ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

山懐に抱かれて

2019-04-29 23:15:58 | や行

牛乳、飲んでみたい。

 

*********************************

 

「山懐に抱かれて」70点★★★★

 

*********************************

 

岩手県で山地酪農を営む家族を24年間追ったドキュメンタリー。

製作のテレビ岩手による長期取材の映像は

実に貴重で実り多く

いまでいえば

まさに究極の「ポツンと一軒家」!

 

そして、ランプの灯りのもと

「暗い?夜になったら寝るんです!」とおっしゃる一家の主からして

リアル「北の国から」という趣でした。

 

始まりは、一家の主、吉塚公雄さんが

大学卒業後の1974年、岩手の田野畑村に移り住み、

「山地酪農」を始めたことに遡ります。

「山地酪農」とは山林を切り開き、シバを植えて

そこで牛がシバを食べ、搾乳のために牛舎に戻り、また山へ行くという酪農法。

 

自然のなかでのびのびと育ち

四季折々の自然の作物を食べる牛たちの牛乳は

春夏秋冬、食べるものによって味も違うのだそう。

 

実に素晴らしい方法ですが

実際、やるのはかなり大変。

 

吉塚さんは5男2女、7人の子どもたちを総動員し

みんなで酪農を行っている。

 

その様子を1994年から、テレビ岩手が追っていて

それをまとめたのがこの映画。

 

7人の子は、みな熱心に親の背中を追うんだけど

やはり、それぞれ思うところもある。

 

そんな彼らの成長を見続けて、まず思うのは

親に「習う、倣う」とはこういうことか、ということ。

 

それは「親が子を、自分の思い通りにする」ということではないんです。

同じ酪農を志しながら、違う道に進む子もいる。

結婚して、巣立っていく子もいる。

 

でも全員が間違いなく、同じレガシー、スピリットを共有している。

それが、すごい。

 

一家の主・公雄さんが試みを初めて40余年。

時代が移り、「安心」「自然のまま」なことの価値は、

その予言通りに、より必要とされるようになった。

そして、東日本大震災も、原発事故もあった。

 

そんな時の経過のなか

いま長男を筆頭に、三男は営業に、四男はチーズなど加工製品を作るようになった。

それぞれのキャラの違いと、適材適所具合もまたおもしろい。

 

映画を観れば

「山地酪農牛乳、絶対飲んでみたい!」と思うはず。

ただ、ネットで調べたら、ちょっとお高かったんですが

 

彼らのようなやり方を、きちんと後押しできる社会に

まだ日本が成熟していないのかなあ、と

まだまだこの先の展開も重要になりそうな気がするのです。

 

★4/27(土)からポレポレ東中野で公開。ほか全国順次公開。

「山懐に抱かれて」公式サイト


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« パパは奮闘中! | トップ | ビル・エヴァンス タイム・リ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

や行」カテゴリの最新記事