北欧フィンランド・バルト3国、東欧ポーランドが対人地雷禁止(オタワ)条約からの脱退を表明した。脱退の理由について各国は「ロシアの脅威に対する必要な措置」としているが、ロシアのウクライナ侵攻から3年経過した今になった背景には、NATOにおけるアメリカの影響力低下があると考える。もし、ロシアがクリミヤ併合と同様の手段でカレリア併合を目論んだ場合、ロシアに対して政治的に腰の引けた米軍主体のNATO軍では即時かつ有効な対処を期待できないために、有志国連合の来援まで対人地雷によって地上部隊の侵攻を阻もうとするためであるように思える。
オタワ条約は、正式には「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」で、1997年にオタワで署名、1999年3月に効力発生(40ヶ国目の批准書の寄託から6ヶ月経過)、現在164カ国が批准しているものの、アメリカ・ロシア・中国・インド・パキスタン・北朝鮮・韓国・イスラエル・エジプト・イラン・シリア・サウジアラビアと、並みいる凶悪犯的国々は批准していない。日本は、着上陸阻止能力に難あるとはいえ国境よりも人道優先からであろうか1997年署名、1998年に批准して、対人地雷を保有していない。
フィンランド等5カ国はオタワ条約からの脱退に伴って、有事における地雷原構築を可能とする対人機雷の備蓄等に努めるのだろう。対人機雷が非人道的兵器とされるのは、一旦埋設してしまえば戦争終結後も残って子供を含む民間人が危険に曝される点にある。カンボディア内戦では、クメールルージュが無計画に敷設した多数の対人地雷が多くの市民の生命を奪い、戦後復興の最大のネックであったとされている。
対人地雷は、安価でかつ技術的・時間的にも容易に作れることから、なにもオタワ条約を脱退してまで備えるべき兵器ではないように思えるが、領土保全の本気度を内外、特にロシアに対して示すことが最大の眼目であるように思える。政治的メッセージは”遺憾砲”ではなく、このように示すことが必要なのではないだろうか。
24%のトランプ関税が日本にも科せられることになり、総理は「極めて残念で、不本意だ」と述べたとされるが、「全ての対抗策・選択肢」が既にデスク上に準備されていると述べていたにしては、些かに心許ないメッセージであるように思える。