珍しい夜の写真
撮った写真のプロパティを見ると撮った日時が分る。その日時と自分の日記を照らし合わせ、その写真の場所も概ね特定できる。場所はまた、写真の背景からも推理できる。勤めている頃は職場であることが多く、あるいは、休日の場合は散歩途中の公園や道端の野原などが多く、畑仕事に精出している頃は畑のことが多い。職場の庭や畑の場合は、たいてい場所が特定でき、時間帯によってはその時の状況も思い出せたりする。
夜出歩く時にも私のバッグにカメラは入っているが、カメラを出しシャッターをきる時は飲み会の光景や、テーブルに並ぶ食べ物の写真がほとんどで、たまには夜の街の風景も撮り、稀には夜の植物動物の写真も撮る。しかし、それはホントに稀で、植物動物の写真を撮るのは概ね昼間。なので、夜に飛び回るホタルの写真を私はまだ撮れていない。
ホタルも夜の昆虫だが、蛾の類も夜の灯火に集まるものが多い。キマエコノハもその類のようで、写真のプロパティを見ると、私が出会ったのは2011年7月20日20時19分となっている。私には珍しい夜の昆虫の写真。その日の日記を見ると、飲みに行っている。相手は東京から来た女性。デートというほどのものではなく、共通の友人に「車を出して、運転手をして、沖縄を案内してくれないか」と頼まれただけのこと。だからその日、私は美女の写真は撮らず、飲み屋の壁に留まっていた蛾に目が行ったようだ。
キマエコノハ(きまえ木の葉):鱗翅目の昆虫
ヤガ科 本州~南西諸島、インド~オーストラリアに分布 方言名:ハベル
名前の由来は資料がなく不明。本種はヤガ科で、ヤガ科にはヨトウガという畑で悪名高い種がいるが、その他コノハ、クチバ、アツバなどハ(バ)の付く名前の属がある。このうちアツバは厚翅と想像でき、コノハとクチバは木の葉と朽ち葉と私は想像する。翅が厚い、翅が木の葉に似る、翅が朽ちた葉に似ているといった理由から。
ということで、本種の漢字表記を木の葉としたが、それはまったく私の想像。キマエについては、私の脳味噌では想像不可。顔が黄色いとか、翅の根元が黄色いとか写真を見る限りでは無い。前翅の前縁に黄白帯があり、後翅は黄色いとのことだが、それらが関係しているかもしれない。木前の木の葉とかなら面白いけど、正確なことは不明。
前翅長40~45ミリと比較的大型の蛾、成虫の出現は6~11月。分布の南西諸島は詳しくあり、沖縄島、石垣島、西表島とのこと。
食草については、「インドではツヅラフジ属につくという。沖縄ではオオツヅラフジがあるが、食草であるかどうかはまだ確認されていない」とのこと。
記:ガジ丸 2019.5.21 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田春夫、他著、株式会社南方新社社発行
『原色昆虫大図鑑』井上寛・岡野磨瑳郎・白木隆他著、株式会社北隆館発行
咥えタバコで
前回紹介したカワムラトガリバの頁でも書いたが、4月になると「写真に撮った草木や昆虫などの動物が何者であるか調べる作業」がだいぶ進んで、いくつか判明した。今回もその判明したものの1つで、同じく蛾の類のマダラツマキリヨトウ。
マダラツマキリヨトウはだいぶ前に写真に収めている。写真のプロパティを見ると2010年4月28日の撮影となっている。もう9年前のこと。ちゃんとは記憶していないが「そうであろう」と判断できたのはおそらく数年前だと思う。「に違いない」と確定し、その説明文(下の文章)を書いたのは最近の事。説明文は「間違ってはいけない」というプレッシャーがあるのでなかなか筆が進まない、いや、キーボードが進まない。
2010年4月28日、既に職場は時短となっていて私は週に2日だけの出勤、その他の日は親戚の土地を借りて30坪程度の畑仕事をやっていた頃だ。そして、この写真を撮った日の10日前に父が動けなくなり、その数日後に入院してバタバタしている頃。
