もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

フランスの移民暴動に思う。

2023年07月04日 | 欧州

 フランスの移民デモが更に尖鋭化し、暴動にまで発展している。

 デモ・暴動の発端は、先月末にアルジェリア移民2世の17歳少年が警官に射殺されたことであるが、当初は少年を擁護していたマクロン政権も©武力鎮圧に転舵した。
 今後、射殺に至る経緯などは調査で明らかにされるであろうが、少年や暴動の主体が「移民2世」と云う点に鍵があるように思える。
 新天地を求めて、或いは戦火を逃れるために母国を後にした移民(難民)は、異国での生活が容易ではないことを覚悟して出国したために、移住先で受けた多くの困難・障壁にも耐えてきたものと思う。
 一方、2世以降は両親が国を捨てなければならなかったことを肌身に知らないことと、万民平等という教育を受けた目で自らの境遇を顧みると、移住先での差別や格差がより切実に感じられるのではないだろうか。
 同じことは韓国の反日感情の変化にも見受けられると思う。
 1910(明治43)年~1945(昭和20)年の日韓併合下に生きた世代を新生韓国1世と考えると、反日運動が顕在化・鮮明になった1970年代は独立の約30年後に当り2世が発言権を増した時期に当るように思える。さらに30年後の2000年代には慰安婦・徴用工・靖国・戦犯旗などが反日攻撃の材料と追加されたのは、3世が力を得たであろう時期に符合する。
 李朝下で初等教育・識字率ともに30%内外で農奴に近い差別を受けていた1世にあっては、多くの不条理はあるものの、李朝に比べれば「子供を産んで教育を受けさせられるだけ、日本は未だまし」であったであろうし、日韓併合時には人口が大幅に増加している。
 1世両親の来し方を実体験している2世になると、教育によって日韓併合は否定するものの民主化、1世の李承晩追放、北の浸透防止が優先課題で、反日色はまだ薄かった。
 1953年生まれの文在寅元大統領に代表される3世になると、負の面のみ過大視する教育とゆとりから生まれた愛国情念から日韓併合は単なる悪でしかなく「反日無罪」にまで成長・拡大したと考えれば、今後とも韓国人から反日が消えることは無いように思える。

 フランスの移民暴動を観ると、「耐え忍ぶ1世」~「物申す2世」という図式が当て嵌まり、3世以降は「反移住国行為無罪」がまかり通るようになるのではと案じている。
リベラルを標榜する知識人が先導して受け入れた「移民」が、時を経て武力弾圧の対象にまで変質し、将来はアメリカのBLMのように社会分断の素因に変化するのではないだろうか。
 日本でも年間10万人の移民が渡来・流入しており、フランスの暴動は明日の日本を暗示し警鐘と観るべきかも知れない。


リタイヤ大国を学ぶ

2023年01月12日 | 欧州

 フランスの年金受給開始年齢が62歳であり、リタイヤ大国と呼ばれていることを知った。

 報道によると、マクロン政権は2030年に受給開始年齢を64歳に引き上げる年金改革案を発表した。
 フランスでは、62歳から年金が受給できるために50代後半には早期退職することが一般化し、労働力の低下を招いて高齢者福祉も限界に近付きつつあるとされるが、既得権益を失ってライフスタイルの変革を余儀なくされる国民はもとより、野党・労組の猛反発が予想されるとも報じられている。
 フランスの62歳は、受給開始を65歳前後とするEU内では突出しており、更にはこれらの国々も数年後には2~3歳引き上げることとしているので、フランス国民と雖も未来永劫62歳受給と安間と構えてはいられないだろう。
 フランスの年金改革は歴代政権の主要課題ではあるものの、一旦手を染めると大統領の再選は叶わないという歴史の繰り返しであるらしく、シラク政権は3週間のゼネストを打たれ挫折、サルコジ・オランド大統領も小幅な改革を行ったことが原因で再選を果たせなかったとされている。
 マクロン大統領も、2019年に年金改革に着手した際には大規模デモを浴びたものの2022年の大統領選では得票率58.55%での辛勝ながら再選を果たし得たが、国民が年金改革に賛成したというよりも対立候補である極右政党「国民連合」のルペン党首の政策を嫌ったことの方が大きいのではないだろうか。

