牛丼一杯のホスピタリティ

 牛丼と云えば吉野家、吉野家と云えば牛丼。牛丼の吉野家を知らない人は日本人1億2770万人の内、3000万人ほどだと思う(郷秋<Gauche>の勝手な想像で、根拠はまったくない)。つまり、牛丼の吉野家は、実際に店に入って牛丼を食べたこの無い人を含め、それ程に知られた店なのであるが、それじゃ、吉野家に食券の自動販売機がないと云う事実をご存知の方はどのくらいおいでだろうか(知らない人が多いことにしておいてください。そうじゃないと話が進まないから(^^;。)。

 さて、郷秋<Gauche>が吉野家で牛丼を食べたことがあるかと云えば、実に怪しい。牛丼を食べたことは勿論あるが、それは「松屋」であったかも知れないし、「すき屋」かあるいは「なか卯」であったかも知れない。郷秋<Gauche>が牛丼を食べるのは、とにかく今、何かを食べなければならない緊急時に限られるので、モスバーガーだって良いわけで、別に牛丼でなければならない理由は何もないし、ましてや吉野家でなければならない必然性は無い。

 さて、その程度の理由で選ばれる牛丼であり吉野家なのであるのだが、吉野家には確固たる信念があり、それゆえに他の牛丼チェーン店や和食系ファーストフード店では常識となっている券売機を置いていないのだと云う。「効率こそ命」に見えるファーストフード業界にあって、「『ご注文は何にいたしますか』という接客用語がひとつ減ってしまうから、代金の受け渡しという接客行為もひとつ減るから」だと、株式会社吉野家ホールディングス代表取締役社長、安部修仁は事も無げに云う。

 牛丼一杯、注文して食べて出るまで、早い人だと5分もかからないかも知れない。そのわずか5分の中にあっても社員・パートタイマー・アルバイトが、お客様と触れ合う機会をなくしたくないのだと安部氏は云うわけだ。外食産業において最も大切なホスピタリティ精神、つまり「おもてなしの心」を発揮する場を確保するために券売機を置かない吉野屋。たかが牛丼、されど牛丼。吉野屋、立派である。この次に「今、何か食べないとならない」時があったなら、迷わず吉野家で牛丼を食べてみようと思った郷秋<Gauche>である。

最後に:今日の記事の元ネタはこちらである事を明記しておきます。


 今日の一枚は例によって記事本体とは何の関係もない二輪草。昨日、碇草(いかりそう)をご覧頂きましたが、碇草よりも2週間早く咲き始めていた今年の二輪草をご覧頂くのを忘れておりました。
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