もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ワクチン接種について

2021年02月28日 | コロナ

 中国コロナワクチンの一般国民向け接種計画が進行している。

 入手量の見通しが不透明な現状では、現実感に乏しいもののコロナ終息への一筋の光明と期待しているが、ワクチンの配分や接種の順番で多くの意見が飛び交っている。
 今朝の民放番組では河野担当大臣も出演して、各界の要望や疑問点に答える形式であったが、聞くほどに多様な意見と難題があることを思い知らされた。
 一口に65歳以上の高齢者という括りにしても、各個々人の境遇はまさに千差万別で、介護施設に入居している人、身体的に集団接種会場に行けない人、接種を希望しない人等々、数え上げればきりがないようである。貴重なワクチンを無駄なく使いきるためには供給量に見合った接種者を事前に準備することが望ましいが、なかなかに困難であり、もし万端の準備が整ったとしても突発的な発熱や交通事情等で接種を受けられない人も出てくるだろう。現にアメリカでは準備したワクチンが余ったために通りすがりの希望者に接種したという例も報じられている。番組内で河野大臣が述べたことであるが、接種が本格化するであろう6月以降は豪雨や台風という自然災害が起こりやすい季節であることも考慮しておかなければならないだろうし、解凍後の消費期限が定められているというワクチンの特性を考えれば、停電や冷凍庫の故障も無視するわけにはいかない。これらのことから、ワクチン接種を整斉と行うためには行政の努力は当然としても、国民の最大限の協力も必要不可欠であるように思える。
 また、番組では複数の自治体が共同で接種するケースも報じられていた。当該自治体は国の医療行政方針に沿って広域医療体制を採っているが、ワクチン接種順序は各自治体の分捕り合戦の様相を呈し、会議を重ねても結論には至らない状況であるらしいので、国民の協力内容には、自制心や譲り合いという要素も加えなければならないようである。

 中南米では、中国の好意で中国ワクチンの接種を受けたり、国の接種計画を無視して優先接種を受けた閣僚級以上の辞任が相次いでいる。これらの不正窃取は途上国の倫理感によるものかと思ったが、日本でも闇サイトで中国ワクチンの有料(結構高額)接種が行われている可能性が噂され、10万円出せば優先接種のリストに乗せるとの詐欺被害にあった人もいるらしい。
 死亡率は高くないとは言え、生死に大きく関わるワクチン接種。各界・各層の多様な意見を最大公約数的に容れた国と自治体のな細部計画が通知されるまで、静観を決め込まなければならないと思っている。


ジュノサイドとホロコーストを学ぶ

2021年02月27日 | 歴史

 衆院予算委員会(分科会)でウイグル族弾圧が集中的に議論されたことが報じられた。

 自分の理解では、ナチのユダヤ人虐殺やポルポト(カンボジア)の迫害を日本では「ホロコースト」と表現していたように思っているが、中国のウイグル族に対する弾圧(中国は「教化」と強弁)を西側諸国は「ジュノサイド」と定義しているので、例によってウィキペディアを中心として両者の違いを勉強した。
 ホロコーストとは「焼く」というギリシア語がラテン語~フランス語~英語となった言葉で、元来は古代ユダヤ教の祭事で獣を丸焼きにして神前に供える宗教用語の「燔祭(はんさい)」を意味しているが、この言葉がナチスによるユダヤ人大量殺害を意味するようになったのは、大戦中から大戦後しばらくの間、ユダヤ人の間で「ドイツはユダヤ人を生きたまま火の中に投げ入れて焼き殺している」との言説が信じられていたためとされていた(ユダヤ教徒は犯罪に対して神聖な宗教用語が使用されることに嫌悪感を持っているらしい)。
 ジュノサイドは、アメリカに亡命したユダヤ系ポーランド人の法律家ラファエル・レムキンが1944年に自著で使用したもので、ギリシャ語の「種族」とラテン語の「殺戮」の合成語(造語)とされている。
 ナチのユダヤ人虐殺も英語圏では「ジェノサイド」が一般的に使用されていたが、1978年アメリカで制作されたテレビドラマ「ホロコースト」が多くの国で放映された結果、民族絶滅政策の過程を「ホロコースト」と呼ぶことが定着したとされているので、自分の理解も仕方のないところであろうか。
 国際的にはジェノサイド条約(集団殺害罪の防止および処罰に関する条約)が結ばれて、150カ国以上が加盟・批准しているが日本は批准していない。条約で集団殺害とは、国民的、人種的、民族的又は宗教的集団の全部又は一部を破壊する行為と定義されているが、国際的にジュノサイドと認定(認知?)されているのは、ナチのユダヤ人虐殺、フツ族がツチ族を虐殺したルワンダ内戦、セルビア人がクロアチア人浄化を掲げたボスニア紛争などに限られており、被害者ではこれらに匹敵するであろうスターリン粛清、文化大革命、ポルポトの蛮行等は含まれていないことから、民族・人種という要因が無い場合には国連も単なる内政問題と捉えるようである。このことからであろうか中国に阿る故であろうか、日本の推定では被害者3000人とされる南京虐殺もジュノサイドと位置付けられている。

