濃い缶詰
コンビーフは「牛肉に食塩と微量の硝石とをすりこみ、しばらく冷蔵したのち、蒸し煮して、殺菌・加熱したもの。多くは缶詰」(広辞苑)とのこと。「多くは缶詰」とあるとおり、私も缶詰以外では見たことが無い。倭国ではどうか知らないが、アメリカ占領下にあった沖縄では馴染みの深い缶詰。アメリカ産か、もしくはアメリカ軍経由のオランダ産の缶詰(調べたら、ブラジル産であった)。いずれにせよ、アメリカの食文化だ。
子供の頃、「コンビーフ買ってきて」と母にお使いに出されたことを覚えている。コンビーフの缶詰は、近所の小さなマチヤグヮー(商店)にも置いてあった。それほどウチナーンチュには日常的な食い物。沖縄に根付いたアメリカの食文化の一つ。
「コンビーフ買ってきて」と言われ、間違ってコンビーフハッシュを買ってきて、怒られた覚えもある。子供には、コンビーフとコンビーフハッシュの違いがよく分からなかった。缶詰の外観はまるっきり違う。コンビーフハッシュは円筒形で、コンビーフは上部がやや広がった直方体。パッケージのデザ インも全く異なり、コンビーフハッシュは目立つデザインではないが、コンビーフの表には牛の絵が書かれてある。見た目大きく違うのに混同するのは、名前が似ているからに他ならない。
両者ともほぼ同じ料理に使う。よって、違うものを買ってきたとしても、母も激しくは怒らない。「しょうがないねぇこの子は、人の言うことちゃんと聞かないからsぁ」と、溜息をつきながら怒る感じ。あー、そうなのであった。私は「人の言うことをちゃんと聞かない」少年だった。コンビーフハッシュと言うのを、最初のコンビーフだけできっと、牛の顔が描かれた缶詰を思い浮かべたのだろう。ちなみに、オジサンとなった今は、人の言うことをちゃんと聞いている・・・と思う。他人の評価は知らないが。
コンビーフハッシュについては既に、2005年12月に紹介している。ちょっと補足すると、その記事の中で「ウチナーンチュはコンビーフハッシュとコンビーフを使い分けて料理する」と書いたが、料理は概ねチャンプルーであって、肉の代用という意味では両者変わらない。ただ、味が、コンビーフハッシュは牛肉の味が薄く、コンビーフは強いという違いがあり、肉を前面に出すか、裏方に回すかの使い分けになると思う。
同記事にはまた、「コンビーフは、沖縄ではあまりメジャーでは無い。コンビーフというとコンビーフハッシュを指す場合が多いと思われる。」とも書い たが、確かに今でも、コンビーフハッシュはどこでも見かけるが、コンビーフは少ない。コンビーフは味が強いので、使い勝手が悪いのだと思われる。私も使わない。この記事を書くために購入し、料理もしたが、おそらく、ここ30年くらい口にしていなかったと思う。
コンビーフハッシュのビーフは挽き肉だが、コンビーフのビーフは小さな千切り肉といった感じ。ハッシュはジャガイモも入っていて、それも相まって肉の味が薄く感じる。コンビーフはいかにも肉と感じる。肉好きにはモテルかもしれない。
コンビーフ(corned beef):主に缶詰
コンビーフは広辞苑にcorned beefとあり、英語とのこと。ビーフはビフテキ、ビーフシチュー、ローストビーフなどでお馴染みのビーフ、和語では牛肉。コンのcornedは同じく広辞苑に「塩漬けの」という意味の形容詞とのこと。英語は得意では無いが、より正確な読み方はコーンドゥビーフだと思われる。言いやすくしてコンビーフなのであろう。
cornedには「塩漬けの」という意味があるが、コンビーフは「牛肉に食塩と微量の硝石とをすりこみ、しばらく冷蔵したのち、蒸し煮して、殺菌・加熱したもの。多くは缶詰」(広辞苑)とのこと。「多くは缶詰」とあるが、缶詰以外で私は見たことが無い。
記:2011.1.27 ガジ丸 →沖縄の飲食目次