立憲民主党の参院選キャッチフレーズが発表された。
従来、立民で最も弱いとされていた防衛(安全保障)に関して、苦肉の結果と思われる「生活安全保障」というテーゼを掲げ、HPでは「生活安全保障は、命と暮らしの視点から日本を力強く再生させる、新たなキーワードです」と自賛している。
生活安全保障の中身を覗くと、
1 物価高と戦う
2. 教育の無償化
3. 着実な安全保障
⑴ 新領域 (サイバー・宇宙・電磁波) や情報戦など新たな分野に対応を
⑵ これまでの日米の役割分担を前提としつつ「日米拡大抑止協議」の活用を
⑶ 尖閣を守る領域警備法を制定へ
⑷ 防衛費は2%目標ありきでなく、あくまで必要な予算の積算で確保する となっている。
1、2項は、従前の主張で目新しいものではないが、財源音痴ではないことを示すために「子ども子育て関連支出を対GDP比3%台に(財源は「教育国債」を発行)としている点がやや異なる点であるように感じた。
3項について考えてみると、全般的には防衛・軍事に関する知識・考察が浅薄である感が否めない。
⑴号について「電磁波対応」だけを見ても、世界的にもEMP攻撃を受けた際に防護できるのは指揮中枢や限定的な軍事施設・装備だけであり、全てのインフラと社会生活は壊滅的な被害を被るとされている。そのために強国は「社会インフラをEMPに強靭化することは不可能であるために、EMP攻撃自体を阻止する」ことに注力している。このことを念頭に置いて立民の主張を読めば、「ミサイル防衛能力を格段に向上させる」と読むべきで、必要経費を積み上げればこれだけでGDPの数%を要することになるだろう。
⑵号の「日米拡大抑止協議」は、外務省が主導する局長レベル協議であって軍事情報や手続きに関する官僚間の意見交換の場であり、安保条約の発動に関する政治決定を左右するものではないことを考えれば、安保条約の深化や発動に対して、立民政権下の閣僚は「蚊帳の外に立つ」と宣言するものに思える。
⑶号の領域警備法は立民が国会に上程した法案であるが、その主体は「海上における警備行動(海警行動)」発令以前に海保の補完に自衛隊を活用」するというものであるが、自衛艦の出動は必然的に中国に海軍を投入する口実を与え、結果的に正規軍の対立に拡大するという視点が欠落している。立民的ロジックに従えば、同法こそ「戦争法」と呼ばれてしかるべき代物である。
立民が自画自賛する「生活安全保障」の正体は、これまで使い古されていた「生活防衛」という概念に、安全保障という単語を無理やり付け足したもので、ウクライナ事変に触発されて離れるだろう立民支持者を引き留めるためだけの「羊頭狗肉フレーズ」であるように思える。
やはり立民に、日本の尊厳ある独立と日本人のアイデンティティ回復・堅持を求めることは不可能に思えるので、参院選での大敗・第1野党転落も現実味を帯びてきたように思う。