1、川辺のキャンプ地
高二の夏に初キャンプをして以来、私はこれまで(ここ5年ほどはご無沙汰している)数十回のキャンプを経験している。沖縄島だけで無く、近くの慶良間諸島で数回、ちょっと離れた久米島でも2回やっている。それら数十回のほとんどは海辺のキャンプ、沖縄にはキャンプに適した浜辺が多くあるからだ。沖縄島では北の伊武部ビーチ、南の名城ビーチが昔から有名で、他に、屋我地、漢那、瀬良垣、冨着、新原などがある。
川辺のキャンプ場もある。川辺のキャンプ、私は過去に1度しか経験がなくて詳しくは知らないのだが、国頭村の比地川や名護市の源河川が有名だ。1度の経験はその内の比地川、確か高校生の頃、友人1人と先輩1人との男3人でのキャンプ。先輩は2期上で、大学生であった。サバ缶などを肴にして、地酒の泡盛を酌み交わしつつ、せせらぎの音を聞きながら、「人生とは・・・」なんて講釈を聞かされたことを覚えている。
写真は10年程前のキャンプ、キャンプ仲間には美人が揃っていた。このあと数年以内に全員が結婚している。その内3人はキャンプ仲間同士の結婚。私は当たらなかった。
2、源河川
川辺のキャンプ場として有名なもう一つの源河川は、名護市の北はずれに位置する川。名護市は沖縄島北部(俗称ヤンバル)の中核都市だが、その北はずれの源河は、源河川の河口付近に家々が集まっており、河口から上流へ向かって5分ほども走ると、そこはもう、ヤンバル(山原)の名にふさわしい亜熱帯の森となる。
などと、知ったようなことを言っているが、じつは私は、河口から上流へ向かって5分ほども走った辺りまでしか行ったことがない。源河川の水にも、その辺りでしか触れたことがない。確かその時は、別のどこかへ行く途中で立ち寄っただけである。
30年ほども前だったか、母が「職場の人たちと○○川で遊んできた。」と言って、その時の写真を見せてくれたことがある。「清流」という言葉が浮かぶほどにきれいな川辺の景色であった。「沖縄にもこんなところがあるのか!」と驚き、いつか行ってみようと思った。が、忘れた。川の名前すら忘れていたが、それが実は、この源河川。
3、源河川で出合った動植物
先週土曜日(15日)、友人のHに誘われて源河川へ出かけた。Hの息子K1も同行して、オジサン2人、青年1人の男3人むさ苦しいドライブとなる。
キャンプするのではなく、日帰りの自然散策。現地での目的は三者三様、絵描きでもあるHは、絵の題材となる景色の写真を撮りに、K1は川遊び(水着を準備していた)、私はヤンバルの動植物の写真を撮りながら、ヤンバルの空気を味わいに。
動植物が目当ての私は、川辺に下りてすぐにオキナワハンミョウを見つけ、その写真を撮る。四国の旅で写真を撮った虫の一つが、調べるとハンミョウだと判り、沖縄にはオキナワハンミョウという亜種がいることをその時に知って、以来3年以上ものあいだ会いたいと思い続けていたものだ。それにいきなり出合った。気分上々のスタート。そしてその後、トンボ類2種、バッタ類1種の、まだ見ぬ昆虫の写真が撮れた。
家に帰って調べて、トンボはリュウキュウハグロトンボとリュウキュウルリモントンボと判明。キャンプに来ていた子供たちの一人が、「きれいなトンボ を捕まえた。」と大はしゃぎし、そのすぐ後で、同行のHが「新種かもしれないきれいなトンボの写真を撮ったぜ。」と騒いでいたのは、どちらもチラッと見ただけだが、おそらくリュウキュウハグロトンボの雄。私が写真に撮ったのはその雌。確かに雄はきれい。
バッタ類1種はササキリと判明。文献によると「沖縄島の北部に多い」とのこと。確かに那覇近辺では見ない。また、「幼虫の色彩が・・・鮮やかな赤色」とあって、目立つようだが、残念ながら私は出会えなかった、か、あるいは、気付かなかった。
