犀のように歩め

この言葉は鶴見俊輔さんに教えられました。自分の角を道標とする犀のように自分自身に対して灯火となれ、という意味です。

山茶花しぐれ

2024-11-23 23:04:56 | 日記

夜明け前に降っていた雨が、近所の山茶花(さざんか)の生垣を濡らしていました。花の少ないこの時期の山茶花の赤は、路地にひときわ鮮やかな彩りを加え、雨に濡れることでいっそう艶やかに見えます。

この時期の時雨を「山茶花時雨(さざんかしぐれ)」と呼びはじめたのは、雨に濡れてなお美しいこの花の健気さに惹かれたからでしょう。花を散らしてくれるな、という思いが強く表れて「山茶花散らし」という呼び方にもなったのだと思います。

冬にいる庭かげにして山茶花のはな動かしてゐる小鳥あり
(中村憲吉)

童謡の一節のように懐かしく、山茶花の楚々として可愛らしい印象が引き立つ一首です。「椿」では、小鳥に押されてうっかり花ごとポトリと落ちてしまいそうなので、この歌の魅力は、やはり山茶花ではなくては出せないなどと考えます。

ところでこの花の名前は、中国語でツバキ類一般を指す「山茶花」から来ており、もともとの読みは「さんさか」であったのだそうです。これが「さんざか」と訛り、語順も入れ替わって現在の「さざんか」となったのだそうです。

花の名前に「茶」の字が付いているために、残念なことに、茶花としては避けられます。それでも花の少ないこの時期には貴重な存在ですので、茶席であえて使う場合には「山椿」などと読ぶのだそうです。

そうやって時代により、場面によって、違った名前で呼ばれても気にしない鷹揚さもまた、この花の魅力のように思えてきます。

今日は高校生の社中が、研究会(家元直属の先生を講師に招いて実技指導を行う会)で、お点前を担当する日でした。私は出席できませんでしたが、一緒に出席した妻によると、堂々としたお点前だったそうです。
素直で努力家の彼女のお点前を想像して、今朝みた山茶花の花を思い出しました。


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