ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

プリズン・サークル

2020-01-25 23:49:43 | は行

非常に惹きつけられるドキュメンタリー。

 

**********************************

 

「プリズン・サークル」76点★★★★

 

**********************************

 

島根県にある、官民協働の新しい刑務所

「島根あさひ社会復帰促進センター」を

許可取り6年、撮影2年かけて取材したドキュメンタリー。

 

刑務所内部を写し、受刑者の日々を追いながら、

窃盗や詐欺、傷害致死などで服役する

4人の若者にフォーカスしていく、というつくりで

 

まず

日本の刑務所に、こういう形でカメラを入れたのは

初めてだそう。

それにこの施設、設備も最新だけど、取り組みが新しいんです。

 

受刑者たちが輪になって、自らの経験を語り合い、また人の話に耳を傾ける

グループセラピーのようなことが行われている。

よくアメリカ映画でみる「断酒会」のような感じですね。

 

どんな子ども時代を過ごしたのか。

家庭環境はどうだったのか。

犯罪に至った理由はなんだと思うか。

犯罪をしたそのときの、自分の気持ちはどうだったのか――

 

などなかなか際どい話を、受刑者たちが順番に語っていく。

 

観ていると、彼らが一応に、虐待(ネグレクトを含む)やいじめ、

そして貧困の連鎖を受け継いでしまっていることがわかる。

 

悲しいかな

犯罪の背景に、子ども時代の環境が大きく影響していることが

わかってくるんですね。

 

自分も、ほかの受刑者と似てるんだ、

同じ経験をしてきた人がいるんだ――

同じ受刑者に話をすることで、彼らは自分を振り返る。

人の話を聞くことで、気付くことがある。

 

そこで彼らに起こる変化は、必見です。

 

もちろん、そうした過去を持つ人が

みな道を踏み外すわけじゃないし、

被害者にとってみれば、どんな事情があったって

許せないことではある。

 

でも、断罪するだけでは

次に起こるかもしれない、同じ負のサークルを

止めることはできないんだと思う。

 

この取り組みで、

彼らは人を思い、自助を学び、

何かを掴むのだと思うのです。

 

この話は

イランの少女更正施設を写したドキュメンタリー

「少女は夜明けに夢を見る」(19年)

すごく通じるものがある。

 

日本ではまだ、全国数カ所でしか実施されいないプログラムだそうでけど

いや、これ絶対、未来に「使える」でしょ!

もっと広まっていってほしいです。

 

★1/25(土)からシアター・イメージフォーラムほかで公開。

「プリズン・サークル」公式サイト


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 風の電話 | トップ | 9人の翻訳家 囚われたベスト... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

は行」カテゴリの最新記事