恐怖というのは、たいていの人が持っている感覚のひとつなのに、
感じるという面からいうと、奥が深い。
同じもの、同じことを見せたとしても、同じ感覚には、ならない。
とても感じる人。ぞっとするとき。じわじわと広がるもの。
見える恐怖と感じる恐怖。
耳から聞こえる恐怖が加わっることもある。
恐怖というものは、体験からも増幅する。
同じような事柄。同じ現象が、年齢や体験によって、変わってくることも。
人は、なぜ恐怖を感じるのか。
生を受けた人が、基本的な五感を育むのに、体に影響の強いものを先に会得
していくと聞いたことがある。
生死にかかわることを、まず身に着けていくのだそうな。
恐怖は生死にかかわるかもしれないという警告が込められていぬのかもしれない。
でも、気のつかないこともあるのは、説明つかない。
「怖い絵」で人間を読む
中野京子
NHK出版生活人新書