 日本がジュノサイド条約を批准できないのは、ジュノサイド条約がジュノサイド国家に対して日本国憲法が禁じる武力による懲罰・是正を加盟国に求めていることと、域外支援者に対しても国内法に無い共謀罪による処罰を求めているためである。昨日の予算委員会で質問に立った立憲民主党の松原仁議員も憲法9条改正を拒否し、更にはテロ特措法改正時には準備材を共謀罪と呼んで非難した背景からか、条約の批准を迫ることもなく、これまで政府が繰り返し説明して明らかにされている非加盟理由を問うだけという「何の役にも立たない」ものであったようである。
 世界と同調できない・世界基準とはかけ離れた憲法規定、立派ではあるが古色蒼然とした憲法は、何時まで国際社会から理解を得られるのだろうか。


山火事考

2021年02月26日 | 自衛隊

 栃木県足利市の山火事は100haを消失しても依然として延焼中である。

 映像で見る限りであるが、火災現場は急峻であるために人力による消火は極めて困難であるように思える。そのために消防による人力消火は人家への延焼防止が主で、直接消火はヘリコプターによる消火水の散布が主であろうと推測している。
 昨年のオーストラリアの山火事(森林火災というべきか)では、焼失面積は日本国土の6割にあたる2300万ha.にも及び、煙は南米にまで到達、空港・空路が閉鎖されるという大被害となったことが記憶に新しい。
 一般的に山火事の消火は可燃物を取り除く「破壊消火」しかないとされている。破壊消火は延焼方向の前方に立木等を伐採した防火帯を作って拡大を防ぐという人海戦術であるが、飛び火や火が背後に回り込んで消火従事者が取り残されるという極めて危険な消火法であり、現在では行われていないのではと推測する。
 昭和40年代のことであるが基地近傍の山火事に2~3度出動したことがある。列兵であったので出動の背景は知る由もなく、今にして思えば災害派遣要請に基づくものでは無かったように思うが、山火事に対する訓練どころか知識もない素人が全員無事であったことは幸運であったと思っている。この時の消火法も防火帯を作ることであったが、艦の防水作業で使用する鋸を数個持っているだけの貧弱な装備では作業もままならず、防火帯を作りかけては火勢に押されて後退して新たな防火帯造りに着手する繰り返しで、結局は稜線まで燃え尽きて自然消火したと記憶している。
 自衛艦には「派遣防火部署」が定められ、例えば基地や仮泊地で停泊中に民家火災を発見した場合には10分程度で消火隊を発艦できる様に訓練している。自治体の消防態勢が不十分であった頃は、酸素呼吸器(OBA)を装着して火災に肉薄できる自衛艦の派遣防火隊は少なからぬ実績を上げたと思っているが、残念なことに派遣防火隊の消火は徹底しているために爾後の現場検証を困難にするとされており、自治体の消防体制と装備が整備された現在では、出動した派遣防火帯も延焼防止の警戒が主であると聞いている。

 足利山火事の原因は特定されてはいないものの、発火場所がハイカーの休憩所付近で発火前には同所での喫煙が目撃されたと報じられることから、「タバコの火の不始末」の疑いが濃厚である。
 産経抄によると日本では年間1,200件ほどの山火事が発生しており、落雷等による自然発火は希で殆どは焚火や野焼きからの延焼であるらしい。乾燥した冬季は野焼きには絶好であるが、山火事に発展する可能性も極めて高いのだろう。
 歩きたばこをやめて、携帯灰皿を携行して、と心掛けているが、注意しなければと思う以上に、「(煙草を)止めれば」の視線が痛い。


ベラルーシを学ぶ

2021年02月25日 | 歴史

 欧州最後の独裁国と呼ばれるベラルーシ共和国の反体制運動が度々報じられている。

 海外旅行に関心がない.自分には無縁の国と思っていたが、この際にとネットを拾い読みした。
 ベラルーシはソ連邦解体により1991年にベラルーシ共和国として独立したが、同時に独立国家共同体(CIS)創設に関する協定に参加したため、将来的にはロシアに統合される可能性を残した独立であったとされている。
 現ルカシェンコ大統領は1994年の大統領選挙で当選したが、大統領任期を2期10年と定めていた憲法を改正して現在まで30年近くも大統領に居座り続けている。
 欧米諸国との関係は険悪で、西側からの経済制裁に反発して2008年にはアメリカと国交を事実上断絶し、ブッシュ大統領はベラルーシを「悪の枢軸」の一国と定義している。
 一方ロシアとの関係については、1999年に政治・経済・軍事などの各分野での統合を目指すロシア・ベラルーシ連邦国家創設条約に調印したものの、両国の統合は停滞しているが、その原因はロシアの事実上の最高指導者になる野望を持っていたルカシェンコ大統領が反発しているためとみられている。
 森林の他にはめぼしい資源を持たないために慢性的な経済不況にあるとされながらも、ソ連時代から続く富の分配政策や物価の低価格設定などにより、国民の生活は一応の安定を保っているとされているが、エネルギーの全てをロシアに依存していることから、ロシアと袂を分かつことは不可能であるようである。
 米露の双方から決定的な制裁を受けることを免れているのは、ロシアとNATOの狭間に位置する地勢を最大限に生かしたルカシェンコ大統領の天秤外交手腕と長年における反体制勢力弾圧によって彼に代わる有力な指導者がいないことであるらしい。ロシアにしてみれば欧州への出口をNATOに追いやることは出来ず、アメリカは反体制指導者不在ではルカシェンコ体制崩壊の混乱に乗じてロシアが軍事介入することを恐れているためであるように思える。しかしながら、隣国ウクライナに対するロシアの強硬姿勢を思えば、ベラルーシの現在の綱渡りと小康安定が将来にわたって期待できるものでは無く、ルカシェンコ以後について西側社会は安閑とはできないようにも思える。

 ベラルーシの首都はミンスクであるが、ソ連時代にはミンスクと命名されたキエフ級空母が太平洋艦隊に配属されていた。ある時、津軽海峡西方で演習中のミンスクが随伴艦とともに突如東航を始め、未明に津軽海峡を通峡したことがあった。冷戦の象徴である空母ミンスクが眼前を航行することは絶好の情報収集の機会であったために、監視艦艇を緊急出港させ、陸上ヘリを飛ばしてと大童の夜を過ごしたが、当夜の当直責任者であったために司令部機能が整うまでの初動対処にてんてこ舞いしたことを懐かしく思いだした。


ブラマヨ吉田氏の見識に賛意

2021年02月24日 | 野党

 生放送のニュースショウで、ブラマヨ吉田氏のコメントを聞いた。

 テーマは「総務省官僚の接待」であったが、MCからコメントを求められた「ブラックマヨネーズ」の吉田敬氏が、「そんな国会質疑は5時から残業でやればいい」と発言した。
 おそらくであるが、彼をキャスティングした番組制作者の意図は、生放送であるがゆえに尖鋭化・加熱しすぎた場面で「お笑いコメント」を投げかけて、出演者の頭を冷やす役割であろうと思うが、冒頭のコメントはそれ以上の含蓄に富んでいるように思われる。
 テレビで見る限り、接待問題を追及する予算員会には委員の他に答弁者として多くの閣僚と随員が居並び、その他にも質問主意書に無い質問に備えて多くの官僚が各所で待機しているものと考えるので予算員会運営の時間単価は。1000万円以上となるのではないだろうか。そんな高額の費用をかけて、7万円の会食のメニューを問い質す愚問を繰り返すことが果たして立法府の、それも与野党の精鋭が集結した予算員会の任務だろうか。
 官僚の綱紀粛正は重要なことではあるが、日本の現状はバイデン政権への対処、香港・ウィグルの人権、竹島近海における韓国の無法行為、徴用工問題対処、五輪対処・・等々、将に難題山積の状況であることを思えば、それらに勝る重要性と緊急性は無いと思っている。
 北京五輪の開催地変更(ボイコットを含む)要求のように、アメリカでは政府の尻を叩く又は政府方針を明らかにさせるために、議員は議会に決議案を提出してその成立に全力を挙げる。決議が成立しても法的な効力・拘束力は持たないが、代議士(国民)の意志であれば行政(大統領)も全く無視するわけにはいかないことになる。
 現在、西側社会では中国のウィグル族撫順政策をジュノサイドと規定することがトレンドであるが、尖閣問題を抱えるとともに中国の部品とレアアース供給網に組み込まれた製造業のために日本政府が及び腰であることを「百歩譲って致し方ない」としても、与野党の何れもウイグル族救済に手をこまねいている。日本の国会に与野党議員が提出するのはせいぜい問責決議案や辞職勧告決議案であることから、議員諸氏にとってはは国内それも票に繋がる一部のファンの溜飲をなだめること以外思慮の外であるように思える。

 ブラックマヨネーズはM1を制した芸達者で、特に吉田氏の「チョット裏から覗く発想と軽妙な表現」は秀逸であると思っている。今回の表現も、官僚接待は重要ではあるが予算委員会の総力を傾けて議論すべき内容ではなく、かつ、多くの正常な国民は彼等に喫緊のテーマでの論戦を期待していることを「残業」と表現したもので、実に予算委員会の核心をついているように思える。