 フランス人の国民性とされるケチと個人主義は格好の小咄ネタとされるほど有名であることを考えれば、大いなる出費(貰えない)とライフスタイル変革を伴う年金改革は容易ではないだろう。
 種々の要因から公的年金が変化することは仕方ないことである。耳学問で云えば、自衛官も「勤続15年で受給資格が生じ45歳から防衛庁共済年金の受給」が、何時しか「国家公務員共済組合と年金機構からの目減り年金を65歳から受給」となった。20歳前後で金がない時には、定年退職したが無職(働かない)である元班長・機械長の家に遊びに行くと奥さんも嫌な顔もせずに酒付きでもてなしてくれたのは、多分定年後の生活にゆとりがあったのではと懐かしんでいる。


トラス氏に触発された三題噺

2022年10月24日 | 欧州

 トラス首相が、英国史上最短の在任45日で辞任を表明した。

 トラス首相は、財源不足を懸念する声を押し切って大型減税による経済成長(回復)と電力料金の補助で当面のインフレ対処を推進するとしていたが、財源確保のための国債売却によって金利上昇、ポンド・株価暴落を招いたと理解している。
 ジョンソン前首相は、首相官邸でのパーティーと与党幹部の性的スキャンダルによって主要閣僚や政府高官の辞任が相次いで辞任に追い込まれたが、トラス首相の後継者についての世論調査では断トツ1位の32%の支持を得ているとされる。しかしながら、ジョンソン氏は不出馬を表明して、早々とレースを降りてしまった。
 二人の首相の辞任劇を眺めると、民主主義におけるリーダー選びの難しさが実感できる。
 政策や手腕は確かなものの不品行で辞任を余儀なくされたジョンソン氏、品行方正?ながら国費の大盤振る舞いと税収減で国力(単純に経済)低下を招くと判断されて支持を失ったトラス氏、どちらも議会制民主主義の優等生とされたイギリス議会・国民の下に行われたことであることを思えば、救国の宰相チャーチル氏が平時に追われた際に残したとされる「民主主義は最悪の政治形態であるが、それに代わる物が見当たらない」という言葉が、実感を以って思い出される。
 習近平氏が憲法を超越する共産党規約を踏みにじる形で、3期目の総書記の座に居座った。中国の政治形態は、9700万人(人口比7%)の党員が下支えする共産党にあって、実質的には24名の政治局員が国政の全てを握っている。更に言えば、24名の政治局員中の7名の常務委員(最高指導部)で14億人を統御していることになって、そこには総選挙も、世論調査も、不品行の糾弾も存在しないので一度権力を握れば、国民の意思など顧慮することなく反対者への強権的な抑圧・制御・粛清まで可能となり、今回の総会でも人事案件の採決前に胡錦濤前国家主席が強制的に退席させられるかの映像が流出した。

 開会中の臨時国会の中継は見ないと決めているので些かのストレス軽減を得ているが、自民議員と統一教会の政策協定が槍玉に上がっているようである。
 先の総選挙では、得体のしれない(共産党の下部組織が定評)市民連合と野党4党が政策協定(合意)を結んだ。壺を売る宗教団体と共和制移行を図る市民連合、いずれもが鵺としては甲乙つけ難い存在であることを思えば、1票欲しさの目糞が同様の鼻糞を攻撃しているように思える。
 せめて、税の減収が長期的には国力損壊に繋がるとしたイギリス国民と議会を他山の石として欲しいと思っている。


英国の国葬を観て

2022年09月20日 | 欧州

 エリザベス女王の国葬が粛々と行われたが、二つの点に興味を持った。

 一は、棺を乗せた砲車を牽引・護持したのが海軍兵であったことである。
 イギリスには近衛部隊として王室師団があり騎兵2個連隊と近衛歩兵5個連隊を擁しているとされるので、砲車の牽引・警護も近衛兵が行うものと思っていた。イギリスの儀典に暗いので勝手な思い込みかも知れないが、海軍兵とされた背景には、七つの海を支配した大英帝国の伝統・郷愁があるのではと思った。確かに近衛兵のきらびやかな軍装は慶事では劇的な効果を発揮するであろうが、哀悼の意味を込める儀式にはネービー・ブルーのセーラー服の方が相応しく見えた。また、葬送会場に棺を担ったのは近衛兵であり、黒色礼服の参列者の居並ぶ寺院内では、近衛兵の軍装が女王の華やかな生前を際立たせる効果を醸し出しているように思った。来るべき安倍氏の国葬でも葬送の暗い雰囲気の中にも、一種の華やかさを添えるもの(演出?)を取り入れて欲しいものである。
 二は、チャールズ3世の即位によって、英連邦の少なからぬ国に連邦離脱・共和制移行の動きが活発になるだろうとの観測である。NHKの番組内で知ったことであるが、既にオーストラリアではコインの肖像は従前の通り国王チャールズ3世とするものの、紙幣については国王の肖像を廃することが現実味を帯びており、ニュージランドではユニオンジャックを取り込んだ国旗の変更が取りざたされているらしい。カリスマ女王の崩御によって、現在でも形式的なものであるとは云え英連邦が歴史となる日も近いのかも知れない。

