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もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

対人地雷禁止条約

2025年04月04日 | 防衛
 北欧フィンランド・バルト3国、東欧ポーランドが対人地雷禁止(オタワ)条約からの脱退を表明した。脱退の理由について各国は「ロシアの脅威に対する必要な措置」としているが、ロシアのウクライナ侵攻から3年経過した今になった背景には、NATOにおけるアメリカの影響力低下があると考える。もし、ロシアがクリミヤ併合と同様の手段でカレリア併合を目論んだ場合、ロシアに対して政治的に腰の引けた米軍主体のNATO軍では即時かつ有効な対処を期待できないために、有志国連合の来援まで対人地雷によって地上部隊の侵攻を阻もうとするためであるように思える。
 オタワ条約は、正式には「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」で、1997年にオタワで署名、1999年3月に効力発生(40ヶ国目の批准書の寄託から6ヶ月経過)、現在164カ国が批准しているものの、アメリカ・ロシア・中国・インド・パキスタン・北朝鮮・韓国・イスラエル・エジプト・イラン・シリア・サウジアラビアと、並みいる凶悪犯的国々は批准していない。日本は、着上陸阻止能力に難あるとはいえ国境よりも人道優先からであろうか1997年署名、1998年に批准して、対人地雷を保有していない。
 フィンランド等5カ国はオタワ条約からの脱退に伴って、有事における地雷原構築を可能とする対人機雷の備蓄等に努めるのだろう。対人機雷が非人道的兵器とされるのは、一旦埋設してしまえば戦争終結後も残って子供を含む民間人が危険に曝される点にある。カンボディア内戦では、クメールルージュが無計画に敷設した多数の対人地雷が多くの市民の生命を奪い、戦後復興の最大のネックであったとされている。
 対人地雷は、安価でかつ技術的・時間的にも容易に作れることから、なにもオタワ条約を脱退してまで備えるべき兵器ではないように思えるが、領土保全の本気度を内外、特にロシアに対して示すことが最大の眼目であるように思える。政治的メッセージは”遺憾砲”ではなく、このように示すことが必要なのではないだろうか。
 24%のトランプ関税が日本にも科せられることになり、総理は「極めて残念で、不本意だ」と述べたとされるが、「全ての対抗策・選択肢」が既にデスク上に準備されていると述べていたにしては、些かに心許ないメッセージであるように思える。

ミサイル発射ボタンの国有化

2025年03月24日 | 防衛
 長射程ミサイルの発射権限を原則的に日本が持つ計画を統合作戦司令部が策定していることが報じられた。
 現在は、射程1000Km超の巡航ミサイルやスタンドオフミサイルを発射する場合には、ハ―ド・ソフトの両面からアメリカの同意が無いと打てない。言い換えれば、政府が国民の生命・財産を守るために防衛出動を決断をしても、その遂行に不可欠の武器使用にはアメリカの同意・協力を得る必要があって、タイムリーに所要の兵器を使用できない可能性があることを意味している。
 現在、西側各国は、EUの有志国連合構想を始めとして、アメリカの背信とも云えるトランプドクトリンに抗すべき方策を模索している。今回の発射権限国有化にも同様の思惑を持った政権の意を受けて、制服側が実質作業に当ったと思うので単に国家安全保障戦略に記載されている「我が国が主たる責任を以て」の具現以上の意味を持つと考えたい。
 しかしながら、この当然すぎる措置についても、ニュースソースが「複数の政府関係者」とされているのは、将に画竜点睛を欠くものに思える。通常、政府関係者とは総理秘書官等とされているので、比較的低位のレベルから観測気球を飛ばすという従来の姑息な手法に依っているのであろうが、武力の行使に繋がる大事の将来であれば、総理大臣、少なくとも官房長官が正式に会見を開いて発表すべき事案と思うし、防衛戦略の如何を国民に説明して理解を求めるのが、シビリアンコントロールの王道である。
 ミサイル発射権限の委譲については、アメリカもおいそれとは応じないであろうことから、石破政権に対する内外圧は大きいであろうが、万が一にも「統合作戦司令部の独走」等の逃げ口上を口にすれば、自ら政治生命を失うことになることを自覚して欲しいものである。
 商品券問題で支持率20%近くまで下落した石破総理であれば、ミサイルの引き金を取り戻す防衛戦略の転換深化は起死回生の一助にはなったであろうに、根回し政争しか学んでいない政治屋には無理な注文であろうか。
 米韓合同軍の指揮権をアメリから取り戻すことは、韓国の悲願であるが、朝鮮戦争後70年を経ても悲願のままである。
 最後に蛇足を、
・「政府高官」:官邸トップの官房長官
・「政府筋・官邸筋」:内閣官房副長官 (政務)
・「政府関係者」:総理秘書官等    が通例であるらしい

EUの本気度-2

2025年03月21日 | 防衛
 トランプ政権はNATO軍司令官の地位を放棄する意向であることが報じられた。
 発足以来NATO軍司令官は米陸軍大将が務めることが続いていたが、トランプ政権がそれを放棄することは、NATOに対するアメリカの思惑・意向・関与を低下させる意味を込めているのであろう。
 19日にはEU欧州委員会が「欧州防衛の備え」と題した白書を公開し、先に発表していた総額130兆円に及ぶ欧州再軍備の基本路線と具体策を明確にした。軍備強化は、ミサイル防衛、ドローン開発などを列挙し、更に弾薬等の継戦消耗品についても共同生産・調達することとされている。
 フランスのマクロン大統領が、欧州域に有志国連合を結成してフランスの核を提供すると表明したのは、つい10日程前であるにも拘わらず、これほどの準備が整っているとは思わなかった。推測であるが、アメリカ離反時の欧州防衛に関するプランBシナリオ(作戦計画)は、”もしトラ”対応策ではなく、遥か以前から各国首脳の鍵付きデスクに保管されていたものであろう。
 驚嘆すべきは、トランプ大統領のNATOに対する意思表明に先手を打つ形で動き出したことであるが、その根底には日本を含めたアジア人種では入り込めない白人種の情報ネットワークがあったものであろうか。
 既にトランプ大統領は、日米安保について「こんな(片務性)物を、誰が作ったのか」とブラフを切り、政権内部では在日米軍の縮小が検討されているとも伝えられているが、商品券にかまける国会・商品券回収に忙殺される官邸は、ブラフ等の真意を本気で理解しようとしていないように思える。
 北へ備える米韓連合司令部は、米軍が司令官・韓国軍が副司令官、陸・海司令官は韓国軍・米軍が副司令官、空軍は司令官は米軍、副司令官は韓国軍とされているが、NATO軍から一歩も二歩も引いたトランプ政権では在韓米軍司令官放棄する等の影響力減少を計ることも十分に考えられる。
 EU欧州委員会の白書は、再軍備の概成目標を2030年としている。アメリカ製武器に加え独自の兵器体系を併せ持つ欧州にして完成まで5年の長時日と130兆円の費用を見込んでいる。
 自衛隊の新鋭装備を観ると、自前の装備は0に近く殆どが米国製であり、日米安保破棄が通告されたら、失効の1年後を俟たずにその日から多くの戦力を失い、継戦能力については1週間程度になってしまう。導入武器に関しては、付帯条件があって、戦時若しくは緊急事態にはブラックボックスまで製作が可能な設計図が含まれているそうであるが、図面さえあれば何でもできるものでは無いだろう。まして国防生産法 の概念すらない日本では資源の集中さえできないために、急速な拡充などできないだろう。
 そんな時にも、政府・国会は「安保破綻の説明責任・戦犯探し」に明け暮れるのだろう。

EUの本気度

2025年03月20日 | 防衛
 ウクライナ和平で親露姿勢を隠そうともしないトランプ外交に危機感を持ったEUでは、アメリカ主導のNATO軍とは一線を画した戦略判断・指揮統制を持つ有志国連合構想が大きく動き出したように思う。
 発起人的フランスは、ドイツ国境に近い空軍基地を有志国連合の拠点にするとして、同基地に大量の次世代戦闘機と超音速ミサイルを配備すると発表した。
 ドイツは、兵器の調達・増産に必要な巨額資金を得るための国債発行を可能とする基本法(以下、憲法)改正を行った。
 ドイツの憲法改正については、主導した保守政党(キリスト教民主・社会同盟)に、中道左派政党(社会民主党、緑の党)が賛成したとされている。脱原発・風力発電推進・二酸化炭素削減などの環境政党と思っていた緑の党が賛成したのは、所詮「命あっての環境政策」と現実的な選択によるものであろうか。現在、連立政権に参加しているとはいえ、党議拘束が希薄な欧州で緑の党までが賛成したことは、他山の石と捉えなければならないように思う。
 憲法改正、それも今そこにある危機の緊急事態条項の審議まで及び腰、集団安全保障を違憲とするものの自前の国防に無頓着・無定見の日本国中道左派政党を観るにつけ、今回の独仏の対応「これぞ国民の安寧と幸福を考える政治」と思わざるを得ない。
 夫婦同姓原則が国民の生命まで左右する事か、10万円の商品券授受が国民の命を危うくするのか、国会議員諸氏にあっては、国政レベルの議論をお願いしたいものである。政治への失望・無関心は、国会論戦が我々最下層がする低次元の居酒屋談義・井戸端会議的議論に多くの時間を割いていることに起因すると思う。
 立憲民主党の野田代表は、商品券問題に対して「石破総理が退陣する事での幕引きは言語道断」と声を荒げたが、真意は「不人気の総理で参院選を戦いたい」という政局・政争に起因するとされている。立民恒例である会期末の内閣不信任案も提出されないだろう。何故なら、立民としては不信任案可決で内閣総辞職、自民党の顔が変わるのは何としても避けたいであろうから。
 これほどまでに野党から大事にされ、存続を懇請される総理大臣は、これまでに例を観なかったのではないだろうか。

日産の新社長誕生に思う

2025年03月12日 | 防衛
 本日は、経済音痴の故に的外れな駄文で終わるだろうことをお断りします。
 日産の新社長人事が報じられ、後任の新社長はメキシコ人で、しかも現在の業績不振の責任を負うべき戦犯(?)の一人とも目されているので、カルロス・ゴーン氏の悪行・悲劇再来の予感さえする。
 解説記事を読むと、日産の取締役会の構成は12人中10人が社外或いは筆頭株主ルノー出身者で占められており、社長選任委員も全て社外メンバーであるらしい。取締役会は、ゴーン事件を契機に設立されたが、社外メンバーが大勢を占めるので経営に対する監督は独自の視線で行えるものの、どうも生産・販売の現場と乖離した存在と化しているらしい。取締役会が発議したホンダとの経営統合協議に対しても、経営側が統合の前提となる再建策を提示できずに不調に終わったのは、取締役会と経営陣の足並みが揃っていないことの象徴とされるとともに、著しくスピード感を欠く2階層統治の日産を業務提携では御しきれないと考えたホンダが吸収合併で統治の刷新まで図ろうとしたことが原因とされている。
 日産の針路が定まらない原因は2階層統治で、このシステムの温存・延長である今回の新体制発表も新鮮味に乏しく内外からは期待感は持てないとされているらしいが、果たして日産の立て直しや如何に。閑話休題・
 3月24日に自衛隊に「統合作戦司令部」が編成され、初代司令官には南雲空将(現統幕副長)が補されることも報じられた。これまで3自衛隊の統合運用は統幕議長が3自衛隊の幕僚長を介して行っていたので、3自衛隊を直接指揮できる統合作戦司令部の誕生によって、より迅速・効果的な部隊運用が期待できる。 
 3自衛隊の統合運用など簡単と思われる方もおられようが、発足以来70年、、それぞれ独自に進化した3自衛隊を一元指揮管理するのは容易ではない。まず、用語の統一、通信機能の統一、作戦思想の統一、重複機能の整理、人事管理、・・・。特にソフト面では数えきれないほどのハードルがある。多くの銀行を統合して誕生した「みずほ銀行」が、幾たびもシステム障害を起こしているのは、統合した銀行のシステムを統一しないまま無理やりに連結したために起きているとされる。今回の統合司令部誕生に当っては、よもや「みずほ方式」ではない通信等のソフト一元化が実現した上であって欲しいと願っている。
 昭和50年代、陸上自衛隊の無線交話訓練を観た記憶では、海自のそれとはまったくの別物であったことも記憶に蘇る。
 シスターシップ゚交換で知り合った一軍制であるカナダ駆逐艦の機関長からは、「カナダ軍では特殊な職種を除いて陸・空軍に出向するの当たり前。俺は特殊な職種であって出向する事なないが」と聞いたことがあるので、将来的には人的にも3自衛隊の垣根は無くなる若しくは低くなるのかも知れない。