エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

馬酔木

2014年03月19日 | ポエム
馬酔木・・・。
馬がこの花や葉っぱを食べると、酩酊することからこの名前が付いた。

奈良公園の鹿も、この木の葉は食べないというのだが・・・。
含有成分「アセボトキシン」は人間にも有毒で、足がしびれたようになることから、「アシシビレ(足痺れ)」 が「アセビ」になったという説もある。



俳句の世界では、つとに有名な花である。

俳句雑誌。水原秋桜子(しゅうおうし)が従来雑詠選を担当していた俳誌『破魔弓(はまゆみ)』(1922.4創刊)を自ら主宰することになり、1928年(昭和3)7月『馬酔木』と改題した。
秋桜子は青畝(せいほ)、誓子(せいし)、素十(すじゅう)とともに『ホトトギス』4Sの一人であり、課題吟選者でもあったが、『ホトトギス』の写生主義に飽き足らず、31年10月号の『馬酔木』に「自然の真と文芸上の真」と題する論文を掲げて『ホトトギス』を脱退し、新興俳句運動を興した。







「馬酔木咲く人は発条持ち街に出る」







『ホトトギス』の写生が、瑣末描写に傾いていくことを批判、『ホトトギス』を離れた。

 馬酔木咲く金堂の扉にわが触れぬ
             秋桜子



3年前の詩である。

  馬酔木


 その豊かな花が
 胸を打つ
 その豊かな房が
 甘酸っぱい感覚を刺激する
 自然に血液が熱くなり
 血管が膨らんでいく
 胸の鼓動は脈打って体温を上げる
 血液が激しく流れる

 いつのまにか
 春が来たのだ

 春はそうして突然来る
 突然来て
 人を暖める
 花にとっても暖春である
 花は暖められ
 開き
 健やかに咲き初める

 馬酔木のたゆまぬ咲き方は
 訝しげな視線を頑なに拒む
 毒気を隠して咲くのだ

 人は馬酔木に何を見たのか
 人は馬酔木に自分の行く末を見るのだ
 目を凝らすと
 明日が見えるのだ

 季節が
 いかに過酷な状況におかれていたとしても
 必ず巡ってくるように
 だ

 馬酔木はだから裏切らない
 たわわな花房に
 真理を隠し持って咲き初めるのだ



誠に結構な春初めである。



花言葉は「犠牲」「二人で旅をしよう」「清純な心」だ。
3,11からまる3年。
犠牲者に、哀悼の誠を捧げる。



      荒 野人