 カリスマ指導者が死去したことで、寄り合い国家が分裂した好例は、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国であるように思う。
 社会主義国家でありながら、コミンテルンから追放されたほどの独自路線で多民族を単一国家として纏めていたチトー大統領が亡くなると、激しい内戦を経てスロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、北マケドニアに分裂し、更にセルビアの自治州コソボも独立国となった。素人の単眼視点であるが、内戦に発展する程の民族間の軋轢・憎悪をチトーがまとめることができたのは、偏に彼のカリスマ性であったと思う。
 英連邦に話を戻すと、時代の趨勢や連邦構成国民の価値観の多様化という側面があるとは言え、チャールズ3世の来し方を眺めると、不遜ながら、連邦を維持した女王陛下ほどのカリスマ性や信望は持ち合わせていないかのように思える。


英国王族の挙措に思う

2022年09月15日 | 欧州

 エリザベス女王の棺がバッキンガム宮殿に帰館された映像を見た。

 霊柩車を先導する形でチャールズ3世、アンドリュー王子、アン王女、ウイリアム皇太子が歩かれていたが、全て軍装であり、加えて護衛の軍人と完全に歩調を揃えていたことに感動した。
 第二次大戦までは英軍将校の大半は貴族であり、現在でも王族を含む全ての貴族の義務として一度は軍に身を置くことが不文律的に行われていることを思えば当然のことであるかもしれない。
 集団で歩調を揃えて行進することは簡単であると思われるだろうが思いのほか大変である。「気を付け」に始まる停止間における各個動作の教育があったのち、行進の訓練に移行するが、教官・班長の怒声が飛ぶことなく一応整斉と行進できるようになったのは、入隊して半月程度も経っていたように思う。その後も、歩調の乱れ、列の乱れ、足の挙げ方、手の降り方、と折に触れて注意される始末で、ましてやパレード・観閲行進等で部外者の目に触れるようなケースでは、いやになるほど矯正・練習が繰り返えされる。
 海上自衛隊(陸・空も多分同じ?)では、行進時の歩幅は75㎝、歩数は毎分120歩とされている。歩数については自分が最初に教育された時は112歩とされていた。何故にきりの良い120歩ではなく112歩であったのかは知らないが、例えば行進曲のテンポがそうであったのかもしれないと今は思っている。
 行進時の姿勢は、顎を引いて背筋を伸ばし、手は軽く握って肘を伸ばし前に30度後ろに15度自然に振るとなっているが、20年近く気ままに歩いていたものを型に嵌めるのは容易ではない。さらに、葬送式で遺体や遺灰を運ぶ際は国際的に「半歩行進」が慣例であり、故女王の棺を運ぶ際にも半歩(概ね靴の長さ程度)行進で保持されていた。
 このように、歩くだけでも相当な教育訓練が必要であるにも拘わらず、王族が平然とかつ優雅にこなしているのを見て英王室・王族の強靭さを実感した。
 また、いろいろな場所で棺が運ばれる映像を目にしたが、全て陸海空海兵の軍人がその任に当たっており、元首の葬送や国葬の儀礼に軍が関与するのは国際基準であるように思える。

 安倍元総理の国葬では19発の礼砲を撃つことが報じられたが、国葬に自衛隊が関与することの是非を行間に滲ませたり、空砲の値段に触れたものさえある。
 自分は、礼砲は概ね慶事において現職の階級に対して行われるもので葬送に際しては弔砲3発が国際基準と思い込んでいたが、昭和天皇大喪の礼で21発の礼砲が行われたことから弔事でも撃たれることを知った。
 今回の国葬での自衛隊の関与は、儀仗・礼砲・沿道での「と列」だけであるように思えるが、構想に際しては国際基準に適した軍人(自衛官)の関与を認めるべきではないだろうか。非礼な野党議員よりも名もなき自衛官の列席の方が安倍氏の葬送に相応しく思える。