オキナワはまだ梅雨の季節が続いていて、雨の日が多いらしいが、この島には博士の発明した天気コントロール機械があって、農作物の都合の良いようにしか雨は降らない。よって、人が活動している明るいうちはたいてい晴れている。で、今日も青空、真夏まではまだ少し時間があるらしい爽やかな風が吹いている。
そんな中、いつもの週末、いつもの散歩を終えてユクレー屋を覗いた。すると、ガジ丸がカウンターに立っている。「へー」と思いつつ、中へ入る。
私やケダマンがマスターやっている時はほとんどいなかった客が、今日はカウンターに1組の夫婦と、テーブル席にオジサン3人がいる。村の人たちだ。私とは顔見知り。どちらにも軽く会釈して、カウンターの夫婦とは反対側の端っこに座る。
「やー、ガジ丸のマスターは久しぶりだね。」
「あー、ちょっとな、時間が空いたんで。・・・ビールか?」
「うん、ありがとう。頼むよ。」
出されたビールを二口、三口飲んでから、改めて店の中を見渡す。客は私を含めて6人だけだが、何だか全体に暖かい雰囲気がある。店内には邪魔にならない程度のボリュームでBGMが流れている。古いジャズみたいだ。それもイイ感じ。
「ちょっと時間が空いたって、今日はジラースーの船が着く日だよね?」
「あー、もう着いてるよ。爺さん三人が帰って来て、トシもテツもいて、んで、船の荷卸しはジラースーを合わせて六人もいる。で、俺は途中で抜けてきた。」
「勝さんたち、やっと帰ってきたんだ。一ヶ月の予定が二ヶ月になったな。思いの外、楽しかったんだろうね、オキナワが。」
「十分楽しんだみたいだぜ、特にトリオG3としてはな。このあいだはジラースーの家の近く、民謡酒場でもライブをやって、盛況だったみたいだぜ。」
「ふーん、そうか、トリオG3のプロデビューもあながち夢ではないかもな。」
夜になって、ジラースーたちがやってきた。トリオG3も元気な顔を見せる。
「やー、お帰り、楽しかったみたいだね、オキナワの旅は。」
「うん、楽しかったね、特に演奏している時はね。」(新)
「じゃあ、これからも時々はライブツアーに出かけるんだね。」
「いや、”時々”はきついな。”たまに”だろうな。」(勝)
「そうだね。都会の空気は、我々には毒だね、長くはいられないね。」(太郎)
「生活のリズムも違うし、土の地面が無いというだけでも違和感がある。」(新)
「そうだな。土は、太陽と空気と水と同じくらい生きるのに必要な物だと思うけど、都会の人間は土が無くても生きていける。我々とは体の仕組みが違ってる。」(勝)
「まったくだよ。土が無けりゃ人は生きていけないのにね。」(私)
「そのこととは余り関係ないが、都会は住み難いって唄を作った。」と、ガジ丸はピアノを弾き、1曲披露した。題は『ミミズの引越し』とのこと、トリオG3のための新曲とのこと。その爺さん3人はしかし、疲れたということでその夜は早く帰った。
記:ゑんちゅ小僧 2009.6.26 →音楽(ミミズの引越し)