『とてもシンプルなこと』という歌がある。私の愛するシンガーソングライターピアノ弾きの鈴木亜紀の作品。彼女のファーストアルバムのタイトルにもなっている。
引っ越し準備で、持っていたCDやMDのほとんどを実家に運んだ。なので今、部屋にはクラシックと琉球民謡のMD10数枚が残っているだけだ。ただし、それは私が聴くためのものではなく、誰かにあげようと思って残してあるもの。
車の中にもMDが8枚ある。これらは運転しながら私が聴くつもりのものであり、これだけは近いうちに聴きたくなるであろうと思った8枚。私が所有する数多く(数えたことはないが、おそらく100枚以上)あるCD、MDの中から選ばれた8枚。クラッシックが2枚、ジャズが2枚、琉球民謡が2枚、そして、高田渡と鈴木亜紀。
高田渡はセカンドアルバム、高校生の頃聴いて、後年、私の音楽の原点になったアルバムの一つ。当時好きだったひと(女)にカセットテープにダビングして貰ったという想い出もある。アルバム名、曲名など彼女が手書きしたテープは今も持っている。
鈴木亜紀は前述のファーストアルバム『とてもシンプルなこと』、1998年のリリースとなっている。私が初めて聴いたのは6、7年前で、十分オジサンになってから知ったアーティスト。友人のIさんに勧められたのだが、すぐに気に入った。
車の中に残してある8枚のMD、早速その1枚を先日聴いた。聴いたのは鈴木亜紀のアルバム『とてもシンプルなこと』。何故それを「近いうちに聴きたくなるであろう」1枚に選び、その中でも一番最初に聴いたのかというと、「とてもシンプルに」という言葉が今の、私の頭の中を占めている最も大きな思想だからである。
私がここで語る「とてもシンプルに」とは、しかしながら、鈴木亜紀の歌う「とてもシンプルなこと」のシンプルとは意味が違う。鈴木亜紀のは恋の歌だ。
先月から私の住まいであるアパートの、一時的(2、3週間)引っ越しのための部屋の掃除、整理整頓をやっているが、始めてから一ヶ月半ほども経って、「やっと終わりが見えてきたぜ」という状況。思いの外時間がかかっている。あまりにも時間がかかっていることに「まだ終わらねぇのかよー!」と、途中から腹を立てていたくらいだ。
何で時間がかかっているのかというと、中年チョンガーのくせに私には持ち物が多いのである。持ち物が多いのは多趣味だからと判明した。例えば、音楽関係の楽器や楽譜、美術関係の絵具や画集、その他、書道、茶道、木工、工芸、園芸、植物、沖縄関連があり、テニスもあれば、太極拳もあり、酒や料理に関係した品々などがあった。
そういった、私が今まで生きてきた歴史とも見ることができる品々は、けれども、これから私が生きていく上で、必ずしも必要なものとは見なせない。そこで、『とてもシンプルなこと』を思い出し、「とてもシンプルに」という思想に辿りついた。
「持ち物があるからそれを整理するために箱や棚が必要になる」とも言えるが、「箱や棚があるから持ち物が増える」ともまた、言える。そこで、持ち物を処分すると共に、箱や棚も処分することにした。既に2つの本棚、1つの飾棚が処分済み。これからさらに、箱のいくつかと、その箱の中身である持ち物を処分する予定。「日常使う範囲のものしか身の回りに置かない」という「とてもシンプル」な生き方をしようと思っている。
記:2010.6.25 島乃ガジ丸