福岡市の繁華街天神の夜のクリスマスマーケットに出かけました。
家族そろっては、初めてのことです。コロナ禍明けの昨年は、娘たちの就活インターンや、友達付き合いなどで一緒に出向くことはなかったのです。
雑然たる日々のすきまに見えきたる光の如く年を迎うる
(高安国世『光の春』)
出店で買ったホットワインを飲み干そうとして空を見上げると、会場に並んだサンタ像の向こうに、雲間に浮かぶ月がありました。この歌のように、雑然とした日々のすきまに、ふと現れた月の光です。光に照らされて、ひとり立ちしようとしている娘たちと我々夫婦の、来年のことを思います。
月の近くには輝く木星が浮かんでおり、こんな歌を思い出しました。
真砂なす数なき星の其中に吾に向ひて光る星あり
(正岡子規『竹乃里歌』)
明治37年(1904年)子規の没後にまとめられた、遺稿集に収められた一首です。
畏友、高浜虚子が子規のために、障子に替えてガラス窓をしつらえたのは、明治33年(1900年)のことなので、明治34年(1901年)に詠まれたこの歌は、寝床からガラス窓越しに見上げた星を詠んだものに違いありません。
前掲歌の「すきまに見えきたる光」と同様、先の見えない不安の中に希望を届ける光の力が、ここにあります。「吾に向ひて光る星」は、かけがえのない友なのかもしれません。
社会人となり、不安のなかに飛び込んで行く娘たちの新しい年が、良き友に恵まれ、そして家族で見上げた、あたたかき光の如き年であれと願いました。