台湾の新型潜水艦進水式が報じられた。
艦名は「海鯤(かいこん)」で、全長70m・潜没時排水量3千トン・通常動力型と報じられている。
「海鯤」はアメリカの技術支援を得た武器システムの他は自主開発とされているが、2016年に計画、2020年に起工、2023年進水との工程を見る限り、武器システム以外にも西側の技術支援があったかのようにも思える。
主として予算と保有隻数の制約下であるとは言え日本の潜水艦の建造ペース(5-6年/1隻)から見ても、初めての自主開発潜水艦を7年間で進水させたのは台湾の対中姿勢の本気度を示すものであろうか。台湾海軍の在来潜水艦を含めた更新計画では4隻体制を維持しつつ最終的には同型艦8隻体制とするとしている。
潜水艦の建造後進に対しては、香港型統一を標榜する国民党などは自前潜水艦の建造自体に反対しており、建造容認派でも強大な中国海軍に通常型潜水艦8隻では抑止力として不十分との意見もあるとされるので、政権の推移によっては建艦・配備計画が大きく変更される可能性を残しているようにも思える。
数隻の潜水艦では強大な中国に不十分という意見は尤もであるが、1隻の潜水艦の存在が戦局に大きく影響する可能性を示す好例は、米重巡インディアナポリスの撃沈である。
インディアナポリスは、広島と長崎に投下された原子爆弾を本国からテニアン島に輸送したが、輸送完了後にレイテ島沖で日本海軍の伊58潜水艦(艦長:橋本以行少佐)によって撃沈された。アメリカ首脳は、インディアナポリスの喪失を嘆く以上に、撃沈が原爆輸送完了後であったことに安堵したとされる。もし、撃沈がテニアン島到着前であったならば、広島・長崎の悲劇は防げた可能性がある一方で、日本のポツダム宣言受諾も遅れて熾烈な本土決戦に至った可能性も考えられる。
もし「海鯤」が、台湾侵攻軍の「山東」でも撃沈したならば、中国の台湾侵攻作戦を挫く要因ともなりかねない。
ともあれ、近代化された台湾潜水艦の将来に栄光あれ。