嘉手納への米空軍F22暫定配備と呼応するように、横須賀から空母(CVN)ロナルド・レーガンが出港した。
勿論、新聞報道のみによる素人の推測に過ぎないが、米朝首脳会談に対するプレゼンスの意味を込めてのことと思う。他の空母の増備等が報じられていないことから、本格的な対北軍事オプションの可能性は少ないと思うものの気になる動きである。一般的にいえば、一定海域に投入される空母の数によってアメリカ政府の危機感ないしは本気度が測られるが、対北朝鮮攻撃に要する海・空域が在日・在韓米軍の制御下にあることを思えば空母の配備隻数だけではアメリカの真意を完全に読み取ることはできないとも思う。あまり重要視されていないために報道されることはないが、アメリカにはMSC(Military Sealift Command:軍事海上輸送司令部)という組織があり、上陸作戦や大規模侵攻時の兵站を担っている。また、MSCは、各種観測艦や病院船等の補助艦艇も保有・運用しており、かって北朝鮮に拿捕された情報収集艦「プエブロ号」も同部隊が運用していた。また、インド洋のディエゴガルシア島基地には、中東地域の1個旅団程度の急速展開を支援できる軍需品を搭載したMSCの船舶が常駐しているともされている。海軍が持つAOE(艦隊随伴補給艦)やAO(補給艦)は、作戦中の艦艇に対する補給のみを考慮しているのに対し、MSCは作戦のあらゆる輸送や場合によっては占領下住民保護のための民生品輸送までも任務としているため、米軍の作戦規模を推し量る上でその動向は重視すべき情報と思う。各報道機関にあっても、空母や戦闘機の動きには敏感に反応するものの、強襲揚陸艦への物資搭載やMSCの動向については見逃す又は無関心ではないだろうか。大規模軍事作戦では、正面兵力に先んじて後方部隊が動くことを理解するべきであると思う。
島嶼防衛体制整備を急務としてい日本では正面装備の拡充は理解されていると思うが、戦闘地域からの住民避難の手段は等閑視されているのではないだろうか。大東亜戦争では民間船を徴用したが、現在の商船は用途別に特殊な構造で建造されているために、戦時の輸送に供し得る船舶は外航フェリーか自動車運搬船しか思いつかないないとともに、戦闘海域への運航は海員組合等が受け容れるか疑問である。韓国からの邦人輸送をも併せ考えたとき、海軍籍にない輸送船を官が保有することを考慮しても良いのではないだろうか。