実物は見ていないが、名前は良く知っている植物が多くある。春になるとテレビに映し出される花見の光景、そこにあるソメイヨシノを私は、大学で東京暮らしをするまでは実物を知らなかった。ウメ、モクレン、なども同様であった。
歌を聞いて名前を知ったものもある。「菜の花畑に入日薄れ・・・」と歌いながら少年は、菜の花ってどんな花なんだろう、きれいなんだろうなと想像した。「コブシ咲くあの空北国の・・・」と歌いながら少年は、拳のような花なんだろうかと想像した。
レンゲソウは確か、ビリーバンバン(知らない人も多いだろうが、男性のフォークデュオ)の歌にあった。歌の題が『レンゲソウ』だったのかどうか記憶に無く、歌の内容もほとんど覚えていないが、ビリーバンバンの情緒的な歌声から、可愛く優しげな花なんだろうなと想像した。後年、「雑草だぜ」という情報を得て、レンゲソウに対する興味は薄れていた。もしかしたら東京にいる間、あるいは旅先で、レンゲソウは私の目の片隅に映ったかもしれないが、私に認識されることは無かったようである。
レンゲソウ、倭国では馴染み深い花のようであるが、沖縄では、少なくとも私の住む近辺ではほとんど見ない。6月に旅した四万十の道端で発見した。
レンゲソウ(蓮華草):野草・緑肥
マメ科の二年草 中国原産 方言名:なし
レンゲというと、ラーメンのスープを飲む時に使う陶器製の匙を思い出す。その匙を正確にはチリレンゲと言い、散蓮華と漢字で書く。レンゲソウのレンゲも蓮華と書く。蓮華はその字の通りハスの花のこと。チリレンゲはその形がハスの1枚の花びらに似ているから。レンゲソウは、輪状につく花の固まりが全体としてハスの花に似ているから。
シロツメグサやウマゴヤシなどマメ科の植物は緑肥(葉や茎がそのまま肥料となる)となるものが多いが、レンゲソウはその代表と言えるもの。昭和の中頃までは全国の田んぼで見られ、春、その花の時期には紅紫色が一面を覆い、きれいだったらしい。
高さは10~30センチほど。『沖縄植物野外活用図鑑』には那覇市で撮られた写真が載っているが、私はまだ沖縄では見ていない。あるいは、気付いていない。
記:島乃ガジ丸 2006.8.6 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
先週末、畑を覗いた。相変わらず雑草がいっぱい。ムラサキカタバミ、カタバミ、オニタラビコ、メヒシバなど。シマラッキョウを植えた辺りにはまた違う雑草が群落を成していた。これもよく見る雑草、ルリハコベ。お陰で、私の大好きな、春の酒の肴にはかかせないシマラッキョウの生育が悪い。コノヤローと思ったが、除草は写真を撮ってからにしようと放っておいた。写真は花が咲いてから撮ろうと思っているが、まだ咲かない。
ルリハコベの出てくる沖縄のわらべ歌がある。子供をあやすときなどに歌う。
べーべーぬ草かいが
いったー あんまー まーかいが べーべーぬ 草かいが
(お前の 母ちゃんは 何処へ行った 山羊の 草刈に)
べーべーぬ まさぐさや はるぬわかみんな
(山羊の 美味しい草は 春の若いルリハコベ)
山羊のことをウチナーグチではヒージャーと言うが、ベーベーは幼児言葉で山羊を指す。マサグサのマサは、通常はマーサと発音し、美味しいという意味で、「ベーベーぬマサグサや」は簡単に言うと「山羊の好物の草は」ということになる。
この歌はすごくメロディーの優しい歌で、私は大好きなのだが、残念ながら子供をあやすときに歌った経験は無い。子供の心にもその優しさが伝わると思うので、子供をあやす状況にあるお父さん、お母さんにはぜひ歌ってもらいたいと思う。
歌の最後に「あんぐゎー そーてぃ」と囃子が入る。アングヮーはお姉ちゃん、ソーティは添えて、つまり連れてということ。「お前の母ちゃんは山羊の草刈に行ったよ。お姉ちゃんを連れてね」となる。この「あんぐゎー そーてぃ」のメロディーがまた気持ち良くて、女に振られたりして気分が落ち込んだ時には、このメロディーがよく効く。心を慰めてくれる。若い頃、自分で自分にたびたび歌って聞かせたもんだ。
ルリハコベ(瑠璃繁縷):雑草
サクラソウ科の一年生草本。分布は沖縄本島以南。方言名:ミンナ、ファチコーミンナ
