玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

鈴木良一さんの詩集刊行間近

2006年01月27日 | 日記
玄文社では昨年から新潟市の詩人・鈴木良一さんの新詩集の制作を進めていました。このほど4回にわたる校正を終了して、印刷も完了し無事に製本屋に渡すことができました。
鈴木さんは新潟県の近現代詩史を書くことをライフワークとしていて、「北方文学」56号に「新潟県近代詩黎明期の覚え書」を発表。今まで誰も手をつけていなかった領域なので、各方面から注目されています。
 鈴木さんは2001年に『不思議荘のゆりかご、あるいは写植オペレーターの探字記』という詩集を思潮社から刊行しています。それにつぐ新詩集ということになります。タイトルは『母への履歴』。
 巻頭を飾るのは「森と野と水と」という作品で、2000年10月になくなった旧川西町の詩人・五十川康平さんへの追悼の詩編です。五十川さんとは私も長く親しくさせていただいたので、特別の思いがあります。「森と野と水と」は次のように始まります。

雄弁な死を残して五十川さん
あなたはいったいいま
なんという川を渡っているところですか
四十九番目の川ですか
魚沼の
川という川の襞の
渓流という渓流の隠し所で
源流の官能と戯れ相対し
信濃川の全長を歩きおおせ
肉体に五十もの川を宿してなお
黄泉の国の川を渡ろうなんて
なんて欲張りなんだろう

 この12行に隠された深い悲しみを、鈴木さんと共有しています。詩集が出来たらもう少し詳しく紹介します。