中国外相が国連総会で演説したことが報じられた。
演説では、米中貿易摩擦を念頭に「恐喝と圧力に屈しない」、「自由貿易体制や国際秩序を維持する」との主旨であったらしい。中国はアメリカが切ってきた関税障壁第3弾に対する有効な対抗策としてはアメリカ国債の売却しか選択肢が残されていないといわれているが、人民元の信用度は外貨保有量とアメリカ国債保有という2枚看板に支えられているものであり、外貨保有量が確実に減少するであろう現在の状況を考えれば米国債の売却は2枚看板を一挙に失う結果となって、人民元の対外信用度を確実に低下させるものあることは目に見えている。米中2国間貿易協議の進展はおろか開催すら頓挫しているために起こるであろう途上国の中国離れを防ぐとともに、途上国を債務漬けにして軍事・経済拠点を獲得する手法も、モルディブ・スリランカ・マレーシアと立て続けに親中政権が敗北して、一帯一路構想にも陰りが見え始めていることも関係しているのかもしれない。国連の場での「自由貿易体制や国際秩序の遵守」にしても、中国に最も欠けている点として自由社会から糾弾され続けているもので、今更ながら中国の千枚張りの鉄面皮ぶりには驚きを通り越して笑えるものである。中国の自由貿易体制を阻害する要因としては、人民元の変動相場制を拒否して共産党の管理下に置いていることと、中国国内での工業生産に際しては特許の開示や譲渡が求められる知的財産権保護の2点が挙げられるが、安価な労働力に惹かれて進出した企業も前述の要因と賃金の高騰によって中国に生産拠点を置く意味を失いつつある。更には中国国内での金融や物流機構の未整備も、企業の中国撤退に拍車をかけているとも云われている。
外相が触れたもう一つの「国際秩序の維持」についても、人工島の建設に対する国際司法裁判所の判断を当面無視して既成事実化を図るやり方、日中覚書に反して東シナ海でのガス田開発を強行(新たな掘削も報じられている)するやり方、国際秩序を無視・破壊しようとする張本人が中国であることを自覚していないかのように感じられる。”公共の場で用を足さないで”と中国人のマナーの悪さを皮肉ったスェーデンのテレビ番組に中国が抗議したように、面子を重んじる国民性はかろうじて残っているのかも知れないが・・・。