子供の頃、小学校高学年から中学にかけて、テレビの歌番組をよく観ていた。グループサウンズ全盛期の頃で、私もそれらを聴いていた。ところが、私の父はグループサウンズが大嫌いで、父が家にいる時は、グループサウンズの出ている歌番組を観ることはできなかった。父は歌そのものは嫌いでは無い。三波春夫や村田英雄などの演歌や、昔の歌謡曲、いわゆる懐メロは大好きで、そういう番組は観ていた。当時、ほとんどの家庭がそうだったと思うが、我が家にテレビは1台しか無く、チャンネル権は父にあった。
父が大好きな懐メロを、私は大嫌いだった。後に、懐メロにも良い歌がたくさんあることに気付いたが、グループサウンズを「くだらない!」と言い、懐メロを「すばらしい」と言う父に対する反感もあって、当時は、「坊主憎けりゃ」だったのである。
オジサンバンドをやっている友人がいる。彼らが演奏するのは主に昔のグループサウンズである。私も子供の頃は好んで聴いた音楽なのだが、今は全く興味が無い。彼らの演奏を付き合いで何度か聴いているが、演奏している時間、私はちっとも楽しくない。何で今更、オジサンになってまでも青春の歌なんだ、と思う。父が懐メロを好んだのと同じ感性を感じてしまう。ただのノスタルジーじゃねぇの、って思う。
なんていう私も、実は、高校から大学にかけて好んで聴いていた歌をずっと聴き続け、オジサンになった今でもたまに聴いている。私も脳廃る爺なのである。
クラシックやジャズなどにも好きな音楽はいくつかあるが、日本語の歌で、若い頃から聴いているお気に入りは一昨年亡くなった高田渡を筆頭に、友部正人、いとうたかお、斉藤哲夫、佐藤博、下田逸郎、あがた森魚、西岡恭蔵、豊田勇造などがいる。そんな中でも、大好きベスト3は高田渡、友部正人、いとうたかおの3人。
日曜日(2月18日)、念願のいとうたかおライブに出かけた。友部正人は数回、ライブを聴いている。高田渡は1回、3年前に初めて聴いた。そして今回、私の好きな音楽ベスト3の最後の一人を聴くことができた。
高田渡や友部正人もそうであったが、いとうたかおの音楽もまた、単なるノスタルジーではない。オジサンは、オジサンの歌を歌った。懐かしい歌も歌ってくれたが、それも、オジサンの感性で歌ってくれた。オジサンにはオジサンの歌があるのだ。オジサンも今生きており、何かを感じ、何かを語りたいのである。いいねぇー、オジサン。
記:2007.2.20 ガジ丸