ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

誰がため

2009-12-18 17:20:05 | た行
なんと!
「THIS IS IT」12/19からアンコール上映決定!

やった~!!


えーと、中年恋愛映画はとりあえず小休止して
ちょっとシリアスな戦争映画を。


「誰がため」67点。★★☆


1944年、ナチス・ドイツ占領下のデンマークで
地下組織(レジスタンス)として動いた
2人の実在の男たちを描いたドラマです。


占領当時、デンマークは割とゆるい「保護占領」の名のもとに
政府の存続も許されていた。

でもだんだんとナチスの縛りが強くなり
抵抗運動も激しさを増していく。


そんななかで彼らは組織のボスに命じられ
ナチスに協力する同胞デンマーク人を暗殺するんだけど

しかし実はそれには裏があった・・・という
なかなかスリリングな話。


最近までデンマークでもタブーとされた実話だそうです。


正義のために人を殺してよいのか?という逡巡、
そして戦争という混乱のなかで
「いったいなにが正義なのか?」
「誰が敵なのか?」
という人間の危うく複雑な心理も描ききっている。


ちょっと硬さはあるけれど
いつもながら歴史を知るのに
映画ほどよい教材はないと感じます。


主人公の2人も好演しており

年上の家庭人シトロンを演じる
マッツ・ミケルセンは
もうすぐ公開される
「シャネル&ストラヴィンスキー」のストラヴィンスキー役。

若いフラメンを演じる
トゥーレ・リントハートって
「天使と悪魔」に出演ってあるけれど
トム・ハンクスと図書室に閉じ込められたあの人か!?

「蒼い棘」にも出てるんだ。これは忘れてるな・・・


ちなみに劇場用のパンフレットに
番長インタビューによる
浅井信雄さん×杉原千暁さんの対談載ってます。

というわけで明日から公開。
ヨロシク


★12/19からシネマライズほか全国で順次公開。

「誰がため」公式サイト
コメント (3)
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新しい人生のはじめかた

2009-12-17 14:17:54 | あ行
子ども手当て、ようやく所得制限案ですって?
当然、当然。フフフフフ。

さて、今回は恋愛映画を。

「新しい人生のはじめかた」69点★★☆

70男(映画では60代の設定)と
50女(映画では40代中盤か?)
による恋愛映画です。

って、こういっただけで逃げてくお客さんがいそうですが、
待って、逃げないで。

けっこうロマンチックだし
ハリウッドらしい正統派な
オトナの恋愛映画ですよ。

なんたって
もう70男のダスティン・ホフマンが
まだまだ恋愛映画の主人公になれるんだぜ、と見せつけてくれて

軽くサプライズな作品でした。

ロンドンを舞台に
離婚歴ありの60男と、気がついたら婚期を逃してた40女が
出会うというお話。

最悪の出会い→一転して意気投合
→いいムード→すれ違い

と、恋愛映画としては少々お決まりの展開ではあるけれど
ちょっとした演出がロマンチックで
気が利いてる。

帰ろうとする彼女をピアノで呼び止める、とかね。


前に井筒督が「卒業」のダスティン・ホフマンを
元祖・ニートと評してたことがあったけど
いま言うなら
元祖・草食系?ちと違うか。

でもかようにこの人は70過ぎても
本当にギラギラ脂っぽいところが
まったくない。

「YESなら、君の笑顔を見せて」なんて
くっさいセリフが
クシャッとした笑顔とともに似合ってしまうのは
彼ならではでしょう。


ただ、相手役のエマ・トンプソンは
少々くたびれムードが色濃く
ロマンチック映画のヒロインとしてはキツイかな……


いやー最近ホント、恋愛映画の主人公の年齢って
あがってるんですよ

明日は「50歳からの恋愛白書」
紹介しちゃおうかなー。え?もういい?


★2010年2/6からTOHOシネマズシャンテほか全国で公開。

「新しい人生のはじめかた」公式サイト
コメント (4)
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マイレージ、マイライフ

2009-12-16 17:40:23 | ま行
ゴールデン・グローブ賞ノミネート、発表になりましたね~
yahoo記事

最多6部門ノミネートはこの映画。

「マイレージ、マイライフ」84点★★★

これはおもしろいでしょう!

昨日見たてホヤホヤの番長も
いたく気に入りました。


主人公は年間322日(!)も出張し
航空会社のマイルを貯めることに生き甲斐を見い出している
ライアン(ジョージ・クルーニー)。

リストラ勧告人という
イヤ~な仕事もなんのその。

しかし、この“出張命”男を脅かすのが
新入社員ナタリーが考案した
「ネットによるリストラ勧告システム」。


これじゃ大好きな出張がなくなっちゃうじゃねーか!と
彼がナタリーを連れて
リストラ実地研修に出かける、という話。


ほら、ストーリーを聞いただけで
もうおもしろそうじゃありませんか?

