ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

すべて彼女のために

2010-01-03 11:29:38 | さ行
「クラッシュ」のポール・ハギスが
リメイクを決めたというフランス映画

「すべて彼女のために」73点★★★

ははーん。

なんで彼が手を出したくなったか
わかる気がしました。


フランス、パリに暮らす
幸せな夫婦、夫ジュリアン(ヴァンサン・ランドン)と
妻リザ(ダイアン・クルーガー)。

しかし、ある朝突然踏み込んできた警察によって
リザは逮捕されてしまう。


リザにかけられた容疑はなんと殺人。

身に覚えのない罪で投獄された妻を
なんとか救おうとする
夫の執念を描くサスペンスです。


救おうとするったってあなた
裁判で戦う、とかじゃないんです。

法じゃ埒があかないので
もっと直接的な手段。


ゆえにわかりやすく、手に汗握りやすく、

96分とはとても思えない濃厚さで
最後までかなりハラハラさせられました。


ダイアン・クルーガーが
フランス語に堪能なのにもびっくり。

しかし彼女はそもそもパリで演技の勉強をして
フランス映画で評価され
ハリウッドに来たんですね。知らなかった。


と、非常に光る作品でしたが
ただ欲を言えば
もうひとひだの深みが欲しいところ。


実は妻が犯人だった?なんて
二重三重の罠があったらおもしろそうだなーなんて

ポール・ハギスもきっと
そう思ったのではなかろうか?

いや、これはさらに化ける可能性大ですぞ。


★2/27からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

「すべて彼女のために」公式サイト
コメント (2)
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シャネル&ストラヴィンスキー

2010-01-02 16:04:37 | さ行
昨年から続いた
シャネル伝記映画、第3弾。

「シャネル&ストラヴィンスキー」70点★★☆


ロングランヒットした
シャーリー・マクレーン版、

「アメリ」のオドレイ・トトゥ版

のなかでは、一番大人っぽい映画でした。


舞台は1920年、シャネル37歳のころ。

最愛の人の事故死を乗り越えた彼女が
女としてデザイナーとして
もっとも熟した時代。


そんな彼女が出会ったのが
「春の祭典」で知られる作曲家ストラヴィンスキー。


芸術という絆で結ばれた二人の間に
やがて静かに熱く
の炎が燃えさかる――というお話。



実際にシャネルはストラヴィンスキーのパトロンであり
二人の知られざる恋もあり得たであろう話です。


まず映画全体のトーンが
ブラック&ホワイトのシャネルカラーに統一されていて
とてもスタイリッシュ。


それに
シャネル役の女優アナ・ムグラリスは
2002年からシャネルブランドのミューズとしても
活躍しているフランス人女優。


これまでのシャネル映画のなかで一番美人でスタイルよく、
シャネル本人にとっては
最もうれしく、納得のいく作品じゃないでしょうか。


ストラヴィンスキー役のマッツ・ミケルセンとのコンビも
絵的に美しく
濡れ場もガッツリ魅せてくれます。


ただ創作のエネルギーを背徳のセックスに求めつつ
妻子も捨てきれない
芸術家“だめんず”の描き方は
ちょっとありきたりかな。


ともあれバレエと音楽、ファッション、そして恋と
新年にふさわしい
芸術性の高い映画です。


★1/16からシネスイッチ銀座、Bunkamuraルシネマほか全国で公開。

「シャネル&ストラヴィンスキー」公式サイト

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恋するベーカリー

2010-01-01 16:58:56 | か行
あけましておめでとうございます。
今年も番長をどぞよろしく。

さて新年一発目は



「恋するベーカリー」69点★★☆


メリル・ストリープ、出まくりですねえ。


「ホリディ」「恋愛適齢期」など
恋愛モノの権化、ナンシー・マイヤーズ監督による
アラ還・ラブストーリーです。


人気ベーカリーの経営者ジェーン(メリル・ストリープ)は
元夫(アレック・ボールドウィン)の浮気が原因で
10年前に離婚し、3人の子どもを育てあげた女性。


最近は、建築家アダム(スティーブ・マーティン)と
ちょっとイイ雰囲気に。


が、あるホテルのバーで
元夫と偶然会い、盛り上がった彼女は
勢いでベッドを共にしてしまう。

元夫は再婚し、すでに既婚者。
「え?これって不倫になるの?」――という
“因果は巡る”な恋愛話です。



まあ、さすがによく練られた上質な映画でした。


軽妙で洒落てて、笑えることころも多いし

主な舞台となるジェーンの住む一軒家が
すっごく素敵だし。

“酸いも甘いも”世代の恋愛を
複雑さを内包しつつ
極力“フレッシュ”に描いている点も評価。


んでもってハッピーハッピーでなく
ちょいほろ苦さが残るところは
さすがに熟したオトナの映画でした。


主演男優2人が今年のアカデミー賞の
司会を務める旬のオヤジなのも話題です。


ただ、タイトルから勝手に想像してたのが
「ジュリー&ジュリア」的な
美味しいパン&女性の仕事&生き方的なストーリーだったので
(試写状だってコレだもん)

      ↓



そういう意味では想像とかなり違ってた。



かなりガッツリ濃いラブストーリーなんですよ。


ベーカリーってより
濃厚なフォアグラって感じ。


ナンシー・マイヤーズってやっぱり
ラブの比重が大きいんだなあ。
番長としてはもう少し
“生き方”方面を補填して欲しいのであります。


それに
幾つになっても恋していただいて結構なんですが
親世代を想起しかねないこの世代の恋愛は
ちょっと生々しくもあり。

わたくしもまだまだひよっ子でございます。

★2/19から全国で公開。

「恋するベーカリー」公式サイト
コメント (2)
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