路傍や草地、畑地によく見られる雑草。群生し、2月頃、瑠璃色の小さな花を上向に咲かす。かわいい花だし、草自体も鬱陶しいものでは無いが、山羊のいない家庭では役に立たないので、雑草扱いとなっている。
瑠璃色の花で、ハコベに似ているからルリハコベなんだが、ハコベとは科が違う。
花
ついでに、
はこべ(繁縷)
ナデシコ科の越年草。山野・路傍に自生する。春、白色の小五弁花を開く。春の七草のひとつ。ハコベラとも言う。
記:島乃ガジ丸 2005.1.28 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
家の中でパソコン作業をする場合は食卓兼事務机を使っている。そこは西向きの大きな掃出し窓の傍にあって、だいたい午後の3時を過ぎると作業ができなくなる。その頃になると太陽の光が差し込んできて、この時期は無茶苦茶暑くなるからだ。
今はまだ午後1時を過ぎたところなので、また、涼しいとは言え無いが、風も少しは吹き込んできているので、うっすら汗を滲ませながらも何とか脳みそは働いてくれる。
窓の外は光が眩しい。夏の空。去年の夏、ガラス製の江戸風鈴を割ってしまったことを思い出す。今年は風鈴の無い夏となってしまっている。風流人を目指すオジサンとしてはこれではいけない。風鈴を買いに行かなくちゃ、と今、決心した。
目線を下にやると、駐車場のフェンスに絡まったオオバナアリアケカズラの鮮黄色の花がいくつも咲いているのが見える。その傍にはリュウキュウボタンヅルも見える。オオバナアリアケカズラは大家さんが数年前に植えたもの。リュウキュウボタンヅルは自然に生えた雑草。この雑草、先週、花が満開だったので写真を撮った。雑草扱いされているが、花はきれいだと私は思う。「ガジ丸の草木」では、わざわざ人の手によって植えられることの無い、勝手に生えてきたものを雑草としているが、この蔓植物もそうであり、リュウキュウコスミレ同様、花はきれいであっても、申し訳ないが、雑草ということにした。
リュウキュウボタンヅル(琉球牡丹蔓):野草
キンポウゲ科の蔓性多年草 方言名:ブクブクーグサ
原産分布が、私が参考にしているどの文献にも記載が無かった。ボタンヅルは全国にあるようだが、琉球と名が付くので、沖縄、あるいは南西諸島特有のものかもしれない。
葉が牡丹に似ている蔓なのでボタンヅルという名。葉柄によって他物にからみつきながら蔓を伸ばしていく。花は黄白色で伸びた蔓先にまとまって多く咲く。方言名は、花の咲く様が泡のようにブクブク見えるところから来ているのかもしれない。私はきれいだと思う花だが、雑草扱いとなっている。開花期は6月から7月。
実
記:島乃ガジ丸 2005.7.10 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
ベストソーダという飲み物が昔、沖縄にあった。ベストソーダにはたくさんの種類があった。透明のもの以外に、赤色、黄色、緑色などのものがあった。それぞれに味と香りが違い、それぞれに名前が付いていた。などといったことは覚えているが、それらが何という名前だったかについてはほとんど覚えていない。
透明のものはたぶんレモン味であっただろう。名前もレモンだったかもしれない。ストロベリー味も確かあって、ストロベリーという名前だったと思う。その他には、ラズベリーとかクランベリーなんていう名前があったような記憶が微かにある。
イチゴは「バラ科の小低木または多年草で、黄・紅色の液果をつけるものの総称」(広辞苑)であるが、英語のベリー(berry)は「核のない果肉の柔らかな食用小果実」(研究社:新英和・和英辞典)とのことで、バラ科のラズベリー、ブラックベリーなどだけでなく、ツツジ科のブルーベリー、クランベリーなども含まれる。
シマグワの果実のことをナンデーシーとウチナーグチでは言うが、それも「核のない果肉の柔らかな食用小果実」である。よって、これにベリーと名を付けても間違いということはない。ナンデベリーとか名前をつける。リュウキュウバライチゴにはローズベリーなんて名前を付ける。それらでソーダを作る。ベストソーダの復活だ。
リュウキュウバライチゴ(琉球薔薇苺):雑木
