もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

太陽光発電に思う

2023年05月14日 | エネルギ

 太陽光発電に関して、自分が憂慮していた現象が既に顕在化していることが報じられた。

 読売新聞の報じるところを要約すると《国立環境研究所が2021年に公表した調査結果では、出力500Kw以上の太陽光発電施設は全国に8,725か所あり、「土砂災害警戒区域」の傾斜地で下方に住宅などが存在するものが231か所、うち34か所は「特別警戒区域」に設置されている》とされていた。
 太陽光発電は、風力発電などに比べて初期費用が少ないことや売電価格の高額助成などから雨後の筍的に設置されたが、一部には「乱開発」に近いものも混在しているようである。かってのバブル期に傾斜地に建てられた別荘やリゾート施設がバブル崩壊とともに廃屋となって地元住民の生活を脅かすという事象が今も続いているが、一部の太陽光発電施設にも同種の後遺症が懸念されるようである。これらのことは、誰も買い手がない「土砂災害警戒区域」ならば用地買収も安価・容易で、送電幹線網への接続ができれば設置場所は何処でも良いために起きたものであろうか。
 出力500キkwの発電施設のパネル面積は5,000㎡程度であるらしいが、将来的には風雨によってパネルが飛ばされたり、流されて住宅に被害が及ぶこともあり、さらに、設置時に森林伐採や造成工事が行われていれば地滑り等の災害が誘発される可能性もあるように思える。また、売電価格の助成が縮小されつつあり将来的に廃止されると、体力の弱い売電業者の倒産や施設放棄なども起こり得るのではないだろうか。
 東京都は新築戸建てにも太陽光パネルの設置を義務付けるらしいが、取付ボルトは何時かは腐食するので数年後には「台風で飛ばされた住宅用パネルでの第三者被災」も十分に起こり得ると思っている。現に基礎部分の腐食で、屋上の大型看板が飛ばされたり、信号機や電柱が倒壊したり、ゴルフ練習場の鉄柱が倒壊したり、風力発電の風車が倒れたり羽根が飛ばされることは度々報じられていることは、太陽光パネルの明日を暗示しているように思える。

 技術や社会の進歩・変革は「両刃の刃」であり、人と地球に優しいとされる太陽光発電にあっても、里山の生態系を破壊することも有るだろうし、土石流の牙を剝いて住民の生命財産に襲い掛かることも有るだろう。
 産業革命でもたらされた100年の変化を現在は1年で経験すると聞いたことがあるが、便利さと同時にもたらされるリスクを覚悟することは、我々の避けて通れぬ道であろうか。


ドイツの暖房事情を考える

2023年05月09日 | エネルギ

 ドイツが2045年までに化石燃料由来の暖房をなくし、再生可能エネルギーにする計画を打ち出した。

 ドイツの暖房事情は、全世帯の半分がガス暖房で4分の1が灯油暖房であるらしいが、計画ではその全てをヒートポンプ方式を念頭に置いた再生エネ暖房方式に変更するとしている。ヒートポンプの動力源は電気であり端的には電気暖房に他ならないので、全電力を再生可能エネルギーにしない限り脱炭素燃料による温暖化抑止という目的は達せられない。
 ヒートポンプ暖房設備には、ガス暖房の約2倍の初期費用が掛かるうえに老朽更新の間隔も狭まること等から、世論調査では国民の8割近くが反対しているとされるが、連立2位の緑の党が強硬に主導しているようである。現在のドイツの電力料金はG7中で最も高く日本の2倍強ともされており、これに新方式転換の初期費用などが加われば国民は相当の負担を強いられることになる。
 ドイツの電力は、約6割を再生可能発電とされているが補完のための発電用燃料の大半をロシアLNGに依存し、なおかつ不測の事態にはEU電力網から購入していたが、EU電力網の主体はフランス原発ともいわれるのでエネルギ-の致命的部分は外国に依存していたことになる。ウクライナ事変でロシアがガスの元栓を閉めたことで大混乱した記憶も新しいが、今回の暖房革命にはエネルギの元栓をフランスに握られることになるように思える。
 そんな自明のなかでも、暖房革命を断行しようとするドイツとドイツ国民の選択は地球温暖化抑止の試金石として注視したいところであるが、同計画の推進者である「緑の党」の主張には日本人の感覚では疑問な点も有る。
 殺傷兵器は他国に譲渡しないことを国是としていたドイツが、世界最強の戦車と名高いレオパルド2戦車のウクライナ供与に転舵したのは連立与党である「緑の党」の主張によるところ大きいとされている。多分レオパルド2は多くのロシア人兵士を殺すのは間違いないが、そこにはウクライナ人を救うためにはロシア人の命を奪うことは当然で、イエス神も望まれ・お許しになるとの宗教規範があるように思える。仏教徒ならずとも日本的には人間の生命価値は同等で、例え敵兵であっても殺すことには躊躇いがあるだろうが、キリスト教社会における正邪の判定や邪に対する制裁は、我々と全く異なるものと理解しておかなければならないようである。

