Mキャプテンによれば

 
 新宿副都心、高層ビルの50階にある中華レストランでMキャプテンの誕生日を祝った。MキャプテンはANAのダッシュ400(Boeing747-400、ジャンボジェットの最新鋭機!)の元パイロットである。音楽、とりわけチェロには造詣が深く、空を飛ぶお仕事を引退されてからはもっぱらチェロ演奏に明け暮れている方であるが、私がご一緒する時の話題は勿論ヒコーキの話である。

 飲み物がビールから紹興酒に替わる頃に、デハヴィランドのような前例もあるけれどHONDAも随分と思い切ったレイアウトにしたものですね、もっとも本気で売りたいのは機体ではなくエンジンの方でしょうけどとHONDAが作ったビジネスジェットのことを話題にした(デハヴィランドは誤りで、主翼の上にエンジンの載せたのはドイツのVFD614であったことに帰宅後気がついた)。もちろんMキャプテンはHONDAのビジネスジェットのことを知っておられた。

 そして何と箸の袋に翼の上にエンジンを載せる場合の二つの形式の絵を書いて説明してくれたのである。一つは、通常は主翼からパイロンでぶら下げられるエンジンをそっくり逆にしたHONDAのビジネスジェットやVFD614のような形式のものと、もうひとつは主翼の上に直接エンジンを載せたものであった。

 前者はエンジン本体と主翼の空力的相互干渉を避けるためにパイロンでエンジンを主翼から離したものであり、後者はジェット排気とバイパス・エアを主翼上面に流しそこで更なる揚力を得ようとするものである。

 で、Mキャプテンの結論はこうである。どちらの形式も高度な計算・シミュレーションよって最良の形式だとされた結果だは思うけれど、設計段階で想定していないような事故が起こったときのことを考えると主翼はそれ自体がもっとも効率よく仕事をするもっとも単純な形がよいのだという。

 技術者は奇をてらうとまでは言わないけれど、今までと違った形であったとしても更によいものがないかと模索しそれを形づくる。しかし、出来た機体を安全かつ確実に飛ばし運行しなければならないエアラインパイロットはプログレッシブよりをコンサバティブを、より完成された技術に基づく確実で安全なものそしてフェイルセーフを求めるのであろう。万が一にも間違いがあってはならないから。

 そんなMキャプテンが50階ではなくて40階でエレベータを降りてしまい、ご自分の誕生祝いの席に遅れて到着したことは、やはりナイショにしておいた方がよいだろうか。

 今日の1枚は新宿副都心の新緑。昨日の話題をちょっと意識して、懐かしいモノクロ写真にしてみました。
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