従姉たちに手伝ってもらい、父の介護を交代でやって、病院駆けまわって、父の主治医に相談して、入院先を決めて、手続きして・・・など忙しくしていた頃。
28日は数少ない出勤日で、職場での3時休み、コーヒー飲んで一服している時、職場の庭を咥えタバコでブラブラしている時、これまで見たことのない大きな蛾に出会い、写真を撮っている。父のことで忙しくしていたのに、心に余裕はあったようだ。
マダラツマキリヨトウ(斑つまきり夜盗):鱗翅目の昆虫
ヤガ科 北海道~屋久島、台湾、インドなどに分布 方言名:ハベル(蝶蛾の総称)
名前の由来は資料が無く正確には不明。ヨトウについては広辞苑にヨトウガがあり、夜盗蛾と漢字表記され「幼虫は夜盗虫」とのこと。「夜盗虫」を引くと、「ヨトウガの類の幼虫・・・夜出て野菜類を食害する」とあり「夜、野菜を盗みに来る」といった意味であろう。マダラは、翅表が斑模様だからと思われる。ツマキリについては端切という漢字が思い浮かぶが、本種のどこのツマ(端)が切れているのか不明なので根拠無し。
前翅表に上から下へ何本もの白線が走っている。前脚に毛が多く生え太く見える。触覚も基部が太い(雄の触覚がそうらしい)などといったことが見た目の特徴。
前翅長14~15ミリ。食草はシダ類。出現は6~8月。全土で普通種とのこと。
最近から『原色昆虫大図鑑』も参考文献に加えたが、それによると「この類(おそらくヨトウガの類)は全てシダ類を食草とする」とのこと。上述の「雄の触覚の基部は太い」も同書による。『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』に載っている写真の本種は触覚が太くないので雌、私の写真は触覚が太いので雄だと思われる。
なお、『原色昆虫大図鑑』に「北海道~屋久島、・・・に分布」と沖縄は入っていなかったが、『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』には「全土に分布」とあった。
記:ガジ丸 2019.5.18 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田春夫、他著、株式会社南方新社社発行
『原色昆虫大図鑑』井上寛・岡野磨瑳郎・白木隆他著、株式会社北隆館発行
嫌ではないけど
無職の私も3月はまあまあ忙しかった。薬草冊子の件で依頼主のHさんと2度の会合があり、車の保険契約があり、車検があり、倭国からの友人が別々の日に2組訪ねて来て、楽しい時間を過ごし、地元の友人が酒持って訪ねて来てくれたのも別々のメンバーで別々の日に2度あった。友人が訪ねて来てくれる、年取るとそれがとても幸せに感じる。
そういった楽しい嬉しいことが時々あったとしても、それでも無職の私は、働いている人に比べれば自由に使える時間はたっぷりある。そんな自由時間を何に使っているかというと、炊事洗濯掃除買い物など家事の他、天気が良ければ散歩、後は概ねパソコン作業。ブログの記事書きしたり、写真整理したり、薬草冊子作りしたりなどなど、そして、散歩しながら撮った草木や昆虫などの動物が何者であるか調べる作業。
あれこれ用事の多かった3月が過ぎて、4月になると「何者であるか調べる」がだいぶ進んで、いくつか判明した。といっても、「これはこれである」と認識できているのはきっと図鑑を見ている間だけの事である。老化した私の脳は、明日になればその名も姿もさっぱり忘れているはず。もっと脳が元気だった若い頃から昆虫に興味持って調べ、記事書きなどしていたら「俺は昆虫博士になれたかもしれない」と、今更ながら残念に思う。
今回紹介するカワムラトガリバも特に印象深いものではない。明日にはきっと忘れているであろう。記事を見てくれる方にも悪いが、カワムラトガリバにも申し訳ない気分。嫌なことは忘れるに限るのだが、カワムラトガリバ君、君はちっとも嫌じゃないよ。
