ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

アマンダと僕

2019-06-22 15:03:00 | あ行

ささやかだけど、すごくいいんだお!(ん?)

 

「アマンダと僕」76点★★★★

 

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パリに暮らす24歳の青年ダヴィッド(ヴァンサン・ラコスト)は

便利屋業をしながら、のんびり暮らしている。

 

ダヴィッドは近くに住む姉と仲良しで

姉の7歳の娘アマンダ(イゾール・ミュルトリエ)とも仲がいい。

 

知り合った美女(ステイシー・マーティン)といい仲になったり

姉にウィンブルドンに観戦に誘われたり。

やわらかな陽射しのなか、穏やかな日々を送るダヴィッド。

 

が、突然の悲劇がダヴィッドとアマンダを襲う。

そしてダヴィッドは一人で、

アマンダの面倒を見ることになるのだが――。

 

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日常を丹念に描き、人物を繊細に描き

ことさらではなく、沁みる味わいをもたらす。

1975年、パリ生まれのミカエル・アース監督、いますっごく好きな監督であります。

 

ちょっと

「未来よこんにちは」(17年)などの

ミア・ハンセン=ラブのアプローチに似てるのかもしれない。

 

 

ややぽっちゃりが可愛い7歳のアマンダと、

母の弟である若い伯父さん・ダヴィッド。

このダヴィッドはいつもラフなTシャツ姿で、

ひょうひょうと、どこか浮き世離れした自由さがあっていい。

 

そんな彼らの穏やかな日々のなか、

しかし姉の突然の死で、ダヴィッドはアマンダの面倒を見ることになる。

 

といったって、突然「父」になれるわけじゃなし、

「どうすればいいのか、わからない」と

ダヴィッドは困りまくり、

アマンダも困惑し、わがままを言ったりする。

なにより、二人は大きな喪失を抱え、

唐突に涙が溢れ出てきたりもする。

 

アマンダもダヴィッドも

よく泣くんですよ。

それも直ぐにではなく、時間が経ったときにこそ、

ふとした瞬間にやってくる慟哭のリアルに

ああ、きっと監督は

喪失を知る人なんだな、と思う。

 

 

パリの緑、そよぐ風、やわらかな日差し、光。

日々の尊さを丹念に描くからこそ、

突然の悲劇に

世界がぽっかり、空洞になる感覚に、観客も協調できる。

そして、悲しみのその先に見える光のあたたかさが

穏やかに沁み入る。

 

このラストは近年まれにみる

忘れがたさです。クーッ。

 

もうすぐ公開される「サマーフィーリング」(7/6公開)

「アマンダ~」より前に作られた作品なんですが

同じく突然の喪失と、回復の道のりを描いていて

これまた、ものすごく、いい。

同じテーマを追い続ける監督の思いを直に聞いてみたいなあ!と

いま切望しておりますw

 

この映画をとても気に入っていらした

俳優・石田純一さんのお話もとても興味深かった。

AERAdot.で読むことができます。

「父と子の映画」記事全文はこちらからどうぞ。

ぜひ映画と併せてご一読くださいませ~

 

★6/22(土)からシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。

「アマンダと僕」公式サイト


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