もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

F22とCVNドナルド・レーガン

2018年05月31日 | 軍事

 嘉手納への米空軍F22暫定配備と呼応するように、横須賀から空母(CVN)ロナルド・レーガンが出港した。

 勿論、新聞報道のみによる素人の推測に過ぎないが、米朝首脳会談に対するプレゼンスの意味を込めてのことと思う。他の空母の増備等が報じられていないことから、本格的な対北軍事オプションの可能性は少ないと思うものの気になる動きである。一般的にいえば、一定海域に投入される空母の数によってアメリカ政府の危機感ないしは本気度が測られるが、対北朝鮮攻撃に要する海・空域が在日・在韓米軍の制御下にあることを思えば空母の配備隻数だけではアメリカの真意を完全に読み取ることはできないとも思う。あまり重要視されていないために報道されることはないが、アメリカにはMSC(Military Sealift Command:軍事海上輸送司令部)という組織があり、上陸作戦や大規模侵攻時の兵站を担っている。また、MSCは、各種観測艦や病院船等の補助艦艇も保有・運用しており、かって北朝鮮に拿捕された情報収集艦「プエブロ号」も同部隊が運用していた。また、インド洋のディエゴガルシア島基地には、中東地域の1個旅団程度の急速展開を支援できる軍需品を搭載したMSCの船舶が常駐しているともされている。海軍が持つAOE(艦隊随伴補給艦)やAO(補給艦)は、作戦中の艦艇に対する補給のみを考慮しているのに対し、MSCは作戦のあらゆる輸送や場合によっては占領下住民保護のための民生品輸送までも任務としているため、米軍の作戦規模を推し量る上でその動向は重視すべき情報と思う。各報道機関にあっても、空母や戦闘機の動きには敏感に反応するものの、強襲揚陸艦への物資搭載やMSCの動向については見逃す又は無関心ではないだろうか。大規模軍事作戦では、正面兵力に先んじて後方部隊が動くことを理解するべきであると思う。

 島嶼防衛体制整備を急務としてい日本では正面装備の拡充は理解されていると思うが、戦闘地域からの住民避難の手段は等閑視されているのではないだろうか。大東亜戦争では民間船を徴用したが、現在の商船は用途別に特殊な構造で建造されているために、戦時の輸送に供し得る船舶は外航フェリーか自動車運搬船しか思いつかないないとともに、戦闘海域への運航は海員組合等が受け容れるか疑問である。韓国からの邦人輸送をも併せ考えたとき、海軍籍にない輸送船を官が保有することを考慮しても良いのではないだろうか。

 


米朝首脳会談からの韓国外し

2018年05月30日 | 韓国

 アメリカが韓国に対して、南北首脳会談に過度にかかわることへの自制を求めていることが報じられた。

 前にも書いたことであるが、今回の南北首脳会談を契機として起こった対話気運でアメリカが危惧するのは、韓国が中朝の主張する「段階的な半島非核化路線」に奔ることであろう。一貫してアメリカが望んでいるのは「北朝鮮の即時・非可逆的なリビア方式の非核化」で対価は金正恩体制保障が限度としているが、米朝首脳会談を南北統一への一里塚と捉えて平和協定まで地歩を進めたい韓国文政権の思惑は、首脳会談の阻害要因とも感じているものと思う。北朝鮮も、シンガポールでの米朝事前協議に代表を送らないことでアメリカを揺さぶる筈が首脳会談中止というアメリカのブラフに屈して、一旦は袖にした韓国に南北首脳会談を呼び掛けてメッセンジャーとして再利用したことでも容易に推測できるように、米朝会談を南北統一への里程と捉えていないことは明白である。2度にわたる中朝首脳会談で北朝鮮の後ろ盾の地位を再構築した中国も、北朝鮮を米中確執の緩衝地帯として、叉は、アメリカのアジア政策へのゲリラ・特攻兵として温存したい思惑から、南北が統一されることは望んでいない。ここにきて、さすがの韓国も現実に目を向けざるを得なくなり、米朝首脳会談を静観するとの姿勢に転じている。

 米朝首脳会談が「双方の主張が余りにもかけ離れているために何らの妥協点も見出せずに終わる」のは大方の予想するところであり、その場合の韓国の立場は極めて微妙になると思われる。アメリカからは何等の腹案もないままに米朝の斡旋を試みたとの不信感を持たれ、中朝からは米VS中朝選択の踏み絵を迫られ続けるであろう。「国外、少なくとも県外」の公約(膏薬)で自縄自縛に陥ったどこぞの指導者の国際版かと思えば、文大統領に同情を禁じ得ない。いや同情に値しないのかも。


対中ODAは現在も?

