9日に二十歳の成人式を迎える双子の娘たちは、成人式に先立って部活の同窓会、中学の同窓会、高校の同窓会と連日出かけて行きます。成人式にはお茶の師匠からお借りした大切な晴れ着を着てゆくので、くれぐれも粗相のないように言い聞かせました。
娘たちにお祝いに贈る言葉を考えていて、吉野弘の詩を読み返しました。まだ幼い娘の奈々子さんに宛てた「奈々子に」という詩です。
その一部を抜粋します。
唐突だが
奈々子
お父さんは お前に
多くを期待しないだろう。
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか
お父さんは はっきり
知ってしまったから。
お父さんが
お前にあげたいものは
健康と
自分を愛する心だ。
(中略)
香りのよい健康と
かちとるにむづかしく
はぐくむにむづかしい
自分を愛する心だ。
さて、我が娘たちのことです。
双子の娘たちは、互いを自分の半身のように思っていて、相手にとって難しい局面を、我が事のようにとらえて二人で乗り越えてきたように、親の目には映ります。そういう意味では、おそらく自分自身に対しても、みずからの半身を愛するように、愛することが出来ているのではないかと思います。
しかし同時に、それが孤独にじっと沈潜して、そこから這い上がるようにしてつかみ取った、自分を愛する心とも、あるいは遠いのではないかと心配するのです。半身を愛するように自分に対することが「ほかからの期待に応える」ような、窮屈なことではないことを願うのです。
「かちとるにむづかしく はぐくむにむづかしい」自分を愛する心を養いなさい。それは君たちのひとりひとりが、淋しさや悲しみに触れることでしか得られないものだろうけれど、恐れずに自分の命を育みなさい。
自分も修行の駆け出しであることを白状しながら、これが成人した娘たちに向けた言葉です。