ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

若い女

2018-08-22 23:52:54 | わ行

 

なんともフレッシュな才能に、出会えた喜びよ。

 

「若い女」74点★★★★

 

****************************************

 

フランス・パリ。

31歳のポーラ(レティシア・ドッシュ)は

10年付き合った恋人に、突然、部屋から放り出された。

 

途方に暮れたポーラは、衝動的に彼の愛猫を盗み、

友人の家に身を寄せる。

 

だが、ポーラの無神経ぶりに愛想を尽かした友人は

彼女を家から追い出す。

 

しかたなく安宿に泊まるが、そこでも猫の存在がバレて追い出される。

 

猫を連れて、パリを徘徊するポーラ。

彼女の明日は、いったいどっちだ――?!

 

****************************************

 

86年、フランス生まれのレオノール・セライユ監督作。

冒頭からギョッとするほど、破壊的キャラのヒロインが登場し、

しばらくはあぜんとしつつ

成り行きを見守るしかありませんww

 

 

ヒロイン=ポーラは、

自分の“人生の旬”を捧げた年上の恋人にフラレて

やけっぱちになっている。

 

しかも「彼の女」という地位に満足していた彼女には

自分自身の未来のビジョンも、行き場もない。

ゆえに、

途方に暮れ、猫を連れて、パリの街を徘徊することになる。

そんな様子を、カメラは追っていくんです。

 

 

正直ポーラって、感情移入の対象にはとてもならない人物。

エキセントリックで粗野で、自己チューで嘘つき。

 

しかし! ある場面から、猛烈に彼女に心をつかまれたんですよね。

 

それは、ポーラが友人宅からも宿からも追い出され、

にっちもさっちも行かなくなって、地下鉄の構内に佇むシーン。

 

助けを求めるような目をして、行き交う人々を、ただ見つめる。

誰かにすがりたいのに、「助けて」と声を出せない。

そんな彼女の孤独との闘いかたが映画ににじみでていて、グッとやられました。

 

全然、大丈夫じゃないのに「大丈夫」って言ってませんか?

「困ってる?」と聞かれても「ううん」と答えちゃってませんか?

そんな経験、誰にでもあるでしょ?

だからこそ、ポーラがだんだん愛すべき人に見えてくるんだと思う。

 

グレタ・ガーウィグがやりそうなキャラを

さらにアップデートした感じで演じた、レティシアがいい。

 

そして

人間はやっぱり一人では生きられない。

「誰か話す相手がいるか」がどれほど重要かを思い知らされました。

 

 

★8/25(土)から渋谷ユーロスペースほか全国で公開中。

「若い女」公式サイト


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 検察側の罪人 | トップ | 輝ける人生 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

わ行」カテゴリの最新記事