闌春から晩春へ

 辞書にも出ておらず余り使う言葉ではないようだが、俳句の世界では春の最も春らしい時季の事を「闌春」(らんしゅん)と呼ぶ。「春も酣」(たけなわ)と云う意味だが、「酣」ではなく「闌」の文字が当てられ「闌春」と書く。

 2008年1月31日の「五季」と云う記事の中で、春は早春、闌春、晩春の三つに分けられるが、早春の前の厳冬の更に前に「新春」という春があるが、これは正月のことであり本当の意味での春ではないと書いた。

 「闌春」とは春の中ほど、まさに首都圏のここ一週間あたりのことを指すのだろ。桜(ソメイヨシノ)の開花直後から低温が続きもう二週間も花が咲いているという珍しい今年ではあるが、それも明日まで。さすがにここ数日の高気温と風とで、葉桜へとその姿を変え、季節は短い晩春をへて初夏へとなだれ込む。

 目覚めの季節から躍動の季節への移ろいには、時に気持ちが追いつかず時に身体がついて行かずに心身の不調を伴うこともある。それは気候のせいばかりではなく、この季節に別れと出会いの時をほぼ同時に経なければならない日本人の身体に備わったDNAがそうさせるのかも知れない。


 今日の一枚は、サンシュは長かった花期を終え、換わって桜。モミジ、クヌギ、コナラが一斉に芽吹き始める闌春最後の日の有様。
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