カンヌある視点部門で「淵に立つ」を抑えたグランプリ作。
「オリ・マキの人生で最も幸せな日」70点★★★★
*********************************
1962年、フィンランド。
田舎のパン屋さんからボクサーになった
素朴な青年オリ・マキ(ヤルコ・ラハティ)は
祖国で開催される世界タイトルマッチで戦うことになる。
国中の期待が高まるなか、
オリ・マキは慣れない社交界での挨拶やら、取材やらで
なかなか集中できない。
なによりも彼はいま
地元の女の子ライヤ(オーラ・アイロラ)に恋をしているのだ!
そんななか、刻一刻と
試合の日は近づいてきて――?!
*********************************
1962年に祖国フィンランドの期待を背負って戦った
実在ボクサーの物語・・・・・・なんですが
あらゆるところが拍子抜け!というオモシロイ作品。
もちろん、悪い意味じゃなくです。
一瞬、当時のドキュメンタリーフィルムかと思う
16ミリモノクロフィルムで撮られた、素朴な映像。
女の子を自転車の前に座らせて走るシーンなんて、
60年代のヌーヴェルヴァーグ映画みたい。
で、祖国の期待を一心に背負ってるはずの
朴訥な主人公オリ・マキは
練習も減量もそっちのけで、好きな女の子に夢中・・・・・・という。
迫力のパンチや試合がメインではなく
不器用な男子が
あ~、好きな子ができちゃった!あ~好きで好きで好きでたまらない!と
静かに身もだえする映画なんだもん。
しかも、本人にちゃんと取材してる実話(笑)
ライト級(61キロくらい)から、フェザー級に級を落とし
57キロを切らなきゃいけないのに
ちょっと?カノジョと遊園地に遊びに行って、ソーセージ食べてる場合ですか?!とか
なんとも可愛らしく、おかしいんですよ。
祖国の期待高まるなか、なかなか集中できないオリ・マキ。
でも、ある出来事から、グッと変化する彼の顔に
ポン、と切り替わるカットとか、目に残るシーンが多い。
それにカノジョ役のオーナ・アイロラ(歌手でもあるそう)がまた
大らかな造作の美人で
ヌーヴェルヴァーグっぽい風情なんですよね。
マネージャー役のエーロ・ミロノフは
「ボーダー 二つの世界」(19年)の、あのヴォーレ役の人だった!
社交界もお金もどうでもいい。
田舎で湖に石投げして、
好きな人と、ずっと一瞬に年を取っていけたらいいね!という可愛らしさ。
そして50余年経ったいま、
回り回って、これがいまの若者のしあわせ感覚なのかも、と思ったりする。
ラスト、二人とすれ違う老夫婦が、
本物のオリ・マキ夫婦だという仕掛けも
まあ小憎い!(って言葉であってるかしら)
★1/17(金)から新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます