうことも。

そんな彼女は大学で、
先輩サルトルと出会う。

やがて恋人になった二人だが、
サルトルからはこんな提案が。

「小市民的な“結婚制度”なんぞに縛られず、
お互い誰と付き合ってもいい
“自由恋愛”をしようじゃないか」

「へ?」と思いつつも
従来の女性観に反発するボーヴォワールは
それを受け入れるのだが――?!



まず初めにお断りしておきますと、
サルトル
ちゃんと読んだことありません(汗)

でも
ボーヴォワールの「第二の性」は
大学で読んだ。気がする・・・。

という程度の認識しかない
番長にとって

この二人の関係とその話は
「ほえ~」「ふえ~」と
興味シンシンでした。


対等な関係を契約し、
お互いに自由でいつつ、刺激しあう
パートナーって理想だと思うしね。

ただ、“愛”が介在するかぎり
口ではそう言っていても
やはり平然としてはいられないのが
やっかいなところで、

映画には
好き勝手に遊びまわるサルトルに
ボーヴォワールがヤキモキする様子も描かれているわけです。

ま、それよりもしゃくに障るのは
面倒なことは一切ボーヴォワール任せで
美味しいところを持ってったりする
サルトルの“いいとこ取り”な態度!(苦笑)


どうにも割りを食うのは女、という感は否めず、
ちょっと痛かったですね。


最大の逆襲として(?)
ボーヴォワールが
「キンゼイ・レポート」の時代、
アメリカ人作家のリードで真の快楽に目覚めるくだりには
ニンマリしました(笑)

そのおかげで「第二の性」を書き上げ、
やっと自分にも日が当たるか、ってときに

愛か成功かを選ばなくてはならなくなるのは、
つらいっすよね。

まあ自分だったとしても
どっちを取るかは明白ですけどね。


という興味深い映画なんですが
ただ
あまりに濃いぃ人生なんで
全体に駆け足すぎて

映画としての風味と
情緒が不足してるのは残念でした。


おなじみ週刊朝日「ツウの一見」で
国際ジャーナリストの
ドラ・トーザンさん(美人!)にお話を伺ったのですが

ドラさんは
「ボーヴォワールは恋愛なんぞには揺れてない。
社会での責務を迷い無く取った!」
断言していた(笑)

そんなレベルではなく
もっと突き抜けた人なんだ、と

同じフランス人であり、女性であり
しかも同大学(ソルボンヌ!)出身という
矜持がすごく感じられました。

実際そうなのだと思います。

ただ、映画にはちょっと
「割りを食った」女っぽさが現れてる気がする。


広く女性に共感できるように
作ってあるのかもしれませんね。

でもドラさんと
「サルトルがあんなにモテるのはおかしい!」
というところでは一致いたしました(笑)


★11/26(土)からユーロスペースで公開。ほか全国順次公開。

「サルトルとボーヴォワール 哲学と愛」公式サイト

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