小さくも普遍的で、豊かな世界。
「ミナリ」72点★★★★
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1980年代、アメリカ南部アーカンソー州。
なーんにもない広々とした土地に
韓国系移民のジェイコブ(スティーヴン・ユァン)一家がやってくる。
「ここで農業で成功するぞ!アメリカンドリームだ!」と
ヤル気満々のジェイコブだが
捨てられたような土地、しかも家がおんぼろトレーラーハウスなのを見て
妻モニカ(ハン・イェリ)は「話が違う!」とおかんむり。
長女のアン(ネイル・ケイト・チョー)も不安そうだが
末っ子のデビッド(アラン・キム)はあまり気にせず、楽しげだ。
ただデビッドは心臓がちょっと弱く
モニカはそのことも心配でしかたがない。
モニカは韓国からデビッドの面倒をみてもらおうと
母(ユン・ヨジョン)を呼び寄せることに。
が、このおばあちゃん、なかなかクセもので――?!
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1980年代、アメリカに新天地を求めた
韓国系移民一家を描く作品。
監督は「君の名は。」ハリウッド実写版に抜擢された
リー・アイザック・チョン。
ブラピ率いるプランB×おなじみA24作品で
アカデミー賞6部門ノミネート。
ゴールデングローブ賞で外国語映画賞を受賞――と
とにかく大注目な作品です。
で、映画はというと
驚くほどささやかで静かな物語なんですよ。
監督の半自伝的な物語ということで
移民への差別やら、少年の苦悩やらが
ドラマチックに起こってもおかしくないなー、と思ってたら
違ってた。
この意外性が、ちょっとおもしろい。
農業に夢をかけるお父さんとあきれ顔のお母さん、
わんぱく少年デビッドと、ヤバいおばあちゃんとの攻防(笑)
大事件は起こらないけど、
でも家族にとっては大事件じゃ!ということがあったり。
小さいけれど豊かで
でも普遍的ななにかがある。
ヨーロッパ映画やアジア作品にはありそうな雰囲気ですが
こういう作品がハリウッドでウケたっていうのも
考えさせられたし
お父さん役で主演のスティーヴン・ユァンもすごくよかった。
(イ・チャンドン監督の「バーニング 劇場版」で
アヤシイお金持ち青年を演じていた彼ね)
それに
冒頭、デビッド少年が車で引っ越してくるシーン、
なんか「千と千尋~」のオープニングを連想させるんですよねー。
「君の名は。」に(勝手に)期待が高まったりしたw
そしてそして
おなじみ『AERA』で
リー・アイザック・チョン監督にインタビューさせていただいてます。
AERA dot.でも読むことが出来ます~
デビッドにはかなり自身が投影されているそうで
(てか、これよりも全然悪ガキだったと笑ってましたが)
印象深かったのが
「あのころ自分には『家族』がすべてであり
周りからどう見られているか、人種だ差別だ、といったことは
まったく感じてなかった」という話。
その視点を貫き、シンプルに、素直に描いた点が勝利ポイントでしょうね。
映画でお父さんに協力する“ちょっと変わった”地元民”にもモデルがいるそうで
アメリカの「開拓魂」が持つ広さっていうのかな
人間のフツーのやさしさが
こんな時代に、アメリカ人にとっても意外なほど響いたのか、と感じました。
それにしても本当にいま
アジア系監督の躍進ぶりはすごい。
「フェアウェル」のルル・ワン監督、「行き止まりの世界に生まれて」のビン・リュー監督、
もちろん「ノマドランド」のクロエ・ジャオ監督、
それにNetflixの「ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから」(これ、最高っす!w)のアリス・ウー監督などなど。
いろいろおもしろい状況について
『キネマ旬報』(4月上旬号)で
記事を書かせていただいております。
よかったらご一読くださいませ。
みなさんどう思われるのか聞いてみたいっす。
★3/19(金)から全国で公開。
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