カワムラトガリバ(かわむらとがり羽):鱗翅目の昆虫
トガリバ科 四国、九州~奄美大島、沖縄島に分布 方言名:ハベル(蝶蛾の総称)
名前の由来は資料がなく不明。名前だけから判断するとトガリバは「尖り羽」と想像できるが、写真を見る限りでは翅が尖っているようには見えない。カワムラについては、川村さんという学者が最初に学術的発見をしたからその名が付いたと思うが、詳細不明。
翅の文様に特徴がある。前翅の地色は黒~黒褐色で、そこに「白色で橙色を帯びた丸い紋が翅前半と外縁、後縁に並び、紋は、橙色の強弱があり、円形から楕円形まである」(沖縄昆虫野外観察図鑑)とある。その特徴から私の写真も本種であると判断。
前翅長18ミリ内外。食草は不明とのこと。
成虫の出現は3~4月と『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』にあり、『沖縄昆虫野外観察図鑑』には3月とあったが、私が見たのは2012年1月28日の夜、ヤンバル(山原:沖縄島北部の通称)のNさん宅の縁側であった。生きていた。
記:ガジ丸 2019.5.5 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田春夫、他著、株式会社南方新社社発行
『原色昆虫大図鑑』井上寛・岡野磨瑳郎・白木隆他著、株式会社北隆館発行
探せば見つかる
300坪の畑を始めてから(2012年夏)は畑仕事に忙しくそれまで趣味としていた散歩が減った。私の散歩はウォーキングではない、ブラブラ景色を眺めながらののんびり散歩、野に咲く花の写真を撮り、植物に集まる虫の写真を撮る散歩。なので、これまで知らなかった数多くの植物動物の写真が撮れ、それらを調べ、名前を知ることができた。
畑を始めてから散歩は減ったが、畑の周囲は森のようになっており、そこに今まで出会っていない植物動物を見つけ、また、畑にも私の知らない植物が勝手に生え、私の知らない動物が勝手にやってきた。それらの多くも写真に収めてきた。
動物の中では昆虫の類が圧倒的に多い、チョウ、ガ、ハチ、ハエ、アブ、アリ、甲虫、トンボ、バッタ、カメムシなどなど。
「よっしゃ、今週は溜まっていた蛾の記事書き週間にしよう」と思ったことは何度もあり、図書館から蝶蛾の図鑑を借りて何度もやっていた。モンシロチョウ、アゲハチョウなど有名どころはすぐに判明したのだが、あまり知られていないものになると、これはこれである(同定というらしい)と断定することが難しくなる。似ているものがいくつもあって、雄と雌で見た目に違いがあり、季節によっても見た目に違いがあり、個体変異というのもあったりするからだ。「もうお手上げ」と根性無しは何度諦めたことか。
腰痛を患い畑を止めざるを得なくなって、気持ちが落ち着いた去年(2018年)11月頃から気合入れて溜まりに溜まった不明動物、特に昆虫、中でも蛾の判明作業をたびたびやっている。その結果、いくつもの種類が判明した。今回紹介するのはその1つ。
アコウハマキモドキ(赤秀葉捲擬き):鱗翅目の昆虫
ハマキモドキガ科 九州~沖縄諸島、八重山諸島、東南アジアに分布 方言名:ハベル
名前の由来は資料がなく正確には不明だが、食草がアコウということでアコウ(赤秀)と名が付くと思われる。ハマキモドキについてはハマキムシ(葉捲虫)が広辞苑にある。「植物の葉を巻いてその中にすみ、これを食害する昆虫、特にチョウ目ハマキガ科の蛾の幼虫の総称。」とのこと。ハマキモドキガ科はそのハマキガ科に似ているのでモドキ(擬き)がついているのだろう。概ねは小型の蛾。ちなみに、アコウは高さ20mにもなるクワ科の常緑高木、和歌山以南~南西諸島に分布するガジュマルの仲間。
