旧正月のユクレー屋に、ユクレー島でしか知られていない絵本作家の片割れ、文章担当であるマミナ先生も来た。夜の宴会で、絵本の第2弾の話となった。
「動物の大好きな動物学者がいてね、・・・」とマミナは話を切り出す。
「おー、ちょっと待て、それは、動物の嫌いな動物学者もいるってことか?」とケダマンが茶茶を入れる。私もケダマンと同じことを思った。が、マミナは、
「そんなの知らないよ。いるんじゃないのそういうのも稀には。あのさあ、話の腰を折らないでよ。とにかく、そういう人がいるの。」と答え、話を続ける。
動物好きの動物学者は野生の動物が特に大好きで、アフリカのサバンナ近くの村に住んで、野生動物の研究をしていた。
その学者には男の子が一人いた。男の子は、学校が休みの日にはほぼ決まって父親のところへやってきて、父親の仕事を手伝っていた。彼もまた、父親にも増して動物大好きなのであった。動物大好きという少年の気分は動物にも伝わった。彼は周りにいる野生の動物たちと仲良しになった。それは父親にもできないことであった。
そんなある日のこと、一匹のサイが全速力で少年に向かっていた。それに気付いた動物学者は、サイが少年に襲い掛かろうとしていると思った。で、少年を助けるべく、ライフルの引き金を引いた。サイは倒れた。それと同時に、サイとは反対側の茂みから一匹のヒョウがライフルの音に驚いたのか、慌てて向こうへ逃げていった。サイは、少年を狙っていたのでは無く、少年を狙っているヒョウに向かっていたのであった。
そのサイは、少年が「サイのオジサン」と呼んで、特に親しくしていた動物だった。少年は叫びながらサイに駆け寄った。すると、サイが瀕死の中で言った。
「私の角を切り取って、それでサイコロを作って、君のお守りにしなさい。サイコロの6つの面には何も書かなくていい。君が悲しい時、辛い時、悩んだ時、困った時、そのサイコロを振りなさい。きっと君の助けになる答えがサイコロの目に現れるはずだ。」とサイは言って、そのまま静かに死んでいった。
「というような内容の物語よ。」とマミナは話を終えた。
「ほうほう、このあいだは『かばのかばん屋』だったな。で、今回はきっと『さいのさいころ』ってことだな。そういうことなら、俺も思いついたぜ。トラのトラックなんてのはどうだ?」とケダマンが言う。
「ふーん、それ、どんな話になるの?」(マミナ)
「ダンプトラックの運転手は車体を自分の好きな模様にペイントするだろ、その中にトラの模様をしたトラックがあるわけだ。」
「それがどんな物語になるの?」(マナ)
「どんな物語って、そのトラックの運転手が大阪の人間で、野球好きってことだ。どうだい。これをマミナ先生の絵本第3弾にしちゃあ。」
「却下!」、「却下!」、「却下!」と間髪を入れず、マミナ、ガジ丸、マナが口々に叫ぶ。その後、「きゃっか」と眠そうな声で、シバイサー博士も続いた。
「それじゃあよ、トラのトランクスはどうだ?」
「トラ柄のパンツってことでしょ。既にあるじゃない。雷様も穿いてるし。」
「んじゃあよ。トラのトランペ・・・」とケダマンが言い終わらない内に、
「却下!」、「却下!」、「却下!」とマミナ、ガジ丸、マナが口を揃えた。博士の声が今回は無い。見ると、博士はもう既に眠っていた。
マミナとガジ丸共作の絵本第2弾は、近日公開の予定。ケダマンが提案したトラのトラック、トラのトランクスなどが作品になることは、たぶん無いと思う。
記:ゑんちゅ小僧 2008.2.1