ハエでもカでもガでも
トイレや風呂場の壁に止まって、じっとしていることが多いので、チョウバエはごく見慣れた虫である。見慣れてはいるが、それがハエなのかカなのか、ブユなのかガなのかについては知らずにいた。刺されることも無いし、人の体に寄ってきて、煩い思いや、不快な思いをさせることもないし、ハエでもカでもどうでもいいやという虫。
チョウバエのことをフェーガジャンと言ったのではないか、父か誰かがそう呼んでいたのではないかと微かに記憶があるが、沖縄語辞典にも、その他の文献にもフェーガジャンなどという名前は無い。ウチナーグチ(沖縄口)でフェーは蠅、ガジャンは蚊のこと。ハエのようなカという意味であろう。確かに、「ハエ?カ?どっち?」ではある。
チョウバエのことを英語ではmoth flyと言う。mothはガのこと、flyはハエのこと。ガのようなハエといった意味なのであろう。これはまた、ハエなのかガなのか、である。どうでもいいような虫については、古今東西、どっちでもいいやと思うのかもしれない。
オオチョウバエ(大蝶蠅):双翅目の昆虫
チョウバエ科 日本全土、南西諸島、世界各地に分布 方言名:フェー
体長5ミリ内外と小さな虫であるのに大がつくのは、チョウバエ科の中では比較的大きいからであろう。蝶のような飛び方をするのでチョウがつく。英語名はmoth fly、mothは蛾のこと、止まっている形が蛾のように見えるかららしい。ハエとあるが、チョウバエ類は、分類上はハエよりもカに近い仲間であると文献にあった。
夜間活動性の虫であるが、昼間でもよく見かける。トイレや風呂場などの壁面に止まっている。幼虫の体長は6~10ミリ。浄化槽の浮遊物、汚泥、下水溝に多い。
ホシチョウバエ(星蝶蠅):双翅目の昆虫
チョウバエ科 日本全土、南西諸島、世界各地に分布 方言名:フェー
星蝶なんて、蠅のくせに何てきれいな名前と思うが、見た目はきれいじゃない。蝶のような飛び方をするのでチョウがつくのはオオチョウバエに同じ。翅の周辺部に黒斑があるのでホシとなる。英語名のmoth flyもオオチョウバエと同じだが、両者は属が違う。
幼虫は下水溝、家畜の糞尿などに見られる。成虫は夜間に活発だが、昼間でもトイレや風呂場、台所などでよく見られる。体長2ミリ内外。成虫の出現時期は4~12月。
「本種の幼虫が人間の尿道、気管支、眼などに寄生し・・・云々」と文献にあった。まったく知らないことだったのでビックリ。風呂場やトイレで見ても、今まで気にしなかったのだが、これからは、見つけたら追い出すことにしよう。
記:ガジ丸 2006.3.8 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行