ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

天地明察

2012-09-17 16:25:07 | た行

思ったより、よかったんだけど
キレイすぎるし、長いんだ。

「天地明察」67点★★★

*************************

今から400年ほど前の江戸時代。

安井算哲(岡田准一)は、
天体観測と算術が大好きな青年。

神社の境内に掲げられた、顔も知らぬ好敵手からの問題を
必死に解いたりする日々。

あるとき、その情熱が認められ
算哲は各地を旅し、北極星の高度を図る仕事を命じられる。

1年半にも及ぶ調査のあいだに
算哲は
800年前に制定された暦が、
ズレ始めていることに気づく。

暦のズレは農作業のタイミングなどにも影響を及ぼし、
人々の暮らしにも影響する。

算哲は暦を改めることを進言するが、
しかし、そこには多くの壁が立ちはだかり――?!

*************************


「おくりびと」滝田洋二郎監督が

実在の算術家の功績を描いた
沖方丁のベストセラーを映画化したもの。


算術好きの青年が
天文への情熱から世の中を動かし
周りの人々も彼を支える、といういい話で、

まっすぐな主人公に
それを支えるよき女性(宮崎あおい)

天才数学者(市川猿之助)との
絵馬を介した算術勝負や
天体好き老人コンビ(笹野高史、岸部一徳)のユーモアなどが散りばめられ、

安定感抜群。


同じ意思や目的でつながる善き人々の仲間意識やほんわか笑い、
苦難の共有という点で
「おくりびと」に似てもいて、

一種の「おしごとシリーズ」ともいえますな。


ただ143分は長い!

それにすべてがキレイすぎるんだな。

たとえば暦の改暦をめぐるある勝負は
3年かけて行われたりするんですが、
その間の時間の経過や苦労に、重みがない。

一度、日食のタイミングをはずしたら
次は10年後――とかな世界なのに
誰も年もとらないし、ボロッちくなってない(笑)

いくらなんでも、ちょっとファンタジーじゃないか?と(笑)

まあそうした部分は
あえてバッサリ削ったんだと思いますけどね。


若い世代に歴史と数学に興味を持たせるには
とてもよい作品でしょう。

それに市川猿之助氏がよかったな。


★9/15から全国で公開。

「天地明察」公式サイト
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2 コメント

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ランクC (空気人形)
2012-09-26 20:00:05
これを書く前に番長のコメントを読むと、私の感想と結構一致する点があるんですね~。

暦勝負の時間経過の曖昧さなんて、考慮不足ですよ。一種の手抜き。紙を徐々に日焼けさせれば一発でしょう。

岡田君も宮崎あおいも年を取らない。
ベテラン陣のそれぞれに持ち味を出せる役回りに対して、染五郎なんてかわいそう。いくら松竹が制作に関わっているからといって、白塗りの敵役なんて勿体ない。猿之助に美味しい役を振ったのだから、余計そう思います。

あとはデジタルの細部くっきり、背景から浮き上がり映像はどうも嫌いです。フィルムのザラザラ感が欲しいです。

評価 案外の出来。失敗まではいかないけど、安全策のような作品。三平の失敗に懲りたのかな~。

ついでに二言(非常に失礼かもしれませんが...)。

番長は「はかる」の漢字をよく間違えています。
図るは計画する。測るは面積や長さをはかる。

原作者は 冲方(うぶかた) 沖の異字体で「にすい」です。でも、これは結構間違えます。
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ひゃ~ (ぽつお番長)
2012-09-26 23:43:57

先生、すいません!

確かによく間違えてます!
ま、これだけじゃないんですが(焦)

覚えておきます。
ご指摘ありがとうございます。

冲方さんの「冲」はしっかり間違えてました。
失礼いたしました。
返信する

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