映画館の座席に着くと 朝一の上映のせいか
客席はまだまばらな状態だった
しかし 最後列のセンターを確保したので
すぐに隣の席に観客がやってきた
オードトアレのかすかな香りが隣の男性客から匂ってくる
インセプションの
上映が始まってからもその香りが気になる
五感の中でも嗅覚が一番強いイメージを誘うのではないか?
私がまだその種の香料の入ったの整髪料やオードトアレを
使っていた頃の想い出が染み出して
映画に没入できないままストーリーは進行してゆく
そのストーリーが複雑難解なので
嗅覚からくるイメージに流されそうになる
映画というものは虚構の積み重ねで
その虚構を受け入れた時 エンターテイメントとして
昇華してゆくものなのに
この映画は夢という虚構を支配するストーリーのために
虚構を虚構として楽しむ観客を裏切る作用をもっている
常にこれは「嘘だ夢だ」と呼びかけていて
観客は不快なストレスを感じてしまうのだ
映画の最後に現れる独楽が
回転力を失ってバランスを崩し停止する事を
祈っている自分を感じた
しかし独楽が停止する前に映画は終わってしまった