見ごたえ120%!
「私は確信する」78点★★★★
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2000年2月27日。
フランス南西部トゥールーズで
38歳の女性スザンヌ・ヴィギエが忽然と姿を消した。
スザンヌの夫で、3人の子の父であるジャック(ローラン・リュカ)に
殺人の容疑がかけられるが
スザンヌの遺体は見つからず、事件かどうかもわからない。
ジャックは証拠不十分で釈放されるが
マスコミはジャックが映画マニアだったことから
「ヒッチコック狂による完全犯罪!」と無責任にセンセーショナルに
事件を書き立てた。
そして9年後の2009年。
ようやくジャックの裁判が始まる。
ジャック一家と関わりのある
シングルマザーのノラ(マリーナ・フォイス)は
ジャックの弁護士(オリヴィエ・グルメ)から
事件に関わる膨大な通話記録を調べるよう依頼される。
その記録を聞くうちにノラは
スザンヌの愛人だった男の、不審な通話記録に気づくのだが――?!
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フランスで現実に起こった事件をもとに
限りなく事実に近く、
しかしあえてフィクションで描かれた作品です。
過剰にドラマな描写など一切なく、骨太で
それでもまったく退屈させないのが
スゴイ。
2000年に、遺体なきまま、
妻殺しの犯人にされた夫ジャック。
すぐに証拠不十分で釈放されるんですが
2009年にようやく裁判がはじまり(裁判まで、長っ!)
そこで有罪になる確立が高まってしまう。
フランスでは裁判まで長い時間がかかることは
ままあるらしいんですが
それにしても、この裁判は特殊だったと
監督も言ってました。
で、ここで
一家と縁があるヒロイン・ノラが登場。
彼女の存在はフィクションなのですが
それこそが、この映画のキモなんですね。
で、ノラはジャックの弁護士デュポン=モレッティからの依頼で
関係者の膨大な電話の通話記録データを聞き起こすことになる。
そのうちに、ノラは
妻スザンヌの愛人だった男の怪しい通話記録に気づき
「ジャックは無罪だ!」と独自の捜査をしていく――
という展開。
血痕の謎、消えた電話帳や鍵など
ミステリー展開のハラハラ
さらに裁判の行方のドキドキも
存分にあるのですが
この映画のミソは
このノラの無償の奔走にある。
シングルマザーのノラは
息子との時間や、ついには仕事まで失いながら
「ジャックは無罪だ!」「真犯人は愛人だった男よ!」という確証を得て
そのことを証明せんと、突っ走るんですね。
彼女がいなければ、ジャックは有罪だったかもしれないし
観客も完全にノラの正義に引っ張られ
「それいけ!」となる。
のですが、ここが妙というか、おもしろいというか
意外なことに
監督は彼女の正義を、賛美するようなことをしないんです。
「ジャックは無実よ!これが証拠よ!」と
息巻くノラを
デュポン=モレッティ弁護士は、すごーく冷静に、突き放す。
我々観客も「え?」「ええ?もっと褒めてよ!」と思うほどの冷淡さなのですが
でも、そこに監督の意図があるのだと思うのです。
自らを正義と信じ、突っ走るノラの姿は
そのまま
ジャックを有罪だとする検察側(警視)や
彼を有罪と決めつけて騒ぎ立てた
マスコミの合わせ鏡にもなっている。
結局、人間は自分が見たい、と思うものを信じてしまう生き物なのだ、ということ。
その危うさを、
監督は示しているのだと思うのです。
ノラを演じるマリーナ・フォイスの熱演も素晴らしいし
実在するデュポン=モレッティ弁護士役オリヴィエ・グルメの名演も、さすがの迫力。
(ダルンデンヌ兄弟監督作品常連の、あの方です)
それに「ヒッチコックマニア」だというジャックに絡めて
映画ネタがちょこちょこ出てくるものおもしろい。
裁判官が裁判の冒頭でジャックに
「この(遺体なき殺人)事件のシチュエーションはどのヒッチコック作品だろうねえ?」
と聞き、
ジャックが「バルカン超特急」と答え、裁判官が
「『間違えられた男』もあるよね」とか応じるシーン。
思わず「え? 裁判でそんな話するの?」と思うんですが
実際に裁判を傍聴していた監督によると
ホントにあったことなんだそうです。
そのへんのお話、
「AERA」の「いま観るシネマ」で
監督にインタビューしております。
AERAdot.でも読めますので
ぜひ映画と併せてご一読いただければ!
★2/12(金)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
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