 G7サミットで岸田総理は「核なき世界」を共同宣言に盛り込みたい意向とされている。米英仏の核保有国も議長国の体面を忖度して白々しく同意するだろうが、正邪の判断と制裁について日本と正反対の価値観を持つ彼らの同意を信じてはならないだろう。
 また、LGBT法案の上程・成立も間近であるが、LGBT者を弾圧した過去を持つ西欧社会と彼等に比較的寛容であった日本の土壌を考えれば、法律の内容や処罰規定に温度差があるのは当然であるように思える。かって、部落解放運動家の活動が部落出身者を際立たさせて無用の迫害を引き起こしたことがあったが、LGBT法がマツコ・デラックス氏や釜口ホモエ氏の活動阻害に発展しないことを願っている。


(電力)カルテルに思う

2022年12月05日 | エネルギ

 産経新聞の社説「不当な競争制限許されぬ」を読んだが、一面的な考察では?と疑問に感じた。

 社説は、「企業向け電力を巡る関西・中国・中部・九州電力がカルテルを結んで自由競争を妨害したことは、自由化に逆行し契約者の利益を損なう行為」と断罪している。
電力については、
・2000年 「特別高圧(大規模工場、デパート、オフィスビル)」部分を自由化
・2004年~ 自由化の範囲を「高圧(中小規模工場・中小ビル)」部分に順次拡大
・ 2016年 家庭用を含む「低圧」部まで全面自由化
となっており、地域の電力(発電)会社からしか購入できなかった電気を、どこの電力会社からでも購入できることになった。
 東電地域に住む自分の例でも、ガス会社が仲介した中部電力の電気を使用するという形態であるので、「中部電力(卸問屋)~ガス会社(小売業)~自分」という図式で電気を使用している。
 当然に小売業主同士の競争は熾烈で安売り合戦に発展するとともに、卸業となった大手電力会社も卸価格の競争を余儀なくされた結果、電気の安定供給には不可欠の余剰電力と送電網の維持費の全額を卸価格に上乗せできない状態になっている。
 電力の完全自由化が末端の利用者にとってバラ色一色かと云えば、そうとも云えない一面を持っているように思える。
 平成30年北海道胆振東部地震に伴う大規模停電の原因は、一部発電所の停止によって電力使用量が発電能力を大きく超えたために周波数が低下したこととされているが、ここにも金にならない余剰電力を局限するために北海道電力が一部発電所を完全停止していたという側面もあると思っている。
 電力の小売り業者は、発電能力・送電網の全てを卸会社等に依存する「抱き着きお化け」状態で、停電に対する責任も負えない。もし、地域以外の電力を使用している医療機関で停電に起因する医療事故が発生した場合、責任は発電業者か、送電業者か、小売業者かという曖昧な状態に陥ることは避けられないように思える。

 今回の闇カルテルの背景には、従来、地域の電力会社に寡占的に認めていた特権を、発送電の全てに根本的な見直しをすることなく自由化したことが挙げられると思う。自然エネルギーの拡大・原発問題・送電網整備をも含めた総合的な電力行政と電力の在り方を改めて見直す必要があるように思う。

 「規制緩和」の名の下に公共事業を含む多くの入札が、受注者の能力・体力を勘案した「随意契約」・「指名競争入札」から、誰でも応札できる「一般競争入札」とされた結果、役務を完遂できない・納期を守れない事案が飛躍的に増加しているとされる。今になっては詮無いことながら、発電能力を持たない小売業者が電気を売ることは適当なのだろうか。自分の契約している卸業者(中部電力)の発電能力を超えて小売業者が販売しているようなことはないだろうか。勧誘に来たセールスマンは、「その時は、東電などから購入します」と云ったが、はてサテ。