さらにキャラ設定の巧みさが
最後まで物語を引っ張って飽きさせません。


特典とステイタス好きで何が悪い?と割り切った
G・クルーニーの芝居は
さすがにワンランク上の安定感。

新入社員の成長スト―リーは
さながら「プラダを着た悪魔」の爽快さ。


このご時世、リストラされた一人一人の反応は
ことさら骨身に染みるしね。


監督は「サンキュー・スモーキング」「JUNO/ジュノ」の
ジェイソン・ライトマン(32)。

シニカルさと時事性、着眼点がさすがで
恋愛モノにもお仕事モノにも
家族再生モノにも収まらない噛みごたえ十分の映画です。


ただ終盤は
それこそちょっと荷物、詰め込みすぎたかな・・・(笑)

主人公同様、余計な荷物は持たない主義の番長(独身)にとっては
ちょいほろ苦い後味が残りました。

でも、おすすめ!


★2010年3/20からTOHOシネマズシャンテほか全国公開。

「マイレージ、マイライフ」公式サイト
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食堂かたつむり

2009-12-13 18:45:49 | さ行
ヘビーな映画に疲れたら。

「食堂かたつむり」72点★★★


おいしそうな手料理シーン
毎日を“ていねいに”暮らすことのしあわせを描く

「かもめ食堂」から続く
“ゆるカフェ系ムービー”一派です。
(ぬるい、とも言う。番長命名)


主人公は東京で失恋し
ショックで声を失った倫子(柴咲コウ)。

彼女がちょっと変わった母(余貴美子)のいる田舎に帰り
1日一組限定の食堂を開く・・・という話。

いや、話はなんてことないんですが
驚くのは
この系統の映画の
時代の空気や流行をいち早くキャッチする嗅覚。


柴咲コウのスタイルはいままさに流行りの
“森ガール”だし

登場する食べ物もより自然派、有機、地産地消の方向へ
雑誌でいうと「うたかま」「天然生活」な世界に
入り込んでいる。


古い納屋を改造した食堂は
古民家カフェ風。


原作は「王様のブランチ」で紹介されて
ヒットした小説だそうで
いまは小説のマーケットからしてそういう傾向にあるらしい。


よくまあジャストに時代を読むよなあと感心しつつ
より細分化される個人嗜好の多彩さを
改めて感じました。


嫌いな世界じゃないし
コラージュを多様したグラフィックセンスもよく
のんびり楽しめたけど

「命の食べかた」的展開の部分は
やはりちょっと許容できませんでした。

★2010年2/6から全国で公開。

「食堂かたつむり」公式サイト
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ラブリーボーン

2009-12-12 13:50:58 | ら行
昨日振っといたお題にいきましょうかね。

「ラブリーボーン」69点★★☆


スティーブン・スピルバーグ製作総指揮×
「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソン監督の
超注目作品なんですが

うーん、これは難しい。

話はいわば「千の風になって」なんですわ。


14歳で殺されてしまった少女
天国でも地上でもない“あいだの世界”にとどまり
自分亡き後の家族を見守る、という話。


この映画は
いままで誰もやったことのない
領域に踏み込んでいるのは確か。


死後の世界を美化するだけでもなく
ファンタジックだけにも偏らず
犯人追求のミステリー要素もある。


自分が殺されるまでを淡々と語る少女の目線で
物事を見ている我々は
彼女に迫り来る悪い予感に
胸がつぶれそうになりっぱなし。

犯人憎しの感情もピークに達し
2時間19分、目を離せない。

死後の世界の映像は実に幻想的
視覚的な驚きもあり

ネタ的に閉塞感ある映画界への実験的な意欲も感じる。

そこはすっごく評価したい!

でもねー
これだけ誉めても
いかんせんラストがなあ!


問題なのは何を描いたかではなく
何を言いたかったのかが
不明瞭なところなんですよ。


「千の風になって」の歌詞と世界観は
実際に愛する人を亡くした人のなぐさめになるけれど
この映画ははっきりいってならないと思う。


どちらかといえばスティーブン・キングの世界に近いというか
(いや、S・キング大好きですけどね)
ハートウォーミングを期待していくと危険です。


そこが評価の難しい点です。


意欲と映画的な快楽は買う。
でも、受け取るものは
あなたの期待とは違うかもしれない。

そういうことでした。

間違いなく賛否両論、あるだろうなこれは。

ちなみに犯人役の俳優はよく見る人なんだけど
最後までその人だとわからなかった。
見終わってから、名前と経歴を調べたらピンとくるはず。

えっ?あの人だったの?とびっくりしますよ、絶対。


★2010年1/26から丸の内ピカデリーほか全国拡大公開。

「ラブリーボーン」公式サイト

これ予告映像見せすぎ。映画を楽しみたい人は、見ないほうがいいですよ。
コメント (2)
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