前翅長5~6ミリ。成虫の出現は4~6、9~11月の2回あり、冬の寒い間と夏の暑い間はお休みしているようである。
『沖縄昆虫野外観察図鑑』に「すばやく、じぐざぐに食草周辺を飛翔する」とあり、本種であったかどうか覚えていないが、ハマキモドキガの類でそういう飛び方をするのを見た覚えがある。同書にはまた「前かがみに翅端を上げて葉上に止まる」ともあり、私の写真(ボケているが)もそんな感じ。他のハマキモドキガも似たような止まり方をする。
参考写真
記:ガジ丸 2019.2.3 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田春夫、他著、株式会社南方新社社発行
『原色昆虫大図鑑』井上寛・岡野磨瑳郎・白木隆他著、株式会社北隆館発行
判りやすい蛾
昆虫の中には「よく似ている亜種」があり、「雄雌で姿に違い」があり、同じ種同じ性でも個体変異があったりする。自分の撮った写真と図鑑の写真を見比べて「これはこれである」とスッキリするのもあるが、「これはこれに似ているけど、ちょっと違う」というのもたまにあって、「これだ」とすっきりできないものが多くある。そんな中、
今回紹介するニシキヒロハマキモドキは、「これはこれである」とスッキリ判断できたものの1つ。私が参考にしている『沖縄昆虫野外観察図鑑』にはこの種に似ている種は他に無かった。スッキリ判断できたのはしかも、私がまだ昆虫素人の12年前だった。
本種の写真を撮ったのは2006年11月11日、土曜日の午後、浦添大公園で。しかも、写真のものがそれであるというのも程なく判明している。それが何で12年間も放っておかれたのかというと、写真が少しボケていたから。その内、ボケていない写真が撮れるであろうと思っていたから。12年も経って、多少はカメラの腕前も上がって、今ならボケない写真も撮れるはず。なのだが、12年経ってもそれ以降本種に出会っていない。あるいは、気付いていない。私の頭がボケて注意力が弱っているのかもしれない。
ちなみに、「まだ昆虫素人の12年前」と上述したが、「今は玄人なの?」と問われると、周りの友人たちに比べれば昆虫に対する知識は多いかもしれないが、昆虫を学問として学んでいるわけではないので、「はい、玄人です」とは言い難い。でも、「まだ素人です」というのも悔しいので、「毛が2、3本生えた程度です」と言うことによう。
ニシキヒロハマキモドキ(錦ひろ葉巻擬き):鱗翅目の昆虫
ヒロハマキモドキガ科 屋久島、沖縄島、石垣島に分布 方言名:不詳
名前の由来は資料が無く不明。『沖縄昆虫野外観察図鑑』に「個々の鱗粉の先端部には白色点があり、横線の輝きとあいまって美しい」とあり、そこからニシキ(錦)だと思われる。ちなみに錦は「金糸・銀糸など種々の色糸を用いて華やかな文様を織り出した絹織物」(明鏡国語辞典)のこと。ハマキムシ(葉捲虫)が広辞苑にあり、「植物の葉を巻いてその中にすみ、これを食害する昆虫、特にチョウ目ハマキガ科の蛾の幼虫の総称」とのこと。ハマキモドキガ科はそのハマキガ科に似ているのでモドキ(擬き)がついているのであろう。ヒロについては想像が及ばず漢字も思いつかない。本種はごく小さく(前翅長6~7ミリ)、体は細い。広という字は充てられない。他に思い付く漢字もない。
「八重山のいくつかの島にはヤエヤマヒロハマキモドキという近似種がある」(沖縄昆虫野外観察図鑑)とのことだが、文献に写真が無く両者の違いは不明。私の写真は沖縄島浦添市で撮ったもの。
前翅長6~7ミリ、成虫の出現は4~10月。食樹はガジュマル。
記:ガジ丸 2019.2.2 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田春夫、他著、株式会社南方新社社発行
『原色昆虫大図鑑』井上寛・岡野磨瑳郎・白木隆他著、株式会社北隆館発行