イギリス議会の混迷と枝野幸男代表の政治手法を考えた。
昨日(5月30日)、イギリス下院がEU離脱合意案を否決(3度目)したことに対するEU及びEU加盟国の動向が報じられた。EUのトゥスク大統領は対応を協議する臨時首脳会議を4月10日に開催として含みを残したものの欧州委員会は「合意なき離脱やむなし」としており、ドイツ、フランス、オランダは一様にイギリスの迷走に対する不信感を露わにしている。特にドイツの外相が「離脱通告から2年経っても秩序だった離脱策で一致できないのは、誰にも理解できない」というコメントは他山の石として記憶にとどめる必要があると思う。イギリス議会が「決められない混迷状態」にあることは、議会制民主主義と議院内閣制の弱点を象徴しているものと考える。議院内閣制では行政府(内閣)は立法府に従属することを余儀なくされ、議会の承認なくしては国策を決めることができない。議会には国民投票でのEU離脱という民意がある一方で、選挙(在留外国人にも参政権があることに注目)結果も民意とする残留派議員が多数存在していることから、議会での混迷は当初から予想されていた。しかしながら、議会は離脱合意案を否決する一方で、離脱中止を含む7つの代替案の全てをも否決しており、彼らが何処に向かおうとしているのか自分のような素人には理解できないところである。日本ではイギリスをヨーロッパの一員と考えているが、イギリスの国民性と歴史を眺めると、ドーバー海峡を挟んだ別の国とみる必要があるのではないだろうか。イギリスは14~15世紀の百年戦争・ばら戦争でフランスと戦い、スペインとは海上覇権と植民地をかけて争い、ドイツからはロンドンにV,V2ロケット弾の雨を浴びせられている。EU加盟についてもフランスのド・ゴールの反対で20年間以上もEC(欧州共同体)加盟を見送られ、1973年のオイルショックによる欧州再建機運によって漸く加盟が認められた新参であるが、統一通貨(ユーロ)の導入は一貫して拒み続けていたという歴史がある。このことから、怨念に縛られ孤高のイギリスを望む高齢者や富裕層は離脱を主張し、過去にさほど捉われない若年層、低所得者層、在留外国人は残留を望むという背景もあるのではないだろうか。
決められないイギリス議会に似たような事例が報じられた。それは衆院憲法審査会に対する立憲民主党の対応である。審査会の開催については与野党の筆頭幹事間で3月中旬開催で調整が行われていたが、立憲民主党指導部は開催断固拒否の態度で、辻元国対委員長は野党筆頭幹事に対して「与党からの電話にも出るな・メールも返信するな」という頑なさであると報じられている。イギリス議会は百家争鳴で決められないが、立憲民主党は「決めたくない・やりたくない」ための沈黙戦術、同じ決められない状態であるが、イギリスのほうがまだマシに見えるのだが。