EUへの液化天然ガス支援

2022年02月13日 | エネルギ

 日本が、ウクライナ情勢の緊迫化で天然ガスの調達に不安を抱える欧州に液化天然ガス(LNG)を融通することを決めたが、考えさせられることが多い。

 萩生田経産相によると、融通は3月分として数十万トン規模であり、LNGの国内備蓄は無いために日本企業の国内向けLNG運搬船数隻を欧州に回航させる方式とされる。経産相は、融通は米国の欧州支援要請に応えるものであるが、国内の必要量を確保した上での措置であり国内の電力・ガス供給に対する影響は限定的ともしている。日本の輸入量(令和2年度:763万㌧)から見れば融通規模はほぼ一月分で限定的ともいえるが、融通によるLNG取引市場価格の上昇等、将来的には電気・ガス料金に影響する可能性も取り沙汰されているが、自分的には対ロ対策として止むを得ないと考えている。
 欧州の天然ガス危機は、ウクライナに対するEUの姿勢に不満のロシアが恫喝手段としてLNGパイプラインを通しての供給量を6割程度に絞ったことによって顕在化したものであるが、特にドイツが最も大きな影響を受けているとされる。
 ドイツは全電力の半分近くを再生可能エネルギーに置き換えた環境先進国で、再生エネの補完電力もLNG火力発電としており、国内6基の原発は既に3基が稼働を停止し残る3基も年内に稼働停止させる予定となっていた。さらに、EUが再生エネの補完をガス火力+原発としたことにも反発していたが、肝心のガス火力の死命をロシアが握っているという現実に直面して西側諸国の支援を仰がなければならない事態となった。
 今回の列国の支援に対してもドイツが即座に受け入れ可能かどうかも疑問で、一旦パイプライン需給を原則として整備された精製・輸送のインフラが、海上輸送に即応できるとは思えないので、列国の支援が効果を発揮するまでには幾許かの時間が必要であるのではないだろうか。そうであれば、市民は厳しい冬をいかにして過ごすことになるのだろうか。

 日本を見ても、ドイツを手本として脱原発を金科玉条とする政党・環境団体が存在するが、現在のドイツと同様な事態、すなわち補完電量の動力や燃料の調達を考慮しての主張ではないだろうと思っている。
 メディアやメディアに登場する識者の主張を見ても、ガス融通の事実を他人事と伝えるのみで、他山の石として警鐘を鳴らすものは見当たらないが、サプライチェーンの一角が恣意的に需給統制することの危険性を考える格好の事象に思える。


老いと電力料金

2021年09月19日 | エネルギ

 今年の我が家の夏季電力料金が記憶している例年料金に比べて約3割減となった。

 原因を考えてみるに、盛夏気温や電力契約による減少もあるだろうが、最大の原因はエアコンの設定温度や運転時数であるように思う。2~3年前までは概ね25℃以下で使用、時として22~23℃とすることも珍しくなかっが、最近は経産省推奨の28℃で使用することが殆どで、風呂上がり前後に一旦27℃に下げるくらいとなった。また、起きている時間はフル稼働であった運転時間も、奥方様がスイッチを入れるまで休止しているケースも増えたと思っている。
 これらのことは、不謹慎なことであるが省エネに協力するという高邁な理由からでなく、単に暑く感じなくなったことに因るようである。
 高齢者が屋内や就寝中に熱中症になり、時には死亡する事例を別世界の現象と軽く見ていたが、温度変化に鈍感になるとともに暑さを暑さと感じなくなった自分としては、知らず知らずの熱中症は「今そこにある危機」であるのかも知れない。かっては自分のエアコン設定温度に文句たらたらに耐えて来た奥方様のエアコン設定・管理に、無条件に従うことでしか安全が確保できない現実を認めざるを得なくなったようである。
 自衛艦における冷暖房について紹介すると、冷暖房の系統は大まかには「居住区画系統」と「戦闘区画系統」に分けられ、居住区画系統は「人のために」、戦闘区画系統は「機器のため」に機能する。そのため、戦闘区画にあっては夏でも防寒ジャンパで勤務することも珍しくないが、機器のためであれば文句は出ない。しかしながら、居住区系統では系統に連なる区画の大小、配員の多寡、外気熱に晒される外販との関係、等々から様々な苦情・要望が出る。家族間でもエアコン設定温度については侃々諤々の状態が一般的であろうが、多人数の最大公約数を目標に冷暖房の管理を担任する機関長には、個々の苦情等を無視する図太さが要求され、ある暑がりの隊司令が乗艦した例では、度重なる「暑い」にも「私が温度計ですから」と耳を貸さないために「お前の温度計は狂っている」と云われたことがある。それが原因かどうかは不明であるが、隊司令の任期中に艦が司令護衛艦とされることは極端に少なくなった。

 形の上では経産省の設定温度を守り、少しではあるが家計の足しになった今夏の電気料金は来夏でも同様か若しくは更に減少するのかも知れないが、それにつれて「知らず知らず熱中症」の危険性も増していくことを覚えておかなければならないようである。老化現象は医療費の増加等に依って家計を圧迫するものと考えてきたが、極まれに経費節減に至る事象が有るようである。