その他、アオタテハモドキ、ルリタテハの写真も 撮る。沖縄ではもう最も普通種となっているクロマダラソテツシジミがここにも多くいた。彼らは、都会のコンクリートの中だけで無く、ヤンバルの森の中でも幅を利かせているみたいだ。
植物でも、長い間会いたい会いたいと思っていたものに出会えた。ハンミョウの写真を撮って、道に戻ろうと振り向いたら、そこにノボタンがあった。「おっ!」と思って川べりを歩くと、ノボタンはいくつもあった。花の写真を撮ろうとそれらを見て回った。やっと一つだけ花の付いているものを見つけたが、その花弁は閉じて、今にも落ちそうなものであった。「残念、既に開花期は過ぎてしまったか。」と思って、それ以上の捜索は止めた。ノボタンの開花期は7月から11月ということは、家に帰ってから知る。
何者か知らない植物の写真もいくつか撮ったが、家に帰って調べて、判明したのはハシカンボクとメジロホウズキだけ、残りは不明のまま。
4、思い出の源河川
最初に河原に下りた時(オキナワハンミョウを見つけたところだが)、そこの景色を見た時に、「この雰囲気、何か覚えがある。」と感じた。何なのかすぐには思い出せなかったのだが、いちおう写真を撮る。家に帰って、のんびり酒を飲みながら、撮った写真を眺めている時にふと思い出した。母が「職場の人たちと○○川で遊んできた。」と言って見せてくれた写真の雰囲気であった。そこで、母が職場の人たちと行ったのは源河川だったということを思い出した。ちなみに、写真は母が見せてくれた景色とは違う場所かもしれない。母の写真の景色はもう少し広々としていた。ではあるが、雰囲気は一緒。
5、キャンプする源河川
源河川はその川沿いにいくつもキャンプのできる河原がある。キャンプ場という施設があるわけでは無い。きれいな水が流れるただの河原だ。風呂は川で泳げばいいが、トイレは野糞、野小便となる。穴を掘って用を足している時に、ハブに尻を噛まれないよう気をつけなければならない。ハブは夜行性なので、夜の雲子には特に要注意。
源河川はリュウキュウアユの生息地であったところとしても知られる。「であった」ということは絶滅したということ。復活させようと、遺伝子の近い奄美大島から稚魚を取り寄せて放流しているというが、復活しているかどうか不明。
絶滅は川の汚れによるのだが、河原で多くの人がキャンプすることによって汚れることもあるのだろう。しかしながら、リュウキュウアユと人間の楽しみとどっちが大事なんだと問われたら、後者だと答える人が多いに違いない。しょうがないことだ。だけども、ゴミは持ち帰るとか、雲子は藪の中でやるとか、自然に対する遠慮は必要だろう。
川沿いを歩いている時に、草が倒れていて、川に向かって人が歩いた形跡のある道なき道を見つけた。辿っていくと、川のすぐ傍に電化製品と思われるプラスチックの破片や、中に何が入っているか不明のビニール袋が散乱していた。こんな山奥にまで不法投棄しに来る奴がいる。それに比べればキャンプくらい許してもいいと思う。
6、魅力ある源河川
散策は私の趣味である。実は、河口から上流まで、あるいは上流から河口まで歩いてもいいと思っていた。歩けばいろんなものに出会える。しかし、同行の他の二人には散策の趣味が無く、結果的に、源河川散策は1時間にも満たないものとなってしまった。のんびり時間をかけて源河川を歩いて、内容の濃い『源河川漂流記』を書きたいという思いもあったのだが、それは最初から期待できないことであった。
ただ、1時間足らずで10種類を越えるまだ見ぬ動植物に出会えたのだ。7、8時間も歩けばきっと多くの感動に出会えるだろう。源河川漂流、いつかやってみようと思う。川沿いを歩き、時には川の中へ入ったりして、源河川の魅力をたっぷり味わいたい。
なお、写真に写っている人物は私では無く同行のH、彼は川に入って、漂流しようとしているのではない。絵になる景色を探している。
記:2009.8.18 ガジ丸 →沖縄の生活目次