2018年05月29日 | 中国

 2~3年前に終了したと思っていた対中ODAが現在も継続されていることに驚いた。

 ODAの総額は無償援助と技術協力併せて年間約700万ドル(8億円)と少額ながら、アメリカに次ぐ経済規模を誇り「中国元」が世界通貨になる日も近いとされるとともに、一帯一路構想でアジア・アフリカに中国主導の巨大経済圏を築こうとする国に対して、上納金ともとれるODAを差し出す心根が理解できない。政府・外務省は、中国の冊封体制下に甘んじた朝貢ともとれる愚策をいつまで続けるのだろうか。報道によれば、2004年に中国は「2008年の北京五輪までに円借款を終了する」としていたが、以後10年間も悪弊を継続していたことになるが、国会の予算委員会は森友・加計問題よりもこのような事態をこそ議論すべきではないだろうか。安倍首相の連続在任期間が史上3位になったが、安定政権下であればこそ打破できる悪弊もあるのではないだろうかと残念に思うところである。折りしも、悠々自適の生活を捨てて92歳で国政に復帰したマレーシアのマハティールが、一帯一路構想の一環である同国最大の建設計画事業について契約の不透明を理由に見直すことを表明した。世界中で問題視されている中国の借金漬け政策回避の措置で、国民から絶大な支持を得ている同氏にして初めてできることであろう。支持率回復の目玉として拉致問題の解決を目指しているように見受けられる安倍総理、原発・防衛施設周辺や地方都市の水源付近の土地を取得して対日テロの拠点化を図り、孔子学院を先兵として中華思想を流布する中国の軛から脱する政策の方が支持率回復に効果があるとともに、後世に名を残すと思うのだが。

 オーストラリアでは本国の意を受けた華僑の動きを制限する法整備を行い、アメリカでは孔子学院の影響を局限する提案が学会で模索される等、先進国における自国文明の保護に向けた動きが活発化している。日本も中国の横暴を座視している場合ではないと思うのだが。


史上最大の虐殺者は?

2018年05月28日 | 歴史

 フト「史上最大の虐殺者は誰だろうか?」と、脈絡もなく考えた。

 まず思い浮かぶのは「ヒットラー」であろうが、「キリスト」か「レーニン」を双璧とするのが正解ではなかろうかと考えた。ヒットラーのユダヤ人虐殺や欧州戦線の戦死傷者全部を含めても2~3千万人位だろうが、彼の考えたユダヤ人蔑視の原点が異教(ユダヤ教)の根絶は神の意志とするキリスト教至上主義の発展形もしくは変形と捉えられるのでは無いだろうか。そう考えれば、ヒットラーの蛮行をはじめ、キリスト教布教に伴って起きた米(インディアン)豪(アボリジニ)を始めとする先住民虐殺、十字軍遠征や植民地獲得(キリスト教伝播・布教)競争の過程で起きた異教徒虐殺、異教徒を殺すことにためらいを感じなかった日本への原爆投下等々を含めれば、キリストの指示に起因する虐殺者の数は天文学的数字になるだろう。一方、レーニンについてもロシア革命に引き続くスターリン粛清、毛沢東の建国・大躍進・文革時の死者、ポルポトのクメール・ルージュ顛末、北朝鮮の餓死・粛清等々、彼の提唱した戦闘的マルクス主義に起因する犠牲者は1億人を下回ることは無いだろう。しかしながら、現在もキリスト教に帰依することは善行の一つと捉えられており、レーニンに補強されたマルクス思想は正義の一つとして多くの支持を得ている。現在、米朝首脳会談に対する熾烈な綱引きが行われているが、史上の双璧をなす”虐殺指導者”の代理戦争と斜視すれば更なる興味が湧くものである。

 以上は、学術的な裏付けのない考察であり識者や世論の支持・賛同を得ることは無いであろうと自覚しているが、”風が吹けば桶屋が儲かる式”の考察遊びも面白いと思う昨今である。


空自F2戦闘機の後継機

2018年05月27日 | 自衛隊

 昨日の国防計画の大綱改定案に引き続き、2030年以降における空自F2戦闘機の後継機種(FX)選定作業が大詰めに来ていることが報じられた。

 最有力視されているのは、日本主導による国際共同開発案であるらしい。他の選択肢には既製品(米国F35A)の購入や米国との共同開発が俎上に挙げられているが、余りにも米国依存度が高くなることと日本の航空機産業育成に寄与しないことが問題と捉えられている。国際共同開発案では、研究開発費はかさむものの、航空機産業・防衛産業の育成にも寄与できるとともに有事における外国(米国)からの影響を排除できるとされているが、将来的な武器輸出も念頭にあるのかもしれない。結論は年末の中期防で出されることになっているが、防衛計画大綱の自民党案と併せ読むと若干の違和感を覚える。防衛計画大綱に想定されている島嶼防衛(災害派遣)の拠点と位置付ける機能(軽空母と解釈)と空自の主力戦闘機は分けて考えるべきで、艦載機としてはSTOVL(短距離発艦垂直着艦)機能に優れた航空機(F35B?)を海自が保有するのだろうか。日本のような小規模軍隊では、可能な限り陸海空3軍間で融通できるものが望ましく、少数多機種の愚は避けるべきであると思うが?。

 拙い頭では、結論に達しないテーマであるが、残された時間と用兵思想に最適の選定作業であって欲しいものである。新明和工業のUS-2やホンダジェットが成果を上げる反面、MRJ(三菱のビジネスジェット機)が中々に飛翔し得ない日本の航空機産業の現実。経済効果・国威発揚・防衛力の増強の三位一体の選定を望むものである。