バラ科の常緑低木 関東以西、南西諸島、台湾、他に分布 方言名:インギイチブ
イチゴ(苺)というと、春、店頭に並ぶあの美味しい赤いイチゴが頭に浮かぶが、それはオランダイチゴと言い、イチゴは、「バラ科の小低木または多年草で、黄・紅色の液果をつけるものの総称」(広辞苑)とのこと。本種もその一つ。バライチゴという種もあって、それは関東以西から九州に分布するが、本種は琉球列島にも分布する。
高さは100~150センチほどになる。バラ科らしく幹に棘がある。山地に自生するとのことで、私の身の回りで見たことは無い。写真は竹富島のもの。
枝の先に数個の花がつく。4センチほどの大きさで美しい白い花。開花期についての資料が無く正確なところは不明だが、文献の写真は2月、私の写真は11月ということで、おそらく秋の終りから冬にかけて咲くのだろう。
赤紫色に熟した果実は美味と文献にあったが、私は食べたことが無い。美味ならば果物としても良いと思うが、果実が販売されているという話は聞かない。なので、果樹にはならない。繁殖力が強いので、庭に植えるには不向き。よって、雑木扱いとした。
花
実
ついでに、
バライチゴ(薔薇苺):雑木
バラ科の落葉低木 関東以西、四国、九州などに分布 方言名:なし
琉球列島には自生が無いようで、私も見たことが無い。山地に生える落葉低木。高さは20~60センチほどで地下茎を伸ばしてふえる。枝の先に数個の花をつける。開花期は7月から8月。果実は紅く熟するが、美味しくないとのこと。
学名、バライチゴRobus illecebrosus、リュウキュウバライチゴRubus rosaefolius
記:島乃ガジ丸 2007.8.19 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
大学時代の友人が一人、宮崎出身で、今も宮崎に実家はあるのだが、大学を卒業後沖縄に住み着いている。10年ほど経って結婚し、家を構え、そして、娘ができた。彼はその娘に「すみれ」と名前をつけた。ハーフは概ねカワイイというが、いかにもナイチャージラー(内地人面、倭人の顔という意味。目が一重の弥生人風の顔)の彼と、目鼻立ちのはっきりした沖縄人である女房との間に生まれたハーフの娘は、まことにもって「すみれ」という名がピッタリの、愛らしく、カワイイ娘であった。
スミレというと、今ではその娘のことが先ず思い浮かぶが、以前は、スミレといって真っ先に思い浮かぶのは「スミレのはーなー、咲くころー」であった。宝塚歌劇団のテーマソングである。友人が何故、娘に「すみれ」と名前をつけたのか確認はしていないが、彼はおそらく、隠れ宝塚ファンだったのだろう。体重が当時の倍、100キロを超えた今では想像もできないが、当時の彼は詩人であり、歌唄いであり、美意識も高く、繊細な感性の持ち主であった。宝塚の美もよく理解できていたのだろう。
私は、宝塚歌劇団に興味は無いが、「スミレのはーなー、咲くころー」の歌は好きで、気分の良いときなどは時々口ずさんでしまう。人間関係が良好、仕事も順調、心に不安も迷いも無い、空は青空で、風はそよ風の時などにこの歌は似合う。だから、これは春の歌であろう。スミレは春の花であろう・・・と思っていたのだが。
京都辺りでは春に咲く花なのかもしれないが、調べたら、沖縄のスミレは冬に咲く。だから、私が「スミレのはーなー、咲くころー」と唄っている時に、野原にスミレが咲いていたわけでは無い。だが、冬の花スミレ、でも、爽やかに明るく、清楚でかわいい。
リュウキュウコスミレ(琉球小菫):野草
スミレ科の多年生草本。トカラ列島よりも南に分布。方言名:スミリ
低地の畑や空地に自生する。長い柄を持った細長いハート型の葉、その間から数本の茎を出し、その先に淡紅紫色から濃紫色の小さな花を一つ付ける。開花期は1月から2月。
カワイイ花で、他の植物を圧倒するような繁殖力も無いので、雑草に分類するのは心苦しいのだが、花壇などにわざわざ植えるということは無いようである。
シロバナリュウキュウコスミレという白っぽい花をつける種もある。
記:島乃ガジ丸 2005.7.13 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行