ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ダレン・シャン

2010-01-19 23:16:51 | た行
あーこれは残念だった!

「ダレン・シャン」41点★


原作はあのハリーポッター同様
世界中にファンを持つ
児童文学ファンタジー、ってことで
すっごく期待したんですが・・・


主人公ダレン・シャン(クリス・マッソグリア)は
成績優秀でモテモテの16歳。

彼はある出来事をきっかけに
バンパイア(吸血鬼)と取引をして
半分人間、半分吸血鬼の
ハーフ・バンパイアとして生きることになる。

が、そんな彼を凶暴なバンパイア一味
バンパニーズが狙い始める・・・という話なんですが


まず映画自体が構造不足。

観客の感情の行方に無頓着というのか
「で、結局あの毒クモはどこ行ったんだ?」みたいな
フォロー下手による
感情の中断が多すぎて

全然入り込めない。


なにより出てくるキャラクターみんな
一様にオーラがない・・・(泣)


ルックスがイマイチとかだけじゃなく
なんか、フツーに平凡なんです。

唯一、主人公のクリス・マッソグリアが
絵的にギリギリの線って感じ・・・


フリークス・ショーから始まる展開は
カルト色とダークさたっぷりのムードなんだから
トム・ウェイツくらい担ぎ出せばよかったのに。


オープニングの影絵ふうアニメーションは
すごくよかったんだけどなあ。

続きは監督、変わるのかな。

原作ファンがどう見るのか
ぜひ聞いてみたいところではありますが。

あ、ちなみに渡辺謙がけっこう出てます。


★3/19から全国で公開。

「ダレン・シャン」公式サイト
コメント (4)
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月に囚われた男

2010-01-18 23:38:10 | た行
まずタイトルセンスが秀逸ですな。


「月に囚われた男」78点★★★

デヴィッド・ボウイの息子
ダンカン・ジョーンズの監督デビュー作。

原題は「MOON」だけど
この邦題のほうが
断然映画の中身をよく表してます。

かつ、もちろん
デヴィッド・ボウイの「地球に落ちてきた男」
かけてあるわけですねえ。
しびれますねえ。


舞台は近未来。

人類が月で採れる石を
新たなエネルギー源としている時代。

サム(サム・ロックウェル)はその石を掘削するため
月面基地に派遣された従業員。

だが、労働者はたった1人。

契約期間は3年。

唯一の話相手はロボットのガ―ディ(声はケビン・スペイシー)。

が、そんなひとりぼっちの日々も
あと2週間で終わり。
ようやく地球に残してきた妻子に会える・・・!というときに
サムの周りで
奇妙な出来事が起こり始める・・・という話。



極限での人間心理を描くSFでありながら
幻覚やエイリアン方面に行かず

あくまでも理論的な筋道に基づく展開に
たいへん好感が持てました。


ダンカン・ジョーンズって1971年生まれ。
番長とほぼ同い年。

「2001年宇宙の旅」ほか
1970年代、80年代の自分がリスペクトしてる
SFの要素からの影響をはっきりと表明して

蓄積して再構築してるところが
この世代っぽい感じです。


こんなにクレバーな息子がいるなんて
お父さんの株も上がりますなあ。


★4月、恵比寿ガーデンシネマほか全国で公開。

「月に囚われた男」公式サイトは、1月下旬アップ予定だそうです。
コメント (6)
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息もできない

2010-01-17 07:04:24 | あ行
世界で大絶賛、という韓国映画


「息もできない」57点★★


家族に恵まれず
愛を知らずに育ったチンピラ青年(ヤン・イクチュン)
やはり家庭に問題ある
女子高生(キム・コッピ)

そろりそろりと手を差しのべあい
心を通わせていく様を描いた作品です。


見終わった瞬間、
あ、これは
韓国版「ホットロード」(by.紡木たく)だと思いました。


悪くないんです。


まず主人公のヤン・イクチュン(34歳)が
自ら監督、脚本を書いたデビュー作というのがすごい


自伝的要素が相当入っているらしく


描かれる暴力も叫びも
皮膚感覚に訴えてくるような
じっとり湿った空気と
それに拮抗する乾きをともなっていて

そこにオリジナリティがある。


各国の映画祭で25以上もの賞に輝いたというのも
うなずけます。


ただ
荒削りなのはいいけれど
130分ってけっこうつらかった。


ラストの展開が読めてしまうのも残念。


でも実は見た直後は、もっと点が低かったのだ。
しかし思い出すにつれ
次第にじわじわと何かが
体のなかで這い上がってくるんです。


「母なる証明」もそうだったんだよなあ。
韓国映画ってこういう感じ、多いです。


★3月下旬(予定)シネマライズほかで公開

「息もできない」公式サイト
コメント (6)
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噂のモーガン夫妻

2010-01-16 05:17:54 | あ行
笑った―。

「噂のモーガン夫妻」80点★★★


NYに暮らすメリル(サラ・ジェシカ・パーカー)と
ポール(ヒュー・グラント)は
別居中の夫婦。


あるとき偶然、一緒に殺人を目撃してしまった二人は
“証人保護プログラム”によって
田舎にかくまわれることになる――という話。


冷え切った都会のカップルがド田舎に放り込まれるという
シチュエーションもおもしろいけど

サラとヒューの
凸凹夫婦コンビがこれ絶妙。

ちっちゃいサラが飛び跳ねて抗議するシーンとか
今思い出しても笑えるし


大嫌いじゃないけれど、ここがひっかかるんじゃい!・・・ってな
微妙な夫婦の距離感も自然。

夫婦ゲンカもギャーギャーわめくだけじゃなく
ちゃんと会話に内容がある。


それに二人が田舎で遭遇するカルチャーギャップ
いちいち笑っちゃいました。
スーパーがでかい!とかね。


そしてなにより
ボケ役に徹したヒュー・グラントの
細かい小ネタの連発が番長けっこうツボ(笑)

まあちょっとクドいところもあり
隣の男性はクスリともしてませんでしたが・・・


夫婦の関係とはうんぬん、よりも
軽くコメディとして楽しめるのがよかったです。


しかしサラ・ジェシカ・パーカーって声がかわいいよね。
「ラブリーボーン」の女の子(シアーシャ・ローナン)が成長したら
こんな感じになるかも・・・とか思いました。


★3/12から全国で公開。

噂のモーガン夫妻」公式サイト
コメント (3)
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NINE

2010-01-14 23:34:29 | な行
すっごく楽しみにしてましたコレ!


「NINE」73点★★☆


「シカゴ」のロブ・マーシャル監督が
ニコール・キッドマン、ペネロペ・クルス、ジュディ・デンチなどなど

名だたる大女優たちを好き放題にはべらせた(?)
超話題のミュージカル映画。


スタッフ&キャストの
アカデミー賞受賞総数が17個というから
もう「スゲー」の一言です。


で、いま見てきたばかりの
ホヤホヤなんですが

予想以上であり、予想内でもありました。


舞台は1960年代のイタリア。

映画監督のグイド(ダニエル・デイ=ルイス)は
新作にとりかかっているが
まったくアイデアが浮かばない。

彼の妄想、いやイマジネーションの世界では
愛人のカルラ(ぺネロぺ・クルス)やヴォーグ誌の記者(ケイト・ハドソン)たちが
妖しく美しく、歌いながら彼を誘惑する…というお話。



大女優たちがマジで歌い踊る様は
予想どおり、超エキサイティング!

過去作品で実力保証済みの
ニコール・キッドマンやコティヤールはもちろん
ぺネロぺ、ケイト・ハドソンも大音量で大迫力。

映画好きなら光輝く彼女たちを見るだけで
価値あるでしょう。


でも残念ながらそれ以上のものはなく
一般娯楽としてはギリギリの線。


このミュージカル(舞台版も)はもともと
フェリーニの映画「81/2」を元ネタにしてあるそうで
(この映画、学生時代に3度挑戦して、3度寝たっけ…


つまりストーリーといえるほどの軸がないのだ。

女たちが一人ずつ散りばめられ
順番に一曲ずつ披露する、という構成も
ちょっとシンプルすぎる。

ニコール・キッドマンとぺネロぺとコティヤールが
三つ巴で歌ったりすれば
さらに大爆発!だったのだろうけど。

ただスクリーンからあふれ出す
爆発しそうなエネルギーと
「映画の熱きよき時代」への思いは存分に伝わり
圧倒されました。


あのよき時代よ再び!の願いも込めて…


★3/19から全国で公開。

「NINE」公式サイト
コメント (4)
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