先週13日から2泊3日で「能登の世界農業遺産を学ぶスタディ・ツアー」(単位科目)を実施した。履修学生14人のほかに留学生6人も参加して日本と海外(ドイツ、中国、インドネシア、ベトナム)の目線で能登を語り合いながらツアーを楽しんだ。
私自身も能登のことを「日本の中のアジア」と説明したりする。文化や風土で独特のアジアっぽいカラーがある。留学生が「アジアですよ」と思わず感想を漏らしたのが祭りだった。14日に能登半島の尖端、珠洲市を訪れ、地域の伝統的な祭礼「正院(しょういん)キリコ祭り」を見学した。能登半島では夏から秋にかけて祭礼のシーズン。キリコは収穫を神様に感謝する祭礼用の奉灯を巨大化したもので、大きなものは高さ16㍍にもなる。この日、輪島塗に蒔(まき)絵で装飾された何基ものキリコが地区の神社に集い、鉦(かね)と太鼓のリズムが祭りムードが盛り上がっていた。
中国ウイグルからの留学生が「アジア」と指摘したのは、そのキリコを担ぐ青年たちがまとっている、地元ではドテラと呼ばれる衣装だった。「これアジアの少数民族が祭礼のときに着る衣装とそっくり」と。自らも少数民族であり、装束に関心を持っていた。地元に人に聞くと、もともと女性の和服用の襦袢(じゅばん)を祭りのときに粋に羽織ったのがルーツと言われていて、同じ能登のキリコ祭りでもこのドテラを着るのは珠洲の特徴という。色は青のほかに、赤、紫、黄など色とりどりで、それに花鳥風月の柄が入る。一人で数着持っている人もいるとか。
そして、相撲の力士が身に着ける化粧回しのようなものが「前掛け」。これにも趣味があって、龍や獅子、波などの刺繍を施して、一着何十万円の特別注文のものもあるそうだ。派手な刺繍だけではない、この前掛けにはいくつもの鈴が装着されていて、歩くとシャンシャンと音がする。着ている物も派手なら、担ぐキリコもとてもきらびやか。確かにどこかアジアっぽい雰囲気が漂う秋祭りだ。留学生の要望でキリコの前で写真を撮らせてもらった=写真・上=。
今回のスタディ・ツアーの感想でドイツからの留学生の言葉が印象的だった。「能登の探検には何度か来たことがあるが、今回は謎を解き明かしてくれる人々と出会い、デープな能登を知ることができた。アメリカの大都会から能登の里山に移住したキャロラインさんの生き方は印象的だった。里山を愛するその生き方にはとても勇気づけられた」
キャロライン渡辺さんは能登の里山で珠洲焼に取り組むアメリカ出身の女性。窯を訪ね、話を聞いた=写真・下=。ニューヨークで陶芸を志す日本人男性と知り合い、1987年に能登にやってきた。コロンビア大学で日本文化を学び、日本文化研究で知られるドナルド・キーン氏との親交もある。移住10年後に夫は他界したものの、自身は里山生活とアート活動が気に入り31年目になる。「里山での生活は私の人生そのもの。焼き物の窯は作品をつくるというより、炎を楽しむ祭りの様なものね」と。里山を歩き、田畑を耕し、土をこねて、窯の燃料となる薪は自身でつくる。冬場の除雪も自分でする。「自給自足の生活は自分に向いている。子育てするには最高の環境だったし、夫とともに夢中になってつくった窯で焼き物をつくり続けたい」
豊かな里山の自然、そして里山に人生あり。日本人が忘れかけていたことを、キャロラインさんの言葉で留学生たちが気付いてくれた。
⇒17日(祝)午後・金沢の天気 はれ
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