『考える人』2009年春号

 『考える人』2009年春号が届いた。
 今号の特集は「ピアノの時間」。「ピアノ」でも「ピアノを考える」でも「ピアニスト」でも「ピアノについて」でも「ピアノという楽器」でもなく、「ピアノの時間」。実に素晴らしいタイトルである。何の考えも無く日々いい加減なタイトルでお茶を濁している『郷秋<Gauche>の独り言』とは大違い。さすが、新潮社である。

 今号の特集は「ピアノの時間」であるが、新しい『考える人』が届いたら、まず最初に読むのは、もちろん「娘と私」(がげさかのりこ氏)である。なんともホンワカとした優しい語り口(郷秋<Gauche>の刺々しい文体とは大違い)、これ以上省いたら絵にならないだろうと思うくらいの必要最小限、いや、厳選された必要不可欠な線のみで描かれた、心の柔らかなところに沁み込んでくるイラスト。読むたびに心温まる「娘と私」なのである。

 「娘と私」、その娘である「ハナちゃん」がインフルエンザに罹った。でも心配後無用。「私」の看護により、数日後には自宅で過ごすことに「つまんな~い」を連発するほど元気になっていた。

 今森光彦氏の「琵琶湖水系」はいつも通り繊細かつ骨太な絵で楽しませてくれると同時に、郷秋<Gauche>の写真の方向性を確認させていただいている(感謝)。原武史氏の「レッドアローとスターハウス」は連載三回目にして氏の専門である日本政治思想史に踏み込み佳境に入った様相で読み応え十分。

 さて、特集の「ピアノの時間」はと云えば、矢野顕子氏のインタビュー記事、「ピアノと私の歌」を読んだだけであるが、ほとんど「ほ~ら春咲小紅~ミニ、ミニ~見に来てね」しか知らなかった郷秋<Gauche>には、特集記事の前菜のみではや十分満足するほどの内容。吉田秀和氏と堀江敏幸の対談、高橋悠治氏のインタビュー記事他は、次号発売までの間にゆっくり楽しませていただくことにしよう。これが季刊雑誌の良さでもあるのだから。

季刊『考える人』(2009年春月号)
新潮社(雑誌コード:12305)
発行年月日 2009年4月4
B5版 264頁
1,400円(税込)
コメント ( 